5月2日(土) 2009 J2リーグ戦 第12節
水戸 2 - 0 鳥栖 (13:04/笠松/2,405人)
得点者:19' 菊岡拓朗(水戸)、69' 荒田智之(水戸)
スカパー!再放送 Ch186 5/4(月)04:30〜(解説:野々村芳和、実況:西達彦、リポーター:佐藤愛美)
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「守備も攻撃も思い通りできた」と語った木山隆之監督の笑顔が水戸の磐石の勝利を表していた。2対0で鳥栖に完封勝利。上位戦線に踏みとどまる貴重な勝点3を手に入れた。
両チームを分けたもの。それはポゼッションの考え方の違いだろう。最終ラインから細かなパスをつないで攻める鳥栖に対し、水戸は前線の高崎寛之にロングボールを送ることで先手を取り、そこから展開して攻める。鳥栖が何本もパスを回してやっと前線にボールが回る攻撃を繰り出す一方、水戸の攻撃には1本のロングボールで状況を打開する力強さがあった。それは「ポゼッションという言葉自体がサッカーの世界では死語」とまで言い切る木山監督の考えが如実に反映されている。「守備的なチームというのは、ボールをつないでボールを保持する。でも、攻撃的なサッカーをするチームというのはゴールに向かうポゼッションをする。常にゴールを目指してボールをつなぐことが僕はポゼッションだと思います。ポゼッションに長いパスも短いパスもなく、ボールを前に運ぶことが一番」と木山監督は説く。
この日の水戸も「前」を目指した。序盤から水戸は高崎めがけてのロングボール攻撃。そこで高崎が競り勝って起点を作ることで相手のDFラインを押し込み、空いたスペースを荒田智之や菊岡拓朗らが鋭く突き、スピーディーな攻撃で鳥栖ゴールを襲った。そして、17分、左サイドで菊岡、荒田、そして小澤雄希が華麗なパスワークで鳥栖DFを翻弄し、最後はペナルティエリアに走りこんだ小澤がシュート。クロスバーに当たってゴールにはならなかったものの、その後に得たCKでのゴール前の競り合いで高崎が倒され、PKを獲得。菊岡がゴール中央に叩き込み、水戸が先制をする。
そして前半ロスタイム、水戸が再びPKを獲得する。右スローインからDF裏に抜け出した荒田がペナルティエリアで倒され、ファウルをした内間安路が2枚目の警告を受け、退場に。PKを荒田は失敗するものの、残り45分を数的優位に立つことができるというアドバンテージを得ることとなった。
そして後半にこそ、今の水戸の真骨頂が発揮された。1点のビハインドを負い、10人ながらも果敢に攻め立てた鳥栖に対し、水戸は「勢いだけにならないような守備をした」(大和田真史)。水戸の守備といえば、積極プレスだ。しかし、中2日の連戦、さらに25度の暑さの中、無闇に前からプレスをかけるのは無謀。相手は数的不利の状態なだけに、無理して前に出ず、ボールを奪ってからスペースを突けばいい。それは水戸に「前」への強さがあることでさらに力を発揮した。後半はカウンターサッカーに切り替え、ボールを奪ってから高崎と荒田の強さと速さを生かした電光石火のカウンターで鳥栖ゴールを襲い、そして69分にカウンターから右サイドを抜け出した高崎からの折り返しを荒田がゴールに沈め、値千金の追加点。その後も安定した守備で鳥栖のパスサッカーを封じ込んだ水戸が、「落ち着いて守る守備とプレスに行く守備が使い分けることができた。それがすごくよかった」と木山監督が言うように、チームの成熟度を感じさせる完封勝利をおさめた。
攻守で強さを見せて勝利を手にした水戸。今の水戸のサッカーは2トップの強さによって成り立っていると言っても過言ではない。前線で確実にボールをおさめ、そして勇猛果敢にゴールに向かっていく2人こそが水戸の攻撃サッカーの象徴と言えよう。そうした個の力を木山監督の考える「前」へのサッカーが最大限に生かしていることが現在の好調を支えている。
だがしかし、あまりにもショッキングな情報が試合後に飛び込んできた。鳥栖戦で荒田が全治3ヶ月の負傷を負うことに……。ここまで9ゴールで得点王トップに立っていたエースの戦線離脱はあまりにも痛すぎる。プレーだけでなく、精神的な面でも「今まで荒田に救われてきた」と大和田が言うように、水戸にとって荒田は絶対的な存在だっただけに、この勝利の代償はあまりにも大きい。ただ、ここで期待したいのはチーム全体が「荒田のために」と一丸となって戦ってくれることである。そして、これから木山監督がどう「前」の強さを発揮していくかに注目したい。この試練を乗り越えたときに水戸は本当の強さを手にするはず。ピンチのときこそ、チャンスのとき。ここからが水戸の正念場。水戸の攻撃サッカーが決して「荒田」頼みのサッカーではないことを証明するチャンスであるのだ。真価を問われるときがやってきた。
一方、鳥栖は前節から起用している3トップが力を発揮しきれなかった。昨季の鳥栖は前線に藤田祥史と金信泳が立ち並び、今の水戸のような「前」への強さを発揮できていた。しかし、2人がいなくなった中でいかに「前」に行くかの模索が続いているが、なかなか光が見えてこないことが苦しい。「昨年の3連敗のときは内容が悪くてもハッキリ見えているものがあった。でも、今日は何もいいところがなかった」と岸野靖之監督は肩を落とした。だが、今が変革の一番辛い時期。ここで自分たちのやるべきことを見誤らず、貫かなければこの状況を打破できないだろう。鳥栖もここからが正念場。岸野監督がいかにチームを再生させていくのかに注目したい。
そして、この日は本間幸司の300試合出場のメモリアルゲーム。58分には至近距離からのシュートを片手で防ぐなど本間らしいスーパーセーブも飛び出し、チームを完封勝利に導いた。JFL時代から水戸の守護神であり続ける本間。水戸に関わるすべての人が彼を誇りに思っているに違いない。勝点3を得ただけでなく、本間のメモリアルゲームに勝てたことがチームにとって大きい。
「本当におめでとう。そして、これからも頑張ってください」(木山監督)。
以上
2009.05.03 Reported by 佐藤拓也
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第12節 水戸 vs 鳥栖】レポート:水戸、ポゼッションの概念を変えるサッカーで鳥栖を一蹴。本間幸司の300試合出場に花を添えた。しかし、あまりにも大きい代償が…。(09.05.03)
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