5月3日（土） 2008 J1リーグ戦 第10節
東京Ｖ 3 - 2 横浜FM　（15:00／国立／21,798人）
得点者：39' フッキ（東京Ｖ）、46' ロニー（横浜FM）、51' ディエゴ（東京Ｖ）、60' 福西崇史（東京Ｖ）、71' ロニー（横浜FM）
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試合終了のホイッスルが聖地・国立競技場に鳴り響いたとき、東京V柱谷哲二監督は、ベンチから飛び出し天高く両手を突き上げた。
「神様に感謝をしました。クラシコ・横浜FM戦は僕にとって特別な試合です。15年前、ピッチに立っていて、（横浜FMに）１−２で負けた悔しさをまだ覚えていた。その悔しさが少し晴れましたし、横浜FMの前身である日産自動車は選手としてサッカーマンとして自分を育ててくれたチーム。とにかくいい試合をして勝ちたかった」

東京V　vs　横浜FMの伝統の一戦。1993年にJリーグが開幕した時と同じ国立競技場で、柱谷監督の思いは選手とチームを動かし、大きな勝利となって返ってきた。
「クラシコというゲームでやってやろうと気持ちが入っていた」（東京V・福西崇史）
試合前に降っていた小雨もキックオフ時には上がり、両サポーターの大きな声援がスタジアムを包む中、クラシコの名にふさわしく互いに譲らない激しい試合。
先にペースをつかんだのは横浜FM。３バックが高くラインを保ち、両サイドを使った大きな展開で東京V陣内に押し込んでいく。特に左サイドの小宮山尊信がドリブル突破や正確なクロスでチャンスを演出。東京Vにとっては、ヒヤリとする場面が続いていた。
「（和田が体調不良により）右サイドバックに急遽、富澤清太郎を起用しました。（サイドの選手に対しての）アプローチが遅く、行っていいのか悪いのか迷いがあったと思う」（柱谷監督）。だが、東京Vの守備陣は落ち着いて対応。大きな声を掛け合いながら、ピンチをしのいだ。
「飛び込まないことを考えながら、バランスを崩さないようにできれば、と話しました」と福西。これには柱谷監督も「土屋と福西が試合中に話をしながら修正をしてくれた。さすがベテランですね」と試合後、笑顔を見せた。

そして、粘り強く体を張り続ける守備陣の頑張りに、応えたのがフッキだった。
前半39分。左サイドにいたディエゴがドリブル突破し中央に走りこんでいたフッキに絶妙なクロスを入れる。低く早い弾道を描いたクロスボールに横浜FMのDFがクリアできず、フッキが合わせる形で先制点。それまでほとんど前を向いて勝負ができなかったフッキが報いた一発は、本人とチームを乗せる大きな得点だった。

後半開始早々に同点に追いつかれるものの勢いは、まだ東京Vにあった。
「前線の３人（レアンドロ、フッキ、ディエゴ）は足元がつぶされるので、スペースを探せと強めに話をしました。サイドにスペースができるので、レアンドロにはワイドに開くようにも伝えました」（柱谷監督）
破壊力、突破力ともに力のある3人が、高い位置に残りつつ、奪ったら速攻をしかけるシンプルな攻撃。２、３人のDFが待ち構えていようと果敢にドリブルで勝負に挑む。そして後半６分。横浜FMゴール前でのこぼれ球を「ディエゴがいいポジションにいたので」とフッキがディエゴにラストパス。これを押し込み２−１。さらに後半15分にも「服部さんが顔を上げて逆サイドを見てくれた。欲しいところにボールが来た」と左サイドからのクロスにファーサイドで合わせた福西。３点目となる頭での追加点は、美しく左サイドネットに吸い込まれた。

「時間が長かった。最後は本当に苦しかった」と那須大亮が話すように、後半26分にロニーにゴールを奪われ３−２と追い上げられたが、最後は全員で力をふりしぼった。
「本当にうれしい」と東京Vの選手、スタッフ、みんなが同じ声を上げた。クラシコでの１勝は、前節まで16位と低迷している東京Vにとって「幸運をもたらすことを信じている」（フッキ）。一進一退の激しい攻防。白熱した90分は、クラシコの名にふさわしい試合だった。

薄暗い雲に覆われた国立に、試合後、青空がのぞいていた。その澄んだ青さは「クラシコを戦えることを感謝して、勝てるようにとずっと心の中で祈っていた」という柱谷監督の思いが通じたような、綺麗な空だった。

以上