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　地球儀を使って日本を見つけ、そのままくるりと回して真反対に位置する国。つまり、地理的に日本から最も遠い国がアルゼンチンだ。 　

　地図を見ると、縦長で広大。日本の遥か彼方にあるというだけで未知のイメージが浮かび上がるが、住む人の人種や習慣、言葉はもちろんのこと、ものの考え方も日本とは全く異なる国である。アルゼンチンは、ヨーロッパ移民によって形成された国。1500年代の初頭にスペインからの移民が住み着き始め、スペインの植民地となったが、1810年に独立した。その後、イタリア、ドイツ、ポーランドといった国々から多くの移住者が海を渡り、アルゼンチンにやって来たのである。 　

　他の南米諸国と比較した場合、決定的に違うのは、アルゼンチン人はほとんどが白人ということだ。それは、最初に定住したスペイン人たちが原住民などの労働者たちを退け、白人国家にしようと試みたことによる。広く肥えた大地を擁するため、豊富な農畜産物に恵まれている。特に、ラ・パンパと呼ばれる平野部で飼育されている肉牛の数は人口を上回ると言われ、１人あたり年間70kgもの肉を消費する。肉の質は最高級で、赤身だけで柔らかく美味しい。肉牛のありとあらゆる箇所を炭焼きにして食べるパリージャという料理は、調味料やソースなど一切かかっていなくても、塩味だけで十分味わい深く、アルゼンチンの牛肉の質の高さが最も表れている。 　

　また、アンデス山脈に近い北西部に行くと、メンドーサやサルタといったワインの産地があり、数多くのワイナリーが優れたワインを製造している。有名なのはマルベックという品種の黒葡萄を使った赤ワイン。フルーティーで濃厚な味は肉料理にぴったりだ。使う言葉はスペイン語。しかし、スペインのスペイン語とは違って、言葉の抑揚はイタリア語に近い。使う単語も、イタリア語がもとになっていることが多い。例えば、スペイン語で「ベーコン」は「tocino」（トシーノ）というのだが、アルゼンチンではイタリア語の「パンチェッタ」風に「panceta」（パンセータ）という。「スピーカー」も、スペインで使われる「hablador」（アブラドール）ではなく、イタリア語の「話す」を意味する動詞「parlar」（パルラール）を使い「parlante」（パルランテ）といい、俗語で言う場合の「仕事」も、イタリア語の「laboro」（ラボーロ）から取り「laburo」（ラブーロ）という言葉を使う。 　イントネーションだけでなく、単語までイタリア風なスペイン語を話すのは、やはり自分たちのことを「南米人」ではなく、あくまでも「ヨーロッパ人の末裔」であると意識している証拠だと言えよう。 　

　特に首都ブエノスアイレスは、一見するとまるでヨーロッパの街並のようで、道行く人々も非常にお洒落である。冬になると黒や茶色といったシックなコートに身を包む人が多いのも、ミラノやパリのセンスの流れを引き継いでいるからだ。 　イタリアからの移民が多いことは、各家庭の毎日の食事を見てもわかる。前述の通り、アルゼンチンというと牛肉が有名だが、一般家庭で肉料理と同じ頻度でテーブルに並ぶのはパスタやピザなのである。

　ブエノスアイレスの人たちは「puerto」（プエルト＝港）の人という意味の「ポルテーニョ」と呼ばれるが、このポルテーニョたち、ヨーロッパ人の気高さを誇示しすぎるためか、南米大陸内だけでなく、アルゼンチン国内でも「鼻が高い」と指摘されることが多い。だが逆に、時に謙遜しすぎる日本人の目には、常に自信に満ち溢れ毅然とした態度で生きているポルテーニョの姿が清々しく映ることもある。 　
　
　アルゼンチンで人気のスポーツは、何と言ってもサッカー。１部リーグに属する20チームのほとんどはブエノスアイレス州に集中している。ボカ・ジュニオルス、リーベルプレートの他に、インデペンディエンテ、ラシン、サンロレンソが強豪と呼ばれるが、現在はどのクラブも下部組織の充実に力を入れており、才能のある選手たちが次々と生まれている。他にも、中流階級から上の家庭の子供たちの間では、テニスやバスケ、ラグビー、グラスホッケーなどが人気を博している。

Reported by　 藤坂・ガルシア・千鶴

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