今日の試合速報

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第11節 広島 vs 山形】レポート:抜群のインテリジェンスを発揮した森崎和幸を中心に、広島は山形の守備的なサッカーをこじ開ける。(08.05.04)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
5月3日(土) 2008 J2リーグ戦 第11節
広島 1 - 0 山形 (16:04/広島ビ/14,332人)
得点者:68' 佐藤寿人(広島)
携帯でこの試合のダイジェスト動画を見るなら - ライブサッカーJ -
----------
 「ドクトル・カズ」
 試合後、ペトロヴィッチ監督は森崎和幸について、こう表現した。前節の徳島戦に続きこの試合でも、森崎和は「ドクトル=博士」の敬称にふさわしいプレーを見せた。

 決してスピードがあるわけではない。ドリブルも、強烈なシュートを持っているわけでもない。パスは高精度で発想も豊かだが、そういう選手は広島には他にもいる。
 しかし、森崎和が機能し始めたこの2試合とそれまでとは、広島のサッカーが全く違う。ボール支配率は格段に上がり、パスは面白いようにつながる。最終ラインの位置も高くなり、2列目・3列目からの飛び出しも、サイドチェンジの頻度も明白に増えた。

 何が違うのか。それは森崎和幸が試合全体を90分の流れの中で、俯瞰して全体を見ることができること。その力を、チーム全員が絶対的に信頼していることだ。

 中2日・中3日で続いた2試合連続での遠征、気温26.6度という暑さもあり、「みんなの身体の切れがない」と見た森崎和は、前半から無理をして攻撃するのではなく、じっくりと横パスを使いながらボールをつなぎ、相手を守備に奔走させて体力を消耗させる方法を選択した。ペトロヴィッチ監督が「この試合は我慢だ」というコンセプトのもとにたてたゲームプランを、パス回しの中心である森崎和がほぼ完璧に実行した。

 山形の小林伸二監督は、森崎浩司と高萩洋次郎、2枚のシャドーストライカーにボランチをマークにつけ、広島の攻撃力を奪おうと考えた。しかし、森崎和がシンプルな横パスを中心に試合を創ってきたため、中盤での守備が「中途半端になった」(小林監督)。

 起点を潰そうとして森崎和や青山敏弘をマークしようとすると、今度はストヤノフがあく。彼から繰り出されるロングパスとドリブルに対応しなければならない。その裏を、森崎和がしっかりとカバー。その動きは実にスムーズで、ストヤノフの攻撃参加の頻度はどんどんあがっていく。森崎和を中心としたパス回しの対応に追われたあげく、警戒していたはずの2シャドーにも危険な位置に飛び込まれた。ゾーンを後ろに置いて守るのは「狙い通り」(小林監督)だったが、一方で「混乱」と監督が表現したように、山形は余裕を持って守れている状況ではなかった。

 後半、森崎和は攻撃をスピードアップさせるべく、縦パスを入れる回数を増やし、ストヤノフのドリブルを促すパスを出す。一方の山形は、ボランチのプレーゾーンをあげ、連動して森崎和と青山にプレスをかけた。しかし、青山は激しく前方へと動き、森崎和はストヤノフと入れ替わりながら試合をコントロールしているため、うまくプレスもかからない。前半の広島のパス回しがボディブローとなり、山形の足も止まって、ミスも増えてくる。

 57分、疲労の見えた森崎浩にかわり、ペトロヴィッチ監督はFW平繁龍一を投入。68分、その平繁がドリブルで一気にペナルティエリアに侵入し、切り返しからシュート。そのこぼれを佐藤寿人が押し込んで均衡を破った。

 実はこのゴールの起点も、森崎和だった。左サイドでボールをキープした森崎和は、ややスピードのある、意志のこもったパスを服部に出す。平繁が左へ走り出すのを確認した上でのことだ。服部がワンタッチで平繁に出す。山形はそこを囲むのだが、森崎和がボールを持った瞬間に走っていた槙野が、そこでボールを奪う。これが、ゴールを生む一つ前のストーリー。絶対的な信頼感を得ている森崎和の存在があればこそ、平繁も槙野も思いきって走ることができたのだ。

 「守備に力を使いすぎて、いい攻撃ができなかった」と小林監督は唇を噛む。しかし、豊田陽平・リチェーリ・宮崎光平といった多くの主力を怪我で欠いた現状では、守備的なサッカーから少ないチャンスを活かすしかなかった。後半、ゾーンをややあげて攻めに出たところで、広島に得点を奪われたことも、事実である。「もっといい(チーム)状態で対戦したかった」というのは、小林監督の偽らざる本音だろう。メンバーが揃ってくるはずの第2クール、山形がどういうサッカーを広島に仕掛けるか、そこは楽しみだ。

 「前に行くべき時と落ち着いてパスを出す時、そのメリハリをカズさんがつけてくれた」と青山敏弘は語る。攻撃だけでなく守備でも、相手の意図を読み抜群のポジションどりと厳しいアタックで、敵の攻撃の芽を摘む。「ドクトル・カズ」という頭脳の存在は、今後の広島にとって大きなバックボーンとなるだろう。

以上

2008.05.04 Reported by 中野和也
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着