7月6日(日) 2008 J2リーグ戦 第24節
広島 2 - 2 熊本 (18:04/広島ビ/7,924人)
得点者:27' 木島良輔(熊本)、35' 佐藤寿人(広島)、55' 佐藤寿人(広島)、67' 山口武士(熊本)
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上村健一が見せた「あのプレー」を見た時、これをどう表現すればいいのか、ずっと考えていた。
執念。意地。執着。勇気。狂気。
たくさんの言葉をあてはめてみる。どの言葉でも当てはまるし、またどんな言葉を使っても、「あのプレー」の全てを表現できないような気がするのだ。
こういうプレーを見せられると、自分の表現力がいかに貧弱か、呪いたくなる。どんなに強い言葉を連ねても、熊本の主将・上村健一という男が見せつけた、コンマ何秒かの決断が伴った強烈なプレーのパワーに、打ちひしがれてしまう。
自らの表現力のなさを悔やみつつ、上村健一の「あのプレー」を説明したい。
67分、スコアは広島が2−1と1点リード。圧倒的に広島がボールを支配し、3点目がいつ入るか、という状況だった。左サイドのスローインから高柳一誠がボールを持ち、高萩洋次郎→青山敏弘→高萩と軽快にパスを回す。そこにプレスにいっても、広島の高い技術の前に、熊本はボールを奪えない。
この時高萩は、右サイドに向けてサイドチェンジのボールを出そうとした。そこを読んでいた熊本のボランチ・山本翔平は、必死に足を出してボールをカット。しかしそのボールは、森崎浩司の前に落ちようとしていた。
その瞬間、上村健一が、飛び込んだ。
上村はこの時、やや逆をつかれた形になっていた。そこからもう一度ステップを戻そうとすると、森崎浩に決定的なスルーパスや突破を許す時間を与えてしまう。
絶対に、やらせない!!
そんな想いを爆発させた上村は、森崎浩がボールをキープしようと足をあげていたにも関わらず、そこに身体ごと飛び込んでいった。一歩間違えれば、頭や腹をぶつけてしまい、大けがをしてしまう可能性もあった。しかし、上村はそんな恐怖心をはね飛ばし、自らの身体を盾として、ルーズボールを自らのものとしたのである。
上村の身体は、勢いよく地面にたたきつけられ、ボールはその前に落ちた。上村はすぐに身体を起こし、ボールを喜名哲裕に渡す。高萩のプレスは、間一髪、間に合わなかった。
上村の想いがこもったボールを、熊本はつないだ。山口武士が、左に開いた山本へパス。タッチラインを割りそうになったボールを山本はギリギリでキープし、クロス。そこに飛び込んだ山口が槙野智章に競り勝ってヘッドで叩いたボールは、ゴールネットを揺らした。
上村健一のこのプレーこそ、まさにプロフェッショナル。勝利のために、自らの身体を投げ出したのだ。怪我への怖さもあったはず。間一髪でかわされ、飛び込みは無駄に終わったかもしれない。しかし、それを怖れて何もしなければ、チームは大ピンチにさらされていた。だから上村は、プロとして、自らの身体を投げ出す決断をした。そしてそれが、同点ゴールを生んだのである。広島の攻撃に耐え忍んでいた熊本を、彼の勇気が、彼の男気が救ったのだ。
広島の選手たちは、この偉大な広島OBのプレーから、学ばないといけない。特に、一つのボールを奪うことへの執念。確かに往年のスピードは落ちてはいるが、ここぞという場面で見せる上村の迫力は、さすが。こういうプレーを見て、何かを感じなければプロではない。
試合そのものは、広島が自らのミスから勝点2を失ってしまったことに尽きる。
木島良輔の先制点につながったリベロ・森崎和幸のプレーは「やってはいけないミス」(森崎和)。しかし、誰かが森崎和のあがった後のスペースをカバーしておけば、何ということはないシーンだ。リベロがオーバーラップしたら、そのスペースを埋める。それは実は、いつもはボランチ・森崎和が務めていた仕事。替わりにそれを務める選手が、いなかった。
同点シーンにしても、リスクマネジメントができていれば、あんなにたやすくカウンターを食らったりしない。まるで、昨年の悪夢の焼き直しを見ているような失点だ。
確かに「たくさんのチャンスを得点にできなかった」(ペトロヴィッチ監督)ことは間違いないが、それでも2点を奪っている。勝点1に終わったのは、間違いなく広島の守備の乱れが要因。リスク管理ができない守備では、この先もこういう失点を覚悟する必要がある。
そうならないためにも、上村健一の見せた「魂のダイビング」から始まった失点を、広島の選手たちは目を皿のようにして何度も見つめるべきだ。マイボールのスローインから同点ゴールまで、約25秒。そこには、個人としてもチームとしても、学ぶべきポイントが山ほどつまっている。
以上
2008.07.07 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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