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【J2:第42節 仙台 vs 広島】レポート:決戦の結果は勝点1。しかし今はこの「1」が自らを救う事を信じ、残る3試合を無心で勝ち続けるだけ。もう仙台に「ストレス」はない。(08.11.09)

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11月9日(日) 2008 J2リーグ戦 第42節
仙台 1 - 1 広島 (13:34/宮城ス/23,745人)
得点者:32' 菅井直樹(仙台)、44' 佐藤寿人(広島)
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 ひょっとしたら筆者だけなのかもしれないが、あまりにも大きな意味を持つ試合を前にテンションが高まりすぎていたせい、そして後半の、広島にあまりにも長い時間押し込まれていた内容のせいもあってか、試合が同点で終了したことを告げる長いホイッスルの後、この勝点1という結果が果たして是なのか非なのか冷静に判断ができなくなっていた。

 いや、正直に吐露すると、あれからしばらく時が経って、家路につき、我が家の玄関をくぐり、外の寒さと真逆で暖房の効いたリビングへと入り、今日も元気に泣きじゃくっているもうすぐ1歳の我が娘とにらめっこを交わした今も、まだ勝点が「1」で良かったのか悪かったのか、分からない。
 おそらくこの疑問は、今日の試合内容が、勝ち、負け、引き分け、そのどれにも転ぶ可能性があったものであることによると思われるのだが。

 この試合において、仙台は3ボランチのシステムで広島を迎え撃ったのだが、3人の位置は立ち上がりから総じて低め。対する広島の面々から見れば、今日の仙台はセーフティーファースト、後方からひらすら長いボールを前線めがけ蹴り込むサッカーに映ったようだが、それでも広島のように期せずして1トップ2シャドーに近い布陣となっていた仙台の前線3人、梁勇基、関口訓充、そして中島裕希の3人は、上手くポジションを変えながら動き回り、ロングボールの攻撃をなかなか効果的なものにしていた。

 とはいえそれが機能している間は良いが、一旦広島に押し込まれてしまうと、むしろ「前に出られない後方の7人」と「前で活きたボールが来るのをぐっと待つ3人」が大きく分断される様が目につき始める。だがここで前の3人まで下がりだしたら、おそらく本当の意味での「ドン引き」に仙台は陥ってしまったに違いない。

 前半の15分辺りから10分間ほど続いた苦しい時間を凌いだ仙台に、チャンスはやってきた。思えばこの時間帯、立ち上がりから守備に追われていたはずの右SB、一柳夢吾が頻繁に攻撃に絡み始めていた辺りに「風向き」が変わり始めた証は現れていた。一柳曰く「中盤でボールが収まり始め、タメができるようになった」という言葉の通り、この時間帯の仙台は中盤が勇気を持って高い位置を取り、広島のエンドで試合を進めることができていた。

 そして生まれた先制弾。絡んだのは立ち上がりから守備に追われていたはずの3ボランチだった。中盤の斉藤大介からペナルティーアークの永井篤志の足下へパスが入るのだが、永井はとっさの判断、ヒールでダイレクトにボールをゴール方向へ流す。その先には永井の思惑通り仙台の選手がしっかりと用意していたのだが、なんとそれは菅井直樹だった。DFを背負って倒れ込みながら放った菅井のシュートがグラウンダーでゴール左に転がり込む。仙台に、勝点3が現実的なものとして見えた瞬間だ。

 だが、今季の広島戦で仙台が決めた最も早い時間のゴールによって、広島のサッカーは完全に呼び起こされ、得点前にあった時間帯以上に、仙台はこれぞまさにと言うべき「守勢」に回された。ロングフィードどころか、クリアでハーフウェーラインを超すことすら容易ではないほどの状況でもよく耐えてはいたのだが、仙台があれだけ苦労して生み出した1ゴールを、一瞬に、そして華麗に奪い去ることの出来る男が広島にはいて、もう少しで一息つけるはずだった44分に牙をむく。左サイドを突破した槙野智章(ちなみにプレスルームではこのセンタリングを上げた選手について、やれ服部だ、やれ高萩だと様々な「目撃証言」があったが、少なくとも仙台側の取材陣からは、槙野だという意見をあまり聞かなかった。思えばこれこそが、槙野の恐ろしさを表しているとも言える)が入れたセンタリング、ゴール至近で佐藤寿人がゴールを背にして胸トラップによってボールを落ち着けると、一旦ワンバウンドさせた後に、回し蹴りの要領で芸術的な左足ボレー。トラップからフィニッシュまで流れるようだったこのシュートは防げない。こうして同点でハーフタイムへ。

 仕切り直しを願った仙台サポーターの祈りは、後半に入りさらに鋭さを増した広島の攻撃によって早々と打ち砕かれる。仙台にとって決定的な反撃のチャンスが多く巡ってくることはなく、むしろ手にしていた勝点1を失う不安が続く。しかしこの苦境に、今季何度もあったシーン同様、GKの林卓人が立ちふさがった。67分、ペナルティーエリア内右からフリーで放たれた高柳一誠のシュートをセーブすると、79分にはこれもフリーの佐藤寿人のヘッドをがっちりキャッチ。さらに後半ロスタイム、CKからゴール正面フリーで合わせた清水航平のヘッドも、足下のボールをしっかりと抑えた。こうした水際の粘りが、90分を終えた仙台の手元に、勝点1を残すことにつながった。

 さて、こうして得た1ポイント。仙台にとってどのような意味を持つのか、ホットココアを飲んでほっこりと落ち着いた今、改めて考えてみよう。

 勝点3を得られなかったことで、2位山形との勝点差は5。残りが3試合だということを踏まえれば、山形に勝点5以上を奪われれた時点で、仙台の2位可能性はなくなる。2位争いにおいては、やはり仙台が勝点3を取れなかったことは痛い。
 しかし、4位以下の追撃、特に湘南との関係を考えれば、今日の「1」の意味は極めて重い。現時点で得失点差においては、仙台よりも湘南の方が勝っており、勝点で並ばれた場合は順位がひっくり返る状況にいたのだが、今日仙台が「1」を上積みできたことにより、少なくとも1試合で抜かれることは無くなった。このアドバンテージは、思いの外大きい。
 いや、3位を守るのを考えるのはやはりよそう。佐藤寿人に「このサッカーではJ1で厳しい」と言われてしまった今日の仙台だが、これはあくまで今日のみのサッカー。次節以降は再び、これまでの仙台が見せていたしっかりボールを握ってサイドから攻略するサッカーを思う存分披露し、ひたすら勝点3のみを狙い続ければいい。

 思えば上位陣の中で、最後に広島戦を残していたこと。これこそが仙台にとって最大の「ストレス」だった。だがそれをシーズン無敗で乗り切り、その上で今3位につけられているのだから、後はもう何の心配もせず、ただもう一段上を狙い続けるのみである。

以上
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