5月18日(日) 2008 J2リーグ戦 第14節
仙台 3 - 2 山形 (13:04/ユアスタ/16,931人)
得点者:18' 秋葉勝(山形)、39' 長谷川悠(山形)、51' 平瀬智行(仙台)、80' 梁勇基(仙台)、84' 佐藤由紀彦(仙台)
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1999年3月14日、まだ解けきらない雪がゴール裏に残る仙台スタジアム(当時)でのJ2開幕戦、仙台が後半途中で2点のリードを奪いながら、その後山形に3ゴールを奪われてまさかの逆転負けを喫した試合が、Jにおけるみちのくダービーの初戦。クラブカラーをブランメル時代の緑から現在の黄金色へと変えて心機一転臨んだ一戦で、仙台はいきなり躓いた。
なぜこの記憶が鮮明に残っているのか。それは当時大学生だった筆者自身、ホーム側のゴール裏でこの一部始終の中にいたからである。後半終了間際、反対エンドのゴールネットが岩元洋成選手によって揺らされた瞬間、奥のゴール裏にいた山形サポーターが爆発した光景も、帰りの地下鉄の中で山形のチームの魅力を興奮気味に語る、山形出身の大学の後輩を、公衆の面前ながら本気で●ってしまおうと思ったことだって、三十路をつい最近越えた今でも手に取るように思い出せる。
2006シーズン最初のダービー、アウェイで0-3の大勝を収めた時ですら、1999年のこの記憶を超えるインパクトは正直感じられなかった。
だがあれから10年目の今、ようやく仙台は、長年手付かずだったダービーにおける負債を完済することができた。9年前と真逆のスコアによって呼び起こされた記憶を前に、少なくとも筆者の中では、そんな気がしている。
全て完封での3連勝中と、最高の流れの中で今節を迎えたはずの仙台だったが、序盤から山形の策に苦しんだ。
山形はこの日、フラットに並んだMFとDFの2ラインによる密集のブロック陣形を組んできた。しかし決して引いて守るのではなく、そのブロックをハーフウェーライン近くに形成、そして仙台のまさに核である、永井篤志と千葉直樹のダブルボランチに対して、苛烈なまでのプレッシャーを与える。前線への展開、サイドチェンジ、最終ラインからのボール引き出しと持ち上がりという、目立たないながら攻めの第一歩を司ってきたこの部分を封じられた仙台は、ピッチ全面で機能不全に陥った。ボールを前に供給できない上に、タメを作れないゆえにサイドが攻撃参加する時間も奪われたのだから無理もない。そうこうしている間に、山形MF秋葉勝の2列目からの飛び出しとリチェーリの個人能力という、事前に恐れていたはずのパターンで、山形に2点ものリードを献上して前半を終えた。
しかし、今年これまでの試合でも多く見られたように、仙台はハーフタイムを経て生き返る。それもこれまでの試合と比べ物にならないほど劇的に。
山形のプレッシャーに押し潰されかけていた仙台のボランチが、圧縮されたエネルギーが飛び散らかるがごとく、定位置を捨てて山形のサイドに存在していたスペースへ走り出していく。試合後の会見で監督が振り返った「前半には足りなかった仕掛け」、まず走り込みの仕掛けで、消えかけていたダブルボランチも、そしてチームも生き返った。
起点を得た仙台は49分、前半からサポートのない中で孤軍奮闘を続けていた関口訓充が、鋭い突破による「仕掛け」で、山形の右SB宮本卓也への警告を誘う。このプレーが実は大きなドラマの引き金だと気付くまで、さほど時間はかからない。
51分、右サイドでの細かなパス回しから、大きく回りこんで飛び出してきた永井が守備陣の裏を取ると、ペナルティーエリアまで持ち込んで横パス。GK清水健太が触れたボールを、詰めた中島が執念で胸に当てて無人のゴールマウスへ跳ね返すと、最後は平瀬智行がヘッドで押し込む。まず1点。そして直後の53分、縦パスを足元で受けて上手く反転、独走しかけた平瀬に宮本の足がからむ。わずか5分間の間に2枚目の警告を受けた宮本はピッチを去ることに。
一人少なくなったチームがそこから逆に良いサッカーを見せることもあるが、反撃へ向け意気上がる仙台はそのような流れを許さない。むしろ途中投入の園田拓也、そしていくらサイドも経験済みとはいえ守備に追われては持ち味の発揮など叶わないリチェーリが並んだ山形の右サイドは明らかに傷口となり、その縫合が成されないうちに仙台は関口が容赦なく切り刻んでいく。
流れは明らかに仙台の80分、エアポケットのように山形にもスローインからの展開でチャンスがあったのだが、宮崎光平のセンタリングを受けて完全フリー、リチェーリのボレーはゴール左へ逸れる。仙台の逆転を阻むものは、これで全てなくなった。直後のプレー、入ったばかりの中原貴之による強烈なミドルが枠を直撃して高く舞い上がると、ペナルティーエリア内の落下点には梁勇基が。ミートは抑えつつ、しかし気持ちの針は振り切れんばかりの渾身ボレーが突き刺さりついに同点。そして84分、縦パスで裏を取った平瀬が左サイドで溜めると、スピードに乗って飛び込んできた梁が平瀬からパスを受け左サイドをえぐり、GKをしっかり引き付けてからファーサイドへ速いパス、待ち構えた佐藤由紀彦が冷静に蹴り込んで、ダービーにおける仙台史上、最も振り幅の激しい歓喜の物語にピリオドを打った。
今日の特に後半の空気、それをこの場にいなかった者に伝えるのはもはや困難である。ただ9年前の悔しさを経験した者としては、あの時の山形サポーターの気持ちが今になってわかったような心境だ。あの時の後輩にはこの場を借りて、先輩のいたらない感情を謝りたい。
いつまでも感傷に浸ってはいられないのも確か。昨年までの2年間、スタンド全体を巻き込んで歌い踊られ、サポーターにも好評だったロペス(現横浜F・M)の応援歌が、歌詞を変えてこの日クラブへの応援歌に変わったように、時代はあっという間に移っていくし、何よりまた中2日で次節のアウェイ熊本戦が待っている。そもそも試合内容をシリアスに考えれば、0-2からの大逆転勝ちよりも、3-0の完勝の方が良いに決まっている。
しかし…内容面の改善はチームに委ねつつも、今は冒頭に触れた「傷」を9年かけてついに癒した今季のチームが仙台の歴史に名を残した瞬間を、ただ純粋に祝い、讃えたい。
以上
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