11月15日（土）第88回天皇杯5回戦 新潟 vs Ｆ東京（13:00KICK OFF/とりスタ）
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　「いつも寝転がってテレビで見ている。あの場所に一度は立ってみたい。きっと気持ちがいいだろうなってそう思うんですよね」（石川直宏）
　元日の天皇杯決勝。聖地と呼ばれる国立霞ヶ丘競技場には満員の観衆が集まる。一年の始まりであり、長かったシーズンの終わりとなる舞台だ。独特の空気を纏（まと）ったピッチに立つことを許されるのは僅か2チームのみ。だが、今季のリーグ戦は優勝も、残留争いも混戦を極めている。チームとしての総合力が問われている。天皇杯5回戦　新潟対F東京戦が、明日13時、鳥取スタジアムでキックオフする。

　F東京はリーグ6位。鹿島、G大阪を破り、再び優勝争いに加わった。シーズンも終盤となり、満身創痍の選手も多い。
　「チームとしてここまできた。一丸となって臨みたい。いつでもいけるように準備をしてくれている選手もいる。アクシデントも含めてチームで対応できるかが大事」（城福浩監督）
　今季は多くの選手が公式戦のピッチに立った。チームの総合力を高めつつ、シーズンを乗り切った経験を活かすときがきた。また、ケガから近藤祐介が復帰するなど、終盤に向けて明るい材料も揃ってきている。

　新潟は、リーグ14位と残留争いの渦中にいるが、チーム戦術も成熟しており、自分たちの形を持つ好チームだ。サイドの起点となるMF松下年宏の復帰も大きい。「サイドが高い位置で起点となってビルドアップに加わってくる。鹿島を相手にチャンスもつくりだしていた。（新潟を相手にした場合は）中央をケアしながらも最終ラインの裏のスペースもカバーをしなくてはいけない。前線の選手も含めた守備が必要だし、バイタルエリアを空けるのはよくない」と、城福監督も警戒を強める。

　シーズン序盤のリーグ戦ではFC東京が勝利を挙げているが、今回の対戦では前回不在だったMFマルシオ・リシャルデスが中盤でタクトを振るう。バイタルエリアを空けるようであれば、ファイナル・サードの侵入口で存在感を示すFWアレッサンドロら攻撃陣を封じることが難しくなってしまう。逆に新潟も、F東京の選手にバイタルエリアを自由に使われれば、厳しい展開が待っているはずだ。

　今回の対戦でクローズ・アップされるのは2人のバランサーの存在だろう。F東京の浅利悟と、新潟の本間勲。どちらが、チームを準々決勝へと導くか。リーグ戦の順位が必ずしも結果に反映されるわけではない。トーナメント戦には、一発勝負の怖さが潜んでいる。それだけに明日の一戦は時には泥臭くフォア・ザ・チームを徹底するMFが鍵を握っている。
　「ここで負ければ終わってしまう。天皇杯はモチベーションが高いチームのみが次へと進める。毎年、早々に負けてきた。少しでもこのメンバーで長くサッカーをやっていたい。その気持ちが強い。リーグに繋げるためにも負けるわけにはいかない」（浅利）

　今季は首脳陣からも再び高い評価を受けている。「浅利は凄い」。監督や、チームスタッフから何度もこの言葉を聞いてきた。「技術だけなら僕はこのチームでも一番下手なので」という浅利は、30歳を過ぎても努力を惜しまない。「ベテランのサリ（浅利）が、チーム立ち上げの週初めになぜ走れるのか。それを若い選手にももっと考えて欲しい」（奥原コーチ）。自らの持ち味を消すことなく、城福監督の求める戦術に順応しようと新たなサッカーに挑戦し続けてきた。今季のチームで監督のコンセプトを深く理解し、実践した一人に違いない。バランサーの真骨頂を見せるべき試合。期待を掛けられたゲームでは必ずそれに応えてきた。決して派手ではないかもしれない。それでも浅利がF東京を勝利に導く。

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2008.11.14 Reported by 馬場康平