3月16日（日） 2008 J2リーグ戦 第2節
福岡 2 - 1 水戸　（13:04／レベスタ／15,157人）
得点者：50' 黒部光昭（福岡）、60' 西野晃平（水戸）、74' タレイ（福岡）

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　開場を待ちきれないサポーターが朝早くから入場ゲートの前に列を作る。時間とともに長くなるその列は、やがて400メートル近くまで伸び、レベルファイブスタジアムがある東平尾公園の入口までに届いた。新しいシーズンと、新しくなったチームと、装いも新たになったスタジアム。サポーターは大きな期待で胸を膨らませていた。そして、福岡はその期待に応えて２−１で勝利。Ｊ1復帰へ向けて、まずは順調なスタートを切った。

　立ち上がりから互いのゴールへ向かう姿勢が感じられる試合だった。まず仕掛けたのは水戸。前節のＣ大阪戦で見せた戦いの通り、高い位置からボールを追い、奪ったボールをつないでアグレッシブに前へ出る。水戸の最初の決定機は３分。堀健人、赤星貴文とつないで左サイドを突破。最後は荒田智之の左足からのシュートがゴールポストをかすめた。しかし、福岡も引かない。水戸の勢いをしっかりと受け止めながらも前に出ることで主導権を奪った。

　その立役者となったのは、9年ぶりに福岡の地に戻ってきた黒部光昭だった。この試合のポイントを守備に上げていた福岡は、リスクを最低限に抑えて長いボールを前線へ。これを黒部が巧みなポストプレーで攻撃へとつないだ。厳しいマークを巧みに外すポジショニングと、体を寄せられながらもボールをコントロールする高い技術は出色。受けたボールを的確にさばいて確実に攻撃の起点を作っていく。

　その黒部のポストプレーに、ベテランで構成した中盤が絡む。攻め上がるのは左サイドの久永辰徳。中盤の底に構える久藤清一とタレイは気の利いたプレーで攻守に貢献。そして、バランスを取る中払がスペースへ顔を出す。攻め返そうとする水戸にプレスをかけて攻撃を遅らせ、こぼれたボールを確実に拾って主導権を渡さなかった。そして50分、右サイドからの中島崇典のＦＫに黒部が頭で合わせて先制点を奪った。

　しかし、水戸も黙ってはいない。今シーズンのキーワードになっているアグレッシブさを失わない姿勢は次第にリズムを手繰り寄せ、徐々にボールが回り始める。そして60分、福岡のクリアボールを拾った椎原拓也のスルーパスを受けた堀健人が左サイドを突破。そのグラウンダーのクロスに斜めに走り込んだ西野晃平が左足で合わせた。鮮やかな流れるような攻撃に、福岡はただ茫然とゴールネットが揺れるのを見ているだけだった。

　ここから、黒部が交代で退いたことで前線での起点を失った福岡のリズムが微妙に変わりはじめる。そして、ボールを回しながら前に出る水戸に本来のリズムが少しずつ戻り始める。この微妙な流れの時間帯にどちらがゴールを奪うか。それがこの試合の勝負の分かれ目になった。守備の集中力を失わず、攻撃の積極性も併せ持つ両チームは、どちらも一歩も引かず。緊張感漂う攻防がピッチの上で繰り広げられる。

　そんな試合に決着をつけたのは中村北斗のプレーだった。昨年の７月以来の戦線復帰となる中村北斗は決して万全の調子ではなかったが、ここぞというところで見せたのは、さすがに中村北斗というべきか。74分、右サイドから中央へ向かってドリブルを仕掛けると、そのままペナルティエリアまで突進。たまらず止めに入った水戸ＤＦと接触して転倒すると、主審が迷わず笛を吹いた。判定はＰＫ。そしてタレイが確実にゴールネットを揺らした。

　得点経過と試合の流れを見れば、福岡の完勝とは呼べる内容ではなかった。それでも、ピッチの上に90分間にわたって漂っていたのは安心感とも呼べる空気。それは、ベテランの経験と能力の高さが、どういう状況になっても慌てずにゲームをコントロールする力をチームに与えていたからだろう。一言で言えば大人のチーム。昨年とは全く異なる空気を持つチームは、サポーターの期待に応えるには十分なチームになったように思える。

　そして水戸。２連敗という結果は悔しいものだが、ボールを持ったときは積極的にゴールを目指し、奪われた時は１秒でも早くボールを奪いに行くという、攻守ともに見せるアグレッシブな姿勢はこの日も健在。チームが大きく変わりつつあることをあらためて示した。ひとつの勝利で大きく様変わりする可能性を秘めているだけに、後は早く結果が欲しい。次節はホームでの甲府戦。サポーターの力を借りて勝利を目指したいところだ。


以上

2008.03.17 Reported by 中倉一志