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【J2:第14節 鳥栖 vs 広島】レポート:想定内の守備を見せた鳥栖に対し、その上のクオリティを見せた広島。ボールが動く好ゲームも広島の完勝で終わる(08.05.17)

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5月17日(土) 2008 J2リーグ戦 第14節
鳥栖 0 - 1 広島 (13:03/ベアスタ/7,897人)
得点者:75' 佐藤寿人(広島)
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この日の鳥栖は、真夏日を思わせるほどの陽が射していた。首位広島を迎えての第1クールの大一番、チケットの販売数も伸びていた。この試合がどれくらい大事な試合なのか、選手もファンもサポーターも分かっていた。日中のゲームの過酷さも、広島の強さも、この試合を取り巻く全ての事象は、岸野監督の頭の中では想定内だった。そして、スタンドに駆けつけた両チームを応援するお客さまにも予想できる展開だった。ただ、両者の想定から違っていたのは、試合結果だけだった。

鳥栖の選手にとっての広島に対する想定とは、FW佐藤寿人が前線で起点になることが多いので、そこを生かさせないことだった。確かにこの日の鳥栖は、佐藤を除く他の選手がボールを持つと、佐藤のマークを徹底していた。いわゆる「広島のボールの入れ所」を抑えてしまい、攻撃の芽を摘む作戦だった。このところは、90分を通してできていた。ただ、75分の瞬間だけを除いては・・・。
鳥栖の自陣約30m地点で、この日2試合ぶりの先発出場した広島MF高萩洋次郎がゴール前にクロスをあげた。このボールは、鳥栖DFのクリアとなったが、MF服部公太の足元に入ってしまう。この地点で、ゴールまで16.5m。すなわち、ペナルティエリアの外枠のところだ。鳥栖DFは、誰もがシュートブロックに入り、広島の先制点を防ごうと服部に寄った。この瞬間に、それまで完全に抑え込んでいた佐藤が、ゴール前でフリーとなってしまった。
服部は自らのシュートではなく、佐藤へのクロスを選択し、受けた佐藤はヘディングでゴールを奪った。
「後ろに洋次郎(高萩)がいたのも分かったし、僕が打たなくても洋次郎が決めてくれていた。あのクロスも練習どおり」と試合後にしてやったりの表情を見せた。
このコメントには、広島の選手たちの落ち着きとそれぞれの役割が明確に出ている。
筆者には、74分間を鳥栖の想定した守備に苦しめられていたと見えたのだが、広島の選手にとっても鳥栖の守備は想定内だったようだ。
この1点で広島の選手たちは、それまで以上に“無理な攻撃”を試みることがなくなり、落ち着いて試合を運んだ。

鳥栖も90分間、守備に追われていたわけではない。前線では、FW藤田祥史が上手く中盤からのボールを引き出しては、ゴール前で起点を作ろうとしていた。MF高橋義希も広島のパスをカットしては左サイドから崩そうと身体を張った。時には、自ら左サイドに流れて、ボールを受けた。しかし、このサイドからの攻撃回数が少なすぎた。DF高地系治も日高拓磨も、広島のFW佐藤のマークとその受け渡しに追われ、攻撃参加の機会が少なかった。サイドMFの野崎陽介と鐡戸裕史も、空いたスペースに飛び込んでくる2列目の選手の守備に追われ、奪ったボールをもらう機会が少なかった。これでは、鳥栖のサイド攻撃は機能せず、ミドルシュートと自ら持ち込んでのGKと対峙したシュートが多くなった。放ったシュートは11本と数では広島の15本に迫ったが、広島GK木寺浩一をあわてさせるようなものは少なかった。
堅固な広島の守備も想定内であり、1点を取るのに苦労することは分かっていた。しかし、最後までその想定を崩すことができなかった。残り10分を切ってからは、CKにGK赤星拓も加わって捨て身の攻撃も見せたが、広島ゴールを割ることができなかった。

この試合は、先制点をあげた方が優位に試合を進めることは、スタンドに訪れたファンもサポーターも知っていた。それだけ、お互いのチームは堅守を誇り、先制点をあげると勝利に対して絶対的な自信を持っていた。その証拠に、今節を迎えるまで両者は先制点を取った試合で広島は1敗のみ、鳥栖は無敗を誇る(状況別勝敗)。そして、広島は、今節の戦いを終えてその自信をさらに大きなものにしたに違いない。逆に鳥栖は、戦い方は間違っていなかったが、攻撃への切り替えに不足しているものを実感させられてしまった。見ている人には、ボールがよく動き、互いの良さを消しあい、チームプレーの妙技を堪能できたに違いない試合でも、選手たちにとっては、得たものが大きく違っていたはずだ。
広島は、J1へ戻るために“したたかさ”に磨きをかけてほしい。鳥栖は、上位を目指すために“攻撃的な守備”をさらに徹底してほしい。
この日、ベストアメニティスタジアムに訪れた7,897人のサッカーファミリーは、そう感じたに違いない。

丸いボールに意図を込めてパスを出す。パスの成否は、“強さと方向とタイミング”で決まる。その後の展開は、その意図を受け手がつなぐことで変わってくる。センタリングもクリアにも、その意図を込めないと受け手にはつながらない。90分を通して、その意図をボールに込め続けたほうに結果が出ることを教えてくれた。
90分間、ボールから目が離せない。サッカーは難しい。

以上


2008.05.17 Reported by サカクラゲン
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