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【J1:第30節 鹿島 vs 大分】レポート:嵐の中でも冷静に対処した鹿島が大分を撃破。今季初の5連勝で上位2強にプレッシャーを与え続ける。(07.10.28)

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10月27日(土) 2007 J1リーグ戦 第30節
鹿島 3 - 0 大分 (16:00/カシマ/8,036人)
得点者:31' 岩政大樹(鹿島)、54' 田代有三(鹿島)、80' 田代有三(鹿島)

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 台風20号の影響で、大荒れに荒れたカシマスタジアム。時間を追うごとにピッチは水浸しになり、あちこちに水溜りができる。強風でボールもどこへ飛ぶか分からない…。27日の鹿島アントラーズ対大分トリニータ戦は、過去に例を見ないような悪条件下での戦いとなった。それだけに、より的確な判断と高い技術が求められたが、鹿島の選手たちは終始、冷静さを失わなかった。立ち上がりからしっかりとボールをキープ。つなぐところではつなぎ、ロングパスを使うところでは使うとメリハリをハッキリさせたのだ。得意のセットプレーを最大限に生かし、前半から岩政大樹がゴール。後半にも田代有三が2点を加えて、3−0と相手を寄せつけなかった。首位・浦和レッズとの勝点差は暫定7となり、J1逆転タイトルの可能性をわずかながら残した。悲願の10冠を狙う彼らは、最後まで浦和、ガンバ大阪の上位2強にプレッシャーを与え続けていくつもりだ。

 足掛け3年間リーグ戦未勝利の大分に土をつけるべく燃えていた鹿島。オズワルドオリヴェイラ監督が送り出したスタメンは前節・ジュビロ磐田戦と全く同じ。2トップにはマルキーニョスと田代が入った。大分の方もJ1残留をほぼ確実にするためにも勝点を重ねたいところ。シャムスカ監督は前節・柏レイソル戦で出場停止だった山崎雅人を先発に戻し、エース・高松大樹と2トップを組ませた。サイドを崩しながら、好調の高松にボールを集めるというのが彼らの狙いだった。

 ところが、スタジアムは猛烈な雨と風に見舞われた。観客席で見ている側も集中力を削がれるような環境だから、ピッチ上の選手たちの厳しさは想像を絶するレベルだった。そんな中でも自分たちのサッカーを貫いたのは鹿島の方。大分の梅崎司が「相手は立ち上がりからしっかりパスをつなごうとしていた」と話すように、高い技術を駆使して確実にボールを保持し、相手を混乱させた。

 迎えた前半31分。セットプレーから先制点を奪う。キッカー・小笠原満男がニアサイドに流したボールに飛び込んだのは岩政。彼は左足アウトで合わせ、今季リーグ戦6点目を挙げたのだ。「この雨だったし、流れの中で崩すのは難しかった。セットプレーが大きな武器になると思っていた」と話す小笠原の老獪なキックは見ごたえ十分だった。前半の大分は一時的にはリズムをつかんだが、ほとんど何もできないまま45分を終えることになった。

 後半に突入すると雨と風の勢いはさらに増した。大分にとって不運だったのは、彼らが攻める側のハーフコートに水溜りが多かったこと。パスをつなごうとしても、梅崎や山崎がドリブルをしかけようとしても、ボールが止まり、それを鹿島にさらわれる。ピッチ状態にはナーバスにならざるを得なかった。

 そんな時、鹿島は畳み掛けるように2点目を挙げる。相手のクリアボールが止まってしまい、それを拾った本山雅志がマルキーニョスとのワンツーで前に出て、ラストパスを送った。これを受けた田代が思い切ってシュート。相手に当たって浮いたボールは見事にゴールへと飛び込んだのだ。「雨の日は何が起きるか分からないから積極的にシュートを打っていくことが大事。悪天候を味方につけることができた」と彼は微笑んだ。

 これで0−2。大分のシャムスカ監督は巻き返しを図るべく、後半15分に山崎を下げて藤田義明を起用。彼を右サイドに置いて、ヘッドに強く得点力のある高橋大輔を前線に上げる策を採った。しかし不運は重なるもので、切り札の高橋が直後に左ひざを負傷。タンカで退場する羽目に陥ってしまう。「さあ、これからというところで出鼻をくじかれた」と知将も落胆の色を隠せなかった。

 ここで鹿島は一気に畳み掛けた。指揮官はまず本山に代えてダニーロ、マルキーニョスに代えて柳沢敦を投入。フレッシュな面々の活用でチーム全体の活性化を図った。そして後半35分、再び小笠原の左CKからニアサイドに飛び込んだ田代が3点目をゲットする。「相手の足なのか、スパイクなのか、ボールなのかよく分からない」と本人も話すラッキーゴールで、彼らは勝利を力強く引き寄せた。終盤には今季初出場となる田中康平にプレーの機会を与えるなど、鹿島にしてみれば余裕の試合運びで見事に5連勝を飾った。

「90分間ずっと自分たちの流れで試合ができるということはない。苦しい状況の中、どう我慢できるかが重要だ。こういう勝ち方ができるのは、チームが少しずつ成熟しているということ」とオズワルドオリヴェイラ監督も選手たちの頭脳的なゲーム運びを賞賛した。
 失点ゼロというのも大きい。完封勝利は9月30日のサンフレッチェ広島戦以来。今季の鹿島はちょっとした集中力の欠如からゴールを与え続けてきた。指揮官も「精神的な問題だ」とつねに危惧していた。が、ここへきて「守りの安定感が増した。安心してみていられるようになってきた」という言葉が出るようになってきた。シーズン終盤に向け、これは非常に明るい材料だ。J1逆転優勝の可能性はわずかだが、来週には天皇杯も始まる。彼らの前進はとどまるところを知らない。

 一方の大分は不運が重なり、痛い黒星を喫した。降格ゾーンの16位・広島との勝点差は2。次は同じ立場に立たされている大宮アルディージャとの勝負が待っている。「今日の負けは忘れて次に向かうしかない」と梅崎が話したように、まずはしっかりと気持ちを切り替えることが肝要だ。この日は高松の奮闘など光る部分もあった。それを自信に次へと向かいたい。

以上
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