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【第88回天皇杯5回戦 川崎F vs 広島】レポート:爆発した広島のサッカー。J1最多得点の川崎Fを完封して、8強へ(08.11.15)

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11月15日(土) 第88回天皇杯5回戦
川崎F 0 - 2 広島 (13:04/長崎/4,858人)
得点者:33' 青山 敏弘(広島)、57' 森崎 浩司(広島)

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 ゆっくりと最終ラインでパスを回し、GKへのバックパスを何度も使って、ボールをキープする広島のDF陣。広島サポーターには、おなじみの光景だ。そこをチャンスと見たのか、ジュニーニョや鄭大世がプレスをかける。瞬間、「ボールが奪えるかも」と感じる。広島のGK佐藤昭大はプレスをかけられても大きく蹴り出さず、あくまでつなごうとするからだ。

だが、普段の練習から佐藤昭は、3人同時にプレスをかけられても、ペトロヴィッチ監督に「つなげ」と命じられている。ハーフコートで行われる11対12の練習では、受け手にも厳しいプレスがかかっている。そのため、当初は慌ててパスミスを繰り返し、佐藤昭は何度も失点した。しかし「練習なんだから、どんどんチャレンジしろ」というペトロヴィッチ監督の励ましに力づけられ、彼はミスしてもミスしても、ひたむきに「つなぐ」ことをあきらめなかった。
 その蓄積があるから、少々のプレスでは全く動じない。佐藤昭は、2人がプレスに来たその間に、スパッと縦パスを通した。そのクサビから、広島の先制点は生まれた。

 前線からのプレスと引き換えに、中盤はスペースがある。そこでクサビを受けた広島のボランチは、易々と右サイドに展開。その瞬間、広島のゆったりとしたリズムが変化、選手たちに「グイッ、グイッ」とギアが入った。
 柏木陽介が左サイドに振り、服部公太がクロス。この瞬間、広島の選手たちは4人がペナルティエリアの中に飛び込んできた。一方、広島のリズムチェンジについていけなかった川崎Fの選手たちは完全に置いていかれ、ゴール前には3人しかいない。
 狙いすました森崎浩司のヘッドは、惜しくもGKの正面に。だが、そのこぼれに誰よりも速く反応したのは、50m以上の距離を一気にダッシュしてきた青山敏弘だった。
 33分、「最終ラインからつなぎ、後ろから走って数的優位をつくる」広島攻撃サッカーでのゴール。「俺たちはやれる」。選手たちが、確信を抱いた瞬間だった。

 ただ、この緩急を使ったパスサッカーは、一方で危険もある。パスをつなぎながら全体が前へと走るだけに、そのパスをカットされた瞬間、広島は数的不利な状況に陥るからだ。
 20分、38分。いずれも広島のパスをインタセプトした川崎Fは、一気のカウンターに持ちこんだ。どちらのシーンも、佐藤昭の落ち着いた対応によってジュニーニョのシュートは弾かれ、得点はならなかったが、広島のパスミスから生まれたこの決定機、どちらかが決まっていれば、試合の結果はどう転んだか。
 一方で、広島の緩急自在のパス回しに川崎Fはついていけず、決定機では広島が川崎Fを圧倒していたことも事実。そういう意味では、前半を1-0でしのげたことは、川崎Fにとって幸運だった。

 後半開始早々、ここまで消えていたレナチーニョが、左サイドを崩した鄭大世のパスを受け、決定的なシュートを放つ。佐藤昭の足に当たったボールが、フワリと浮く。
 入るか? いや、バーだ。
 この決定的なシュートをきっかけに、川崎Fは波状攻撃を仕掛ける。広島は全体が引きすぎてセカンドボールを拾えない。
「ああいう状況でも、しっかりと動いてボールを保持することが大事だ。蹴り出すだけの展開では、我々にとっての『いい守備』ではない」とペトロヴィッチ監督は言う。押し込まれても、あえてつないで状況を打開するのが、広島のサッカー。しかし、この時間帯はそれができなかった。

波状攻撃を繰り返しながら、得点できない川崎F。集中した守りを攻撃につなげられない広島。我慢比べとなった。
57分、自陣でボールを細かくつなぎ、右サイドに展開した広島。李漢宰が縦パスを入れ、高萩洋次郎が飛び出す。裏をとった高萩は、ワンタッチでDFとGKの間に質の高いクロスを入れる。森崎浩司がゴールに正確に流し込み、広島は我慢比べに勝利した。
 この日の川崎Fは、11人が攻守に孤立していた感があった。「チグハグだった」と村上和弘が言うように連動性に乏しい状況では、たとえ個々の能力で上回っても、勝利は難しい。
 ただ、この敗戦を、引きずるわけにもいかない。「優勝の可能性が残っている限り、あきらめない」(高畠勉監督)ことが重要だ。課題を修正し、連動してチームとして闘えば、首位鹿島との3ポイント差を逆転する可能性はある。
 一方の広島にとって、「J1 上位のチームに自分たちのサッカーで勝利したことは、来季にもつながる」(高萩)。課題は多い。だが、まだ若いこのチームは、その課題を乗り越えることで、成長を重ねる。
「昨年は、ファイナリスト。今年は、その先にたどり着きたい」
 ペトロヴィッチ監督の言葉を合い言葉として、若き紫のイレブンはさらに上へと目指す。

以上


2008.11.16 Reported by 中野和也
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