6月29日（日）J2 第23節 草津 vs 鳥栖（13:00KICK OFF/正田スタ）
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　シーズン前、これほどまでの躍進を誰が予測できただろうか。草津は、前半戦最後の修羅場となった前節Ｃ大阪戦でも闘争心を前面に押し出したゲームを披露。Ｊ２屈指の戦力を誇るＣ大阪を２対１で撃破した。過去３シーズンであれば「金星」という表現が使われたかもしれないが、もはや「金星」ではない。折り返し地点を迎えた時点で２位まで勝ち点５差。シーズン前に掲げた「昇格争い」という目標がついに現実味を帯びてきた。

　前節、大きな仕事を果たしたのは司令塔・島田だった。30分、カウンターでボールを受けた島田は自慢の左足で一撃必殺のスルーパス。そのパスに反応した高田がＰＫを獲得すると、キッカー島田が責任をきっちりと果たし先制点を奪う。追加点も、その左足から生まれた。後半開始直後には左ＣＫから田中の得点をアシスト。Ｃ大阪を破る原動力となった。島田は、上位陣相手でも個の力で対抗できる草津の「切り札」だ。

　だが、島田の攻撃力が発揮されたのは、チーム全体でＣ大阪の攻撃を凌いだからに他ならない。「ＤＦはもちろんだが、熊林、松下、喜多の３人がよく守った。あれだけ体を張れれば後ろが楽になる」（植木監督）。シュートブロック、スライディングタックルなど、選手から発せられる気迫は凄まじかった。ＧＫ本田によると、試合終盤は多くの選手の足がツッていたという。溢れ出る闘争心が草津を支えている。

　今節の鳥栖戦は、草津にとってリベンジとなる。第１クールのアウェイ戦では、チーム力で勝る鳥栖に、一方的に押し込まれた。ゲーム終盤、ロングボールから抜け出した後藤がゴールを決め、同点に追いついたものの、苦い思い出はチームに焼き付いている。「引き分けたけど、何もできなかった」（高田）。ただ、サッカーとは不思議なもので、第１クールで圧倒的な差があったにもかかわらず、現在の両チームの勝ち点差はわずか３。草津は今節の結果しだいでは鳥栖を抜いて、４位まで浮上できる。

　現在４位の鳥栖だが、岸野監督が「病気にかかっている」と表現した17節〜19節で３連敗を喫したが、その後は３連勝中。前節愛媛戦では、高橋、高地が戦列に復帰、今節は柴小屋の出場停止も解けるためチーム状態はベストに近づく。２トップの藤田、金信泳を軸とした全員サッカーは脅威だ。前節では、藤田のチェイスから中盤がボールを奪い、高地の先制点へとつなげたが、そのゴールが鳥栖のサッカーを表現している。

　前回の対戦で、草津は鳥栖の２トップを止めることができずに苦しい展開を強いられたため、今節では、守備の要・ペスンジンと田中が起点を徹底的に潰しにいく。さらに植木監督が「後ろから走り込んでくる高地や鐡戸など２列目がやっかいだ」と警戒を張るように、機動力のある中盤をケアしなければならない。

　時間帯別得点からも分かるように鳥栖は15〜29分の時間帯にリーグトップの８得点を挙げている。草津は前半を耐えて後半勝負へと持ち込みたいところ。ただ、今の草津は、カウンターとポゼッションを使い分ける臨機応変な戦いができている。鳥栖が前へ出てくれば、島田というカウンターの切り札があるだけに好都合。相手のチカラを逆手に取って、ゴールを脅かすことは可能だ。草津の総得点26総失点23に対して、鳥栖は25点と22点で、得失点差はともに３。数字上は攻撃力、守備力に差がないチームの対戦だけに１点を争うゲームになることだろう。

　前節、Ｃ大阪戦後のロッカールームで、植木監督は選手たちに向かって「お前ら、本当に強くなった！」と称えたという。草津は、想像をはるかに超えたスピードで成長を遂げている。５月、６月の12試合の成績は、首位広島に次ぐ８勝２分２敗。白星を積み重ねるごとに培ってきた「自信」は今、「確信」へと変わりつつある。「自分たちは本気でＪ１昇格を目指している」（鳥居塚）。後半戦のスタートとなる今節は、Ｊ１昇格への挑戦の始まりだ。

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2008.06.28 Reported by 伊藤寿学