2月23日(土) 東アジアサッカー選手権2008 決勝大会
日本代表 1 - 1 韓国代表 (19:15/中国・重慶/29,000人)
得点者:15' ヨム・ギフン(韓国代表)、68' 山瀬 功治(日本代表)
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「チームとしてもっと成長しないと、ワールドカップ予選は勝ち抜けない」という鈴木啓太(浦和)の言葉が、今の岡田ジャパンが置かれた状況の厳しさを物語っていた…。
冷静さと闘争心を見せつけて中国に勝利してから3日。日本代表は23日、東アジア選手権優勝をかけて宿敵・韓国に挑んだが、初戦・北朝鮮戦のような「覇気のないチーム」に戻ってしまった。目論見とは違う3−5−2で挑んできた相手をつかまえ切れず、早い時間帯の先制点を許したのだ。中国戦では有効だったタテへタテへとパスをつなぐ形も影を潜め、まるでチャンスが作れない。後半になって安田理大(G大阪)の投入で流れが変わり、山瀬功治(横浜FM)の今大会2点目となるゴールで同点に追いついたが、反撃もそこまで。1−1のドローに終わり、岡田ジャパン発足後の初タイトルは夢と消えた。
若い安田や田代有三(鹿島)が頭角を現し、山瀬が抜群の決定力を示すなど、収穫は少なからずあった。しかし東アジア選手権3大会連続2位という不名誉な結果に終わったのは事実。試合の入りの悪さや自分たちのサッカーを押し通せない精神的な弱さなど、内容面でも物足りなさが強く感じられた。
「まだまだ甘い。簡単に言えば球際の強さ。自分のマークも簡単に離してしまう。相手はロングボールのこぼれ球を全力で拾いにいっていた。そういう単純なことだ」と話す岡田武史監督も極めて不機嫌そうだった。3月26日には2010年 FIFA ワールドカップ南アフリカ アジア3次予選第2戦・バーレーン戦(マナマ)も迫っているだけに、その「甘さ」をどう修正していくのか。この悔しい経験を今後に生かさなければ意味がない。
1勝1分の勝点4同士で23日の最終決戦を迎えた日本と韓国。中国の優勝が早々となくなったことから重慶五輪競技場は閑古鳥が鳴くと見られたが、予想より多い3万人近い観客が集まった。国歌斉唱時のブーイングは今回もなかったが、大半のサポーターがこれ見よがしに韓国を応援する。重慶という地は日本にとって最後まで「アウェー」だった。
岡田監督が採った布陣は中国戦と同じ4−2−3−1。予想通り橋本英郎(G大阪)が初先発となった。が、そのポジションは左サイドバックでもボランチでもなく2列目の右。「あのポジションは予測できなかった」と本人も驚いていた。彼が機能するかどうかは1つの注目点だった。対する韓国・許丁茂(ホ・ジョンム)監督は必勝を期して3バックで守ってきた。
「今大会に入っていいスタートを切れていない。韓国戦は頭から全力で行かないといけない」と主将・川口能活(磐田)が前日にこう強調したが、日本はまたも入りの悪さを露呈する。闘争心をむき出しにしてくる韓国を凌駕できず、ボールを奪えない。球出しの起点になっている金南一(キム・ナミル / 5番、神戸)と趙源熙(チョ・ウォンヒ / 3番、水原三星)のダブルボランチにプレスをかけに行くが、それを察知した相手はロングボール中心の攻めに切り替えてくる。「どこでプレスをかけるかタイミングがつかめなかった」と不可解な途中交代を強いられた中村憲剛(川崎F)も悔しさをのぞかせた。
結果として前半15分、韓国・俊足左サイドの朴源栽(パク・ウォンジェ / 13番、浦項)にクロスを挙げられ、飛び込んできた廉基勲(ヨム・ギフン / 11番、蔚山現代)に倒れながらの強引なシュートを決められた。日本の4バックは韓国のサイド攻撃で開かされ、中央が手薄になっていた。今野泰幸(F東京)の対応も遅れた。ゴール前の仕掛けは相変わらず韓国の方が一枚上手。この事実は認めざるを得ないだろう。
この失点から日本はリズムを取り戻す。鈴木や中村が強烈なミドルシュートをワクに飛ばす場面もあった。前半最大の決定機は44分。山瀬とのワンツーでペナルティエリア内に内田篤人(鹿島)が飛び出したシーンだ。1月のボスニア・ヘルツェゴビナ戦(東京・国立)では同じような形から中に折り返してしまったが、今回はシュートを狙った。が、相手の素早い寄せにつぶされてしまう。彼自身も他のメンバーも韓国の球際の激しさを誰もが実感したことだろう。
岡田監督も黙っていられず、ハーフタイムに「もっとトライしろ」と檄を飛ばしたというが、後半も攻撃の連動性が出てこない。我慢できなくなったのか指揮官は右わき腹を打撲している安田の強行出場という決断を下す。同じ頃、金南一を外した韓国はギクシャク感が見え隠れしていた。この機に乗じて安田がドリブルで変化をつけ、山瀬の同点弾につなげる。ショートコーナーから遠藤→内田を経由したボールを彼はダイレクトで振り抜いたのだ。1月以降の6試合で4得点。この得点力の高さは今のチームにとって貴重である。
だが、山瀬以外に確たる得点源がないのもまた現実だ。1トップの田代は韓国守備陣の激しいマークにあって沈黙。中盤が前線を追い越してペナルティエリアに侵入する場面も皆無に近かった。岡田監督が矢野貴章(新潟)、播戸竜二(G大阪)を投入するタイミングも遅すぎた。満を持して先発した橋本もうまく適応してはいたが、切り札にはなりえなかった。
韓国にはクロスから中央を狙うという「必殺のパターン」があり、最後まで怖さがあったが、日本にはそれがなかった。中国戦では出せた中盤と前線の連動性を寸断されると打つ手がないのだ。個人個人の当たり、メンタル面でも負けていた。引き分けといっても、内容で勝っていたのは韓国の方だった。
今回の韓国は李東国(ミドルスブラ)や朴智星(マンチェスター・ユナイテッド)ら主力が軒並み欠場している。一方の日本は遠藤、鈴木、中澤佑二(横浜FM)、川口といった中心選手がピッチに立っていた。にもかかわらず勝てなかったことは、今後のワールドカップ予選に大いなる不安を感じさせる。岡田監督が不機嫌になるのも理解できるというものだ。
とはいえ、悩んでいる暇はない。若手の台頭や細かいパス回しがオートマティックにできるようになるなど、今大会にもそれなりの明るい材料はあった。こうした部分を自信にして、再び前を向いて戦っていくしかない。日本はどうしたら「怖いチーム」になれるのか。指揮官も選手たちも今こそ、その術を真剣に模索すべきだろう。
以上
J’s GOALニュース
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