6月29日（日） 2008 J2リーグ戦 第23節
草津 1 - 0 鳥栖　（13:04／正田スタ／2,451人）
得点者：44' 後藤涼（草津）
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草津の勢いはもう止まらない。草津が１-０でリードしたまま終盤を迎えたゲームは、その後、淡々と時間が流れていった。試合後、鳥栖の選手たちは口々に「自分たちのサッカーができなかった」と言った。逆を返せば、鳥栖にサッカーをさせなかったと言える。前節Ｃ大阪に続き、鳥栖までも撃破した草津はクラブ初の２ケタ勝利・10勝に到達、順位を５位まで上げた。

　藤田、金信泳という長身２トップを前線に配置した４―４―２のシステムを選択する鳥栖に対して、草津は前節同様に中盤の底でＤＦ喜多を起用。アンカーとしてバイタルエリアを埋める役割を与える。　
序盤から鋭い出足を見せたのは草津だった。開始４分、左サイド寺田のクロスに２列目の熊林がヘッドで飛び込み、最初の決定機を迎えると、９分には高田のミドルがＧＫを強襲するなど主導権を握る。一方の鳥栖は15分に金信泳、23分に藤田がカウンターからチャンスを得るが、リズムを変えることができない。

　試合前から激しく降り続いた雨でピッチコンデションも心配された試合だが、草津は、きっちりとボールをつなぐポゼッションサッカーを展開していく。第１クールの対戦では、鳥栖に対して何もできなかったが、今試合では互角以上に渡り合い、成長した姿をみせていった。草津に得点シーンが訪れる予感は、序盤から十分に漂っていた。　
待望のゴールは前半終了間際に生まれた。鳥栖ＣＫをＧＫ本田がキャッチし、前線へパントキック。後藤のポストプレーからボールを受けた島田はドリブルで中央へ進むと見せかけて左サイドの寺田へ。「自分が中央へ行くことでＤＦが集まるので、寺さん（寺田）に預けた」。寺田のクロスの折り返しをペナルティエリア左で受けた後藤は、スライディングで止めにきたＤＦ２人をフェイントでかわすとシュートを放ち、ゴールネットを揺らす。「ＤＦが飛び込んできたのが目に入ったので、切り返して左足で対角へ打った」と後藤。草津は前半ラストプレーでゴールを奪い、後半へと向かう。

後半に入っても草津の運動量は落ちなかった。鳥栖のボールに対して、２、３人が囲んで自由を与えない。その中で大きな役割を果たしたのが喜多だった。的確な位置取りと粘り強い守備で、ボールには必ず喜多が立ちはだかった。そして、鳥栖がサイドを突破した際には、ＤＦラインに入って体を張った。「ヤスシ（喜多）がアンカーにいたので、サイドが破られてもセンターバックとヤスシの３人でゴール前を固めることができた」と本田が話せば、植木監督は「攻守において思った以上の能力を発揮してくれている」と評価を与えた。喜多のボランチ起用は、今季最大の発見になる可能性がある。

ゲーム終盤、草津の選手たちは２点目を狙いながらも勝つためのサッカーに終始。ゆっくりとポゼッションしては時間を刻んだ。さらに指揮官の采配も徹底していた。74分に山崎を投入し鳥栖のサイド攻撃をケア。80分には運動量が落ちた司令塔島田を前線へ上げて、中盤に鳥居塚を起用。石橋を叩いて渡るような戦術で鳥栖の反撃の糸口を消していく。そして、90分間のゲームは終わった。３連勝して敵地へ乗り込んできた鳥栖だが、草津の素早い寄せに苦しみ、自分たちのサッカーを見失った。岸野監督は「結果よりも内容に不満が残る」とため息をついた。

今季10勝目を飾った草津だが、そのうちの９勝が５、６月に挙げた勝利だ。連戦が続く２カ月を３敗で乗り切りたいと言っていた指揮官だが、選手たちは９勝２分２敗という最高の結果を導いてみせた。「選手たちが戦術を理解して、実行してくれている」と植木監督。今節の草津は、守り勝ったのではなく、走り勝った。選手が走り続ける限り、結果はおのずとついてくる。過去７戦負けなし。勝ち方を覚えたチームは、「奇跡」への階段を登り始めた。

以上


2008.06.30 Reported by 伊藤寿学