5月2日（土） 2009 J2リーグ戦 第12節
草津 0 - 3 仙台　（19:04／正田スタ／7,406人）
得点者：50' エリゼウ（仙台）、69' マルセロソアレス（仙台）、88' マルセロソアレス（仙台）
スカパー！再放送 Ch180 5/3（日）16:30〜（解説：遠藤雅大、実況：吉田学、リポーター：円戸由香）
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オセロに例えると、このゲームは説明しやすい。草津は前半、オセロ板の中央付近でせっせと相手のコマをひっくり返した。だがゲームが佳境を迎えた後半、仙台に４隅を取られて形勢はあっという間に逆転。終わってみればオセロ板全体がベガルタゴールドに染まっていた。ゲームの流れを的確に読んだ仙台は５連勝で昇格圏内となる３位へ浮上。後半の草津は、次々と裏返るオセロをただ眺めることしかできずにホーム戦３連敗で９位へと転落した。

　６ゴールを叩き出している都倉賢が警告累積で出場停止となった草津は、ケガ明けの高田保則が５試合ぶりに先発へ復帰。後藤涼との２トップで仙台を迎え撃つ。立ち上がりこそ押し込まれた草津だが１５分過ぎからパスが繋がり始めてリズムをつかむ。惜しくもオフサイドとなったものの１７分には高田がフィニッシュへの形を作り、２９分には松下裕樹の強烈なミドルが仙台のＧＫ林卓人を強襲。時間が進むごとに、草津のパスワークが仙台を追い詰めていく。

一方の仙台は、前がかりになる草津のギャップをついて中島裕希、梁勇基がドリブルで中央突破。２４分には中島のシュートがポストをかすめ、その直後には梁が千葉直樹とのワンツーでゴールへと迫る。前半のチャンス自体が多かったのは草津だが、仙台は慌てることなく対応し０―０のまま４５分を折り返す。「先制しなければいけない内容だった」（熊林親吾）、「前半は最悪０―０で帰って来いと伝えていた」（手倉森誠監督）。決めきれなかった草津と、守りきった仙台。心理的には仙台優位のゲームになっていく。

　ゲームが動いたのは後半開始直後の５０分。梁が蹴った右ＣＫにエリゼウがヘッドで合わせて仙台が先制に成功する。草津は３試合連続でセットプレーから失点。松下が「対策はしてきたつもりだったが、またやられてしまった」と話したが、チームとしての課題が修正できずにゲームの主導権を手渡すことになる。

　１点を先制すると威勢の良いサッカーを展開する今季の草津だが、逆に一発のパンチを食らうと怯んでしまう悪い癖は、この試合でも変わることはなかった。その隙を見逃さなかった仙台は６５分にマルセロ・ソアレスを投入。６９分には梁のパスを受けたソアレスが草津ＤＦを華麗なシュートフェイクで交わして追加点を奪うと、８８分には関口訓充のパスを受けたソアレスがダメ押しとなる３点目を流し込み、ゲームを決めた。草津は今季最多の７４０６人が駆けつけたＧＷのホーム戦で敗れ去った。

　連勝街道をばく進する仙台は、効果的な時間帯にゴールを奪い、危なげない勝利を収めた。「ホーム草津はアグレッシブに来るのでアウェイの戦いをしよう」という手倉森監督の戦い方をチーム全体が理解し忠実に実行した。状況に応じて、バランスを整える千葉直樹、斉藤大介のゲームコントロールが目立った。またソアレスを投入した時間帯が絶妙で、草津に反撃の余地を与えなかった。５連勝という結果はチームに大きな自信を植え付けた。

　敗れた草津は前半の内容が悪くなかっただけに、セットプレーから失点した後半の戦いぶりが悔やまれる。理想に向かってチャレンジすることは理解できるが、課題を改善しなければ安定した結果につながらない。また、先制された試合は５戦すべて完封負けで、勝負弱さも気掛かりだ。この日、手倉森監督から「ポジションのユニットの隙間が空いている」「（前節の水戸に比べて）攻守の切り替えが遅い」という助言をもらった。攻守の切り替えは今季の草津の根幹となるファクターだ。攻撃サッカーを目指す一方で、大事なパーツを落としては意味がない。「攻守のバランス」と「勝負への執着心」は、「攻撃サッカー」と相反するものではないはずだ。

以上


2009.05.03 Reported by 伊藤寿学