3月20日（木） 2008 J2リーグ戦 第3節
水戸 1 - 0 甲府　（16:04／笠松／1,506人）
得点者：84' 荒田智之（水戸）

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今季初勝利の余韻に浸りながらも水戸・木山隆之監督は「サッカーというのは本当に難しい」ということを感じることとなった。

過去2戦に比べ、水戸の出来は低調なものであった。前線からのプレスがはまらず、ボールを奪っても縦に急ぎすぎるあまり、形がつくれない。単発で攻撃が終わってしまうため、甲府のパスサッカーに苦しみ、自陣に押し込まれ続ける展開となってしまった。特に不慣れな右サイドで起用された赤星貴文は窮屈なプレーぶり。ボールに絡む回数が少なく、攻撃を組み立てることができず、金澤大将のオーバーラップを引き出せなかったことで攻撃の厚みを生み出せなかった。

試合は終始甲府が支配する形だった。ボランチの林健太郎がうまくサイドにボールを配給。得意のショートパスをつなぎながら水戸のプレスをかいくぐっていった。だが、この日初先発となったジョジマールがチームにフィットせず、前線で起点を作ることができないままチーム全体の流れを止めてしまうと、甲府の課題である「4分の1」を克服できる兆しは見られなかった。結局、両チームともほとんど見せ場を作れずに前半は終了することとなった。

後半開始から甲府は羽地登志晃を下げ、木村勝太を投入。表面上では甲府の方が先に動くこととなった。だが、本質は違った。選手を代えてもパスサッカーを貫いた甲府に対し、水戸は「前半プレーしてみて、思った通りプレーできない。その中で相手は細かくつないで出てくるというのがあるので、それを奪ってFWに入れて早く出て行くというショートカウンターを仕掛けろという指示をしました」と木山監督が言うように選手交替はなかったものの、「現実路線」へ戦い方を変えて後半45分に臨むこととなった。

甲府のパスサッカーに耐える展開が続いた水戸。甲府のミスの多さにも助けられ、無失点で切り抜けると84分に水戸にとってこの日最初のビッグチャンスがやってくる。甲府が自陣でパスミス。それを奪ったビジュからのパスを甲府DF2人の間をぬって受けた荒田智之が冷静にシュートを決め、ついに均衡を破ることとなった。「あの1本だけだった」と甲府GK桜井繁が悔やむようにワンチャンスを確実にモノにした水戸がうれしい今季初勝利をおさめることとなった。

甲府にとっては苦しい敗戦だ。パスはつなげども、ゴールは遠いまま。過去2戦の課題を克服できずに敗れることとなってしまった。その理由を大西容平はこう語る。「昨年までは僕らはチャレンジャーとして自分たちの良さを出していこうとしていたが、今は逆の立場。どのチームも相手が自分たちの良さを消してくる。これをどう打開するか」。この日も水戸は甲府のパスサッカーを潰すためにこれまでのプレッシングサッカーではなく、カウンターサッカーに切り替えて戦ってきた。どのチームも甲府の際立つ長所を潰す戦いをしてくる。「J1経験チーム」として挑む今季、3年前とは違う立場であるという現実がそこにはある。「こういう状況になったので、覚悟を決めて向かっていくしかない」と安間監督は鋭い目線で語った。“本当に強いチーム”になるための試練にぶち当たっている甲府。この現状を乗り越えるために必要なものは方向性をぶらさないこととサポーターの力強いバックアップだろう。この苦しみの先に必ず本物の喜びがあるはずだ。クラブ一丸となって掴み取ってほしい。

対して、水戸にとっては「大きな勝利」（木山監督）だ。内容は決して褒められるものではなく、甲府の自滅に助けられた部分も多い勝利だが、それでもサッカーを切り替えて勝利をもぎ取ったことに強さを感じることができた。それを支えていたものは「絶対に勝ちたい」（木山監督）という気持ちに他ならない。理想のサッカーを捨ててでも勝利から逆算したサッカーを繰り広げて得た勝ち点3。「勢いに乗って（次節に）臨みたい」と金澤が言うように、この勝利がチームに火をつけてくれることだろう。また大きな一歩を踏み出した水戸。勝利への飽くなき執念を持ったまま、次こそは内容の伴う勝利を見せてくれることに期待したい。

以上

2008.03.20 Reported by 佐藤拓也