5月2日（土） 2009 J2リーグ戦 第12節
愛媛 2 - 0 甲府　（19:04／ニンスタ／3,497人）
得点者：1' 内村圭宏（愛媛）、83' 赤井秀一（愛媛）
スカパー！再放送 Ch186 5/3（日）21:30〜（解説：大西貴、実況：堀本直克、リポーター：重橋秀香）
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プレビューでは今節、8試合勝利のないチームが何か前に向いて進めるのではないかという、漠然とした自信も記した。そしてスタジアムに入ると、愛媛のゴール裏に「俺達は何があっても愛媛の為に闘い続ける」という横断幕を目にした。サポーターからは、徳島との四国ダービーに敗れたチームに対して、どんな形でメッセージを送るのか様々な意見もあったようだ。しかし、選択したのは前に進むんだという強い姿勢。スタジアムを埋めたサポーターの数は、普段と比べても決して多いわけではない。ニンスタでは今季初のナイトゲーム。それでも、彼らの声援は夜空にいつもより高く、そして大きく響き渡っていたように感じられた。そして、ピッチでは90分間、選手たちが闘い続けてくれた。

「なんで、いつもこれができないんだろう」。試合後、愛媛のFW内村圭宏は苦笑いを浮かべた。この8試合、システムこそ愛媛は4-3-3を取り入れたが、やろうとしているサッカーに変わりはなかった。しかし、それができずにズルズルと1ヶ月以上が過ぎた。そのもどかしさは、スタンドにも伝わっていた。常にブレーキに足を掛け、どこか臆病になっていた愛媛。しかし、この日は開始1分の先制点が、その心のたがを解き放った。

「本当に、長かったのでホッとした」。先制点の後、ピッチの上で大の字になって喜びを爆発させた男が、試合後に安堵の表情を浮かべた。「みんな気持ちが出ていたので負けられなかった」と内村は続けたが、徳島戦後に選手全員が話し合い、もっと1人1人が責任を持ってプレーすることや気持ちを出すことを再確認していた。そこでもたらされた、5試合ぶりの先制点。これがチームに勇気を与えたことは間違いないだろう。

「球際や守備の狙いで、どこでボールを奪うかとか、また攻撃では奪ったらどう仕掛けるか徹底していた」と望月一仁監督は評価したが、内村と大木勉の2トップが最終ラインにプレスをかけてコースを限定したり、甲府のアンカー林健太郎に入った時にも積極的に奪いにいった。システムを4-4-2に戻し、高い位置から守備が連動した愛媛。甲府はロングボールやアーリークロスを前線にめがけて放り込んできたが、愛媛は最終ラインで跳ね返すと、中盤4人のボックスが狙い通りセカンドボールを拾っていった。

しかし愛媛の先制点の後、とにかく早く試合が終わって欲しいと感じた。それだけ、甲府が前にかける圧力が強かったからだ。記録を振り返れば、シュート数こそ愛媛が上回っているが甲府のFKとCKは合わせて実に39本。判定はオフサイドとなったが、後半13分にはそのFKからDF秋本倫孝が愛媛のゴールネットを揺らした。金信泳に至っては1人で6本のシュートを放ったが、最後は愛媛の体を張った守備に阻まれた。しかし、甲府はスタメンを大幅に入れ替えた影響もあったのか、終始精彩を欠き、ミスからリズムを作りきれなかった。再び中2日で迎える次節の水戸戦（5/5＠小瀬）、安間貴義監督が今度はどういう形で試合をスタートさせるのか注目したい。

かくして、試合は愛媛が後半38分に追加点を奪い、第3節の岐阜戦以来となる白星を挙げた。勝利の喜びもさることながら、序盤戦で出場機会に恵まれなかった選手たちの台頭も嬉しさを倍増させた。「誰が出てもチャンスがきたら準備をして出る。試合に出ていない選手にそのことを証明できた」と今季初先発の松下幸平が語った言葉には、たくましさも感じた。次節は累積警告により横谷繁が出場停止。しかし、中盤では千島徹が今季初出場を果たした。「チームにとって何ができるかが大事」と千島は試合後に語ったが、全員が同じ方向を向いて戦ってきたことで成し遂げた今日の結果。それは漠然とした勝利ではなく、必然の勝利だった。

以上

2009.05.03 Reported by 近藤義博