3月20日（木）J2 第3節 仙台 vs 福岡（13:00KICK OFF/ユアスタ）
-ゲームサマリーはこちら-
-仙台へ行こう！ スタジアムガイドはこちら-

-★勝敗予想ゲーム！J2第3節は20日13:00締め切り！-
----------
「どんなことがあっても　いつもぼくは　待ってるよ！」

　開幕前に発行された昨季のクラブデータブック背表紙、市内公共交通機関や地下鉄ホームでの広告、さらにはユアスタ入口の掲示板…仙台の街を歩けば、様々な場所で見かける広告。サポーターで溢れんばかりのユアスタのスタンドを背景に、ベガッ太がつぶらな瞳で手招きするビジュアルに、文頭のコピーが添えられている。

　生え抜き中心選手のＪ１移籍、キャンプで起こしてしまった不名誉な事件などなど…苦しい想いを強いられる出来事が例年になく続いた、仙台の今オフ。だがベガッ太からのこのメッセージに心を救われたサポーターは、意外に多いのではないだろうか（かく言う筆者も、あの事件の後に仙台駅東口への連絡通路内でこの看板を見た時には、思わず立ち止まり、天井を見上げてしまった）

　冒頭から仙台ローカルむき出しの話が続き、福岡サポーターには申し訳なく思う。しかしお許しを。なぜなら仙台のサポーターにとって今年のホーム開幕戦は、こんなオフを経てもなお「ベガッ太に誘われたら仕方ない」とばかりにユアスタ詣でをやってしまったサポーターが、自らの気持ちに確信を持つ大事な一日になるからだ。
「どんなことがあっても　いつでもぼくは　ここにいるよ！」
　ベガッ太とサポーターのコール＆レスポンスの先にあるのは、いつもと変わらず、選手たちを支えるサポーター達の姿だろう。彼らに背中を押されながら、チームは福岡を迎え撃つ。

　シーズンを昨年同様、アウェイ２連戦でスタートした仙台だが、２連勝でホームに帰ってきた昨年とは違い、今季はここまで１勝１敗。勝点的にはまずまずの数字と言えるものの、昨年は２試合で４ゴールだったのに対し今季はわずか１ゴールと、ゴール数には大きな差がある。しかもその１ゴールもオウンゴールだったことが、現時点ではチームに対する不安要素として考えられている。

　しかしよく考えてみると、昨年の４ゴールも中身はオウンゴール、ＰＫ（中島）、ＣＫからのヘッド（千葉）、そして梁のミドルということで、必ずしも流れの中から点を取れていたわけではなく、中島、萬代のアタッカー陣が、チャンスは豊富に供給されるものの流れの中では決めきれないという状況も、よく考えれば今に似ている。そしてその昨年は、第３節で中島が、そして第６節で遅ればせながら萬代が流れの中で決めて以降、仙台の攻撃は内容でも結果でも、名実ともに相手に恐れられるものとなった。
　チャンスの数を数えれば、むしろ今季の方が開幕２戦では多い。手倉森監督が語るとおり「あとはゴールを待つだけ」の状況と言えるのが、今の仙台だ。

　チームはもちろん、その「Ｘデー」をホーム開幕戦にしようと努力を続けている。「人もボールも動く」を徹底しようとしたあまりに、密集陣形で守る湘南を相手に短い横パスが続く単調な攻めとなったことを反省した前節の岐阜戦では、大きなサイドチェンジや最終ラインからのロングボールなど「スペースを探せ」（手倉森監督）という試合前に掲げたテーマを強く意識した、バリエーション豊富な攻めが見られた。現状を踏まえた上での伸びしろ、そしてそこを伸ばしていく力が、今のチームにはある。今季の福岡は昨季と異なり、守備はリスク回避を念頭に引いて守る形を採っているだけに、同じ傾向の相手と戦ったこの２戦の経験は仙台にとって大きいだろう。

　一方の福岡は第１節が休み。前節ホームでの水戸戦が開幕戦となったのだが、結果は仙台から見れば若干うらやましい、点に絡むことを期待された選手が活躍しての２ゴール勝利だった。１点目はＦＫからのボールを、新加入の元日本代表ＦＷ黒部が、相手ＧＫの手より高い打点からヘッドで叩き込んだもの。同点に追いつかれた後の２点目は、この試合が右膝の半月板損傷からの復帰戦となった中村が、右ＳＢの位置からスルスルとゴール前に持ち込んで得たＰＫ（得点はタレイ）だった。

　さらに、この形から得点は生まれなかったが、昨年序盤の積極的な全員攻撃サッカーから改めた「今季モード」の攻撃形も垣間見えた。人数を固めてしっかりと攻撃を受け止めた後に、前線へ長いボールを供給、黒部がポストプレーでタメを作る間に、もう一人のＦＷ、もしくは中盤の選手がフォローアップを図っていく、効率重視の攻撃。福岡としてはこの仙台戦、欲を言えばこの形でのゴールが欲しいところである。

　また、福岡のチームや選手には、目指す形でのゴールと共に、仙台戦に意欲を燃やす理由が存在する。昨年このカードで福岡は４戦全敗。この「勝点０」が福岡の昇格失敗に大きく繋がったのみならず、第４クール、ユアスタでの敗戦はそのまま、福岡の昇格可能性消滅を告げるものとなった。

　そして前節に復帰した中村が膝に重傷を負ったのが、昨年７月15日、台風で一日順延になった博多の森（現レベスタ）での仙台戦だった。元々右膝の前十字靭帯断裂を経て、２試合の途中出場の後に迎えたスタメン出場の試合で、開始９分に再び右膝を（ケガの種類は違うものの）痛めて退場、またも長期のリハビリを強いられることになってしまった。中村にとって、サッカーの神様が与えた試練への完全勝利は、この仙台戦での活躍によってもたらされるはずだ。

　攻めの形が異なる両者の対決となりそうで、どちらのサッカーが主導権を掴むのかは、今後のＪ２自体の行方を占う意味でも興味深い。もちろん同時に、昇格争いの行方にとっても。
　ともかくまずは、仙台にもＪの春が本格到来したことを喜びながら、最初の90分を迎えるとしよう。

以上