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【J2:第3節 仙台 vs 福岡】レポート:リーグ終盤戦を髣髴とさせる、勝負へのこだわりとチームの完成度。1点を守った仙台が昇格争いのライバル福岡を退ける。(08.03.21)

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3月20日(木) 2008 J2リーグ戦 第3節
仙台 1 - 0 福岡 (13:06/ユアスタ/15,626人)
得点者:13' 中島裕希(仙台)

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「相手は長いボールを蹴ってきて、そのこぼれ球を拾うことで攻めを作ろうとする。だからこっちの中盤が戻るのと、向こうの中盤が入ってくるのとどっちが先か。ボールの拾い合いになるだろうね」
 試合前、手倉森監督は試合展開をそう読んでいたが、立ち上がりからそうはならなかった。一言で言うと、押し上げてくるはずの福岡の中盤が前へ出ることが出来なかったためである。
 そしてその現象は、先に主導権を取った仙台の攻撃によってもたらされたものだった。シンプルに、そして早くボールを前へつなぎ、サイドで起点を作った上で福岡を押し込んだ仙台の攻撃陣に対し、福岡は前線と中盤の間に蓋をされるような形となり、ボールを入れる、落とす、拾う、といった攻めの狙いは完全に分断された。
 そんな流れの中で、仙台の得点がセットプレーから生まれる。
 立ち上がりから福岡エンドで試合を進める仙台は、高い位置でのFKやCKを何本も得るわけだが、この展開を想定していたかのように、仙台はユアスタで行われた火曜日の非公開練習などで、セットプレーでの動きを念入りに確認していた。
12分、左45度でFKを得た仙台。するとゴールから離れた位置にいた岡山が、複数の選手のスクリーンによってマークを振り切りニアサイドへ飛び込むと、梁から鋭いボールが。そのボールを岡山が流すと、ファーサイドにはこれまた絶好の位置に木谷がいる。福岡の守備は完全に対応が遅れ、木谷のそばにいた黒部はファールで止めるしか術なし。これで仙台にPKが与えられ、引き受けた中島が冷静にゲット。相手の狙いを自分たちのサッカーによって断ち切り、さらに狙っていたセットプレーが功を奏してのPK獲得。仙台が狙い通りの形で早い時間に先制点を得た。

 ところがその後、流れは福岡に傾き始める。前線が分断されていた頃の福岡は、前線にボールを運べたのが左サイドの久永のみ。そこも仙台の右サイドにいる菅井と梁が2人で挟み込むことで突破口となるには至らなかった。しかし徐々に福岡が、当初想定していた長いボールを入れ始め、また2トップの足元に入るクサビを切る意識が高かった仙台の両CBに、前でボールをカットしようとする傾向があったことを逆手に取ってか、DFライン裏へのパスを織り交ぜることにより、ゲームは福岡が作りたかった流れに変わっていく。前半の立ち上がりとは真逆、今度は仙台エンドで試合が続くことになった。
 さらに仙台はこの時間、後に手倉森監督が反省したとおり、押し込まれた中で一旦大きく蹴り出すのか、自陣からでもつないでいくのかの冷静な判断が欠けたことで、自陣低い位置でボールを失ってのピンチが連続する。ゴール右でフリーな中ボールを受けた31分の中払の決定機を林が阻止できていなければ、仙台は指針が見えないまま崩れていたと思わせるほど、前半終了までの時間は仙台にとって危険なものに。ひとまず無失点で乗り切ったものの、何かしらの対策が必要なのは、誰の目から見ても明らかであった。

 そこで後半、仙台はどうしたか。答えは45分間、1点を守りきるための現実的な守備へのシフトだった。「人もボールも動くサッカー」に固執するのではなく、ゴール前でブロックを崩さないことを心がけ、専守防衛に努める。残り時間を考えれば首をもたげそうな追加点への色気をかなぐり捨て、まず守る。そしてこれが、結果的に当たった。
 もちろん福岡も攻勢を強めてきたのだが、仙台は我慢強くエリア内に人数をかけて密集を作り、どんなにサイドを崩されようとも、ポストプレーでボールを落とされようとも、エリア内正面からのシュートだけは許さなかった。また「まず守備ありき」を徹底できたことが、カウンターを狙うべき場面でのメリハリを生む結果となり、シュート数は後半むしろ増える結果に。仙台の側の人間にとっては胃の痛くなる光景は続くが、しかし時間は着実に過ぎていく。
 さらに仙台にとって追い風、福岡にとって向かい風となったのが、後半の展開の中でチャンスメイクやフィニッシュに絡む機会が増えてきた城後の負傷退場。足をつっての彼の交代が、パワーバランスを若干仙台に押し戻す。
 リトバルスキー監督も、長野を前線に上げるなどのパワープレー策を講じるが、仙台は45分間に渡り耐え、最後はロスタイムにCB渡辺を投入するなりふり構わぬ采配で1点を守った。

 結果として仙台の勝利に終わったこの試合だが、内容は驚くほど濃い。
 まず驚いたのは両チームの完成度。仙台も福岡も、それを90分継続することは出来なかったが、自らが今季目指す形をはっきりと披露する時間があった。
 そして1点のために双方が、理想よりも現実を優先して戦う姿。
 一瞬、これが第1クールの戦いだということを忘れてしまう。仙台のホーム開幕戦、目の前に広がった光景は、生き残りを賭けて終盤戦を戦う、昇格候補同士直接対決のそれだった。

以上
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