5月2日（土） 2009 J2リーグ戦 第12節
湘南 1 - 0 Ｃ大阪　（13:04／平塚／10,376人）
得点者：33' 中村祐也（湘南）
スカパー！再放送 Ch185 5/3（日）19:00〜（解説：三浦俊也、実況：田中雄介、リポーター：安田美香）
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チャンスの数では、前半はアウェイチームがまさっていた。皮切りは10分ちかくのフリーキックだ。濱田武の右からのボールに江添建次郎がヘッドを合わせるが、しかしこれはクロスバーに阻まれた。続いて香川真司が左から持ち込むと、カイオがゴール前に躍り出てコーナーキックを得た。さらに22分には乾貴士の右クロスに石神直哉が走りこみ、23分にはコーナーから落としたボールを香川が、27分には攻め上がったチアゴもミドルを放っている。このくだりだけでは、あたかも湘南が防戦一方のようだ。

しかし我慢の時間帯こそあれど、端から防戦を決め込んで守りきれる相手ではなかろう。敵は仮にも「西の横綱」である。対して「東の前頭2枚目」湘南は、相手のポゼッションに対し、立ち上がりから攻撃的に圧力をかけていた。所々で顔を出したC大阪のパスミスとも無縁ではあるまい。田村雄三を筆頭に、それぞれが目の前の相手に厳しく寄せていた。

そんななか、湘南がワンチャンスをモノにする。33分、自陣でボールを奪うと、トゥットがキープし、左サイドへ捌く。駆け上がった坂本紘司はひとつ顔を上げると、中央へグラウンダーのクロスを入れた。戻る相手DFの背後を突いて走りこんだのは中村祐也だった。

伏線はキックオフ直後にあった。攻守に走る阿部吉朗からトゥット、坂本と左サイドで繋ぐと、敵の裏を狙った坂本のクロスに合わせて中村はヘディングシュートを撃っていた。「紘司さんが顔を上げた瞬間を狙っていた。イメージどおりでした」という述懐どおり、先制のシーンもふたたび背後を突いてGKとの1対1に持ち込み、冷静にゴールを捉えたのである。あるとき寺川能人が語った言葉も引いておこう。「ポゼッションにこだわらず、チャンスがあれば縦に入れる。ボールを持ったときの選択が全員まず前に向かっている」。先制点は、素早い攻守の切り替えからゴールに迫る姿勢が結んだものであり、今季初スタメンの中村とトゥットが絡む鮮やかなカウンターでもあった。

ビハインドを背負ったC大阪はその後、香川と乾のパス交換でペナルティエリアに侵入した。だが、「真司くんとやれるのが楽しみ」と戦前に語っていた村松大輔がその香川の仕掛けを塞ぐ。また36分には石神のクロスに香川がヘッドを叩きつけるも、枠を捉えきれぬまま45分を終えた。

迎えた後半、1点を追うC大阪は、しかし攻勢を強めるまでには至らない。連戦のさなかのアウェイゲームという痛手もあろう。カイオに当てサイドに振るなどして攻めるものの、運動量が落ち、湘南の守備網にスペースを見出せない。次第に焦れた格好で、距離のあるシュートは枠を外れ、クロスはGK野澤洋輔の手にすっぽりと収まった。ミスも手伝い、ピッチから苛立ちが伝わってくる。ミスを当たり前と捉え、ひたすらチャレンジし続ける湘南とのコントラストは否めない。

湘南にこんなシーンがあった。ルーズボールに対し、坂本と田村が同時に別方向から追いかけ、交錯したところ、漁夫の利とはかくやといった態でC大阪のボールになった。結局はジャーンがフォローしてふたたび奪い返した場面だが、湘南のキーワードともいえる執着心やひたむきさといった姿勢を感じずにはいられない。香川に完全に裏をとられた70分のシーンも田村の決死のフォローで難を逃れている。試合終盤にはカウンターから阿部が体に鞭打って敵陣までドリブルで持ち込み、また直前のプレーで足の攣っていた臼井幸平も数十メートルを駆け上がった。途中出場の永田亮太と原竜太、またこの日平塚デビューを飾った猪狩佑貴も献身し、中では田村が声を張り続けている。文字通り土俵際まで体を張った湘南の闘いぶりに、1万を超えた平塚競技場には自然と「ベルマーレコール」がこだましていた。

白熱の首位攻防戦はこうして、粘り腰の湘南に軍配が上がった。先日の福岡戦でJ通算200試合出場を果たした原と、この日おなじく200試合出場を刻んだ野澤の節目を勝利で飾った。次節、C大阪は岐阜を、そして湘南は愛媛をそれぞれホームに迎える。まずはコンディションをできるかぎり整え一戦に備えたい。勝者にも敗者にも、つぎの一番が大切になる。

以上

2009.05.03 Reported by 隈元大吾