今日の試合速報

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第12節 横浜FC vs 徳島】レポート:イニシアチブを握るスタイル故の産みの苦しみ。圧倒的に試合を支配する横浜FCを終了間際のカウンターで徳島がねじ伏せる。(09.05.03)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
5月2日(土) 2009 J2リーグ戦 第12節
横浜FC 1 - 2 徳島 (16:03/ニッパ球/4,243人)
得点者:44' 羽地登志晃(徳島)、52' 三浦淳宏(横浜FC)、89' 佐藤晃大(徳島)
スカパー!再放送 Ch182 5/4(月)08:00〜(解説:都並敏史、実況:加藤暁、リポーター:三須亜希子)
☆GWはファミリーJoinデイズへ行こう!
----------

横浜FCは、今季樋口靖洋監督を迎え「イニシアチブを握る攻撃的なサッカー」を目指してキャンプから取り組んでいる。それは、J1に定着できるチーム作りの根幹だ。そして、この徳島戦では、目指すサッカーで結果を得るための最大かつ最後の課題が明確に示されることになった。

ゲームは前半から、まさに横浜FCがイニシアチブを取る形で進む。高い位置でのプレスから徳島を自陣に押し込め先制点を狙う。持たされているのではなく、自らボールを動かして仕掛けて行く姿を取り戻していた。しかし、一方でフィニッシュに掛かる前のプレーで、足を滑らせる場面が散見されたり、クロスに入る前のプレーで徳島の粘り強いディフェンスを受けるなど、ポゼッションという食材から、ゴールのおいしい匂いが立ち上がらない状況に陥ってしまう。特に徳島が冷静にペナルティエリアを固めたため、横浜FCのシュートはミドルシュートが多くなる。そして、徳島が横浜FCの攻撃のペースに慣れてきて、「良い時間に得点しないと何が起こるかわからない」という、サッカーの定石が頭をよぎる展開になる。そしてその予感は的中する。前半のロスタイム、石田祐樹の折り返しを徳重隆明がオーバーヘッドでシュート、そしてそのこぼれ球を羽地登志晃が冷静に頭で押し込み、徳島が先制。前節のC大阪戦とまったく同じ前半ロスタイムでの失点で前半を折り返す。

後半に入ると、片山奨典や難波宏明が左サイドを集中して攻め立て、総攻撃に出る。そして、52分、片山のドリブルから得たFKを、三浦淳宏が直接ゴール右隅に叩き込む。2007年に横浜FCに移籍してから初めての直接FKでのゴールで、横浜FCは同点に追いつく。この得点で勢いがついた横浜FCがホームの声援に後押しされる形で、さらに攻め立てる。ここで59分、徳島が「2トップの形にして起点を作りたい」(美濃部直彦監督)という狙いで、佐藤晃大を投入すると、その佐藤が絶妙なポジショニングでボールをさばき始める。そして、ロスタイムに勝負所がやってくる。横浜FCが3本連続でコーナーキックを得る場面。ホーム未勝利からの脱出を狙う横浜FCにとっては、最高のお膳立てを得る。そして、その3本目、ボールを奪った徳島がカウンターを仕掛ける。右でボールを受けた徳重からアーリークロスが入ると、ペ・スンジンがニアでつぶれて、最後フリーになった佐藤が押し込む。このゴールで徳島が勝ち越し、そのままゲームは終了した。

横浜FCにとっては、集中力の欠如によって、ほぼパーフェクトに推移していた試合を落とすというショックな敗戦となった。しかし、ポゼッションと自らイニシアチブを取るスタイルで覚悟を決めた以上は、この試合のような展開はスタイルに付随するリスクとして付き合わなければいけない。ここ数試合、対戦相手は素早く守備のブロックを構築してペナルティエリア内にボールを入れさせない状況を作り出し、その結果として、カウンターでの失点が勝敗に直結している。もちろん、守備での集中を切らさないことが大事であるが、この状況を打開する鍵は攻撃の仕上げの部分の強化しかない。相手に引かれた時に、精度の高いミドルシュートを打つこと、勇気を持って仕掛けて相手からファールをもらいセットプレーを増やすなど、ゴールの匂いを立てること。こういう攻撃的な選手の資質を生かしたプレーを繰り返すことが求められている。横浜FCが最後まで攻めきれば、対戦相手はラインを上げることを迫られ、逆にパスワークを利用して裏に出られるようになる。そして、不必要にカウンターを受けることもなくなる。つまり、攻撃陣のプレーの質の向上こそが攻守にわたるレベルアップのための最大の鍵となっている。サッカーにとって、戦術と個の力は車の両輪。戦術的には成果を上げている現在、その完成度を活かすのは個のレベルアップ。攻撃陣に横たわる課題を突き破れば、1つレベルが上がった横浜FCが見られるはずだ。

徳島にとっては、アウェイで非常に苦しい展開の中、勝点3を拾えたということが非常に大きい。美濃部監督が語るようにある意味「幸運なゲーム」。しかし、どんな内容であれ、勝利は選手の自信と成長に繋がる。羽地、佐藤の2人が1点ずつ取れたということも、チーム全体に与える波及効果は大きいだろう。だからこそ、この試合で実現できたプレー、実現できなかったプレーを洗い直し、成長に繋げることが大事だ。美濃部監督が注文をつけるのも、内容的には良い面が出せなかったからこそ、成長の種としたいという意識の表れである。

ゴールデンウイークに集まった4,243人の大半を占める横浜FCのサポーターには、またも勝点3を届けることはできなかった。そのサポーターに、目指すサッカーを追求し、結果に結びつけることができるまで、努力を続けるしかない。最後の課題の克服が待たれる。

以上

2009.05.03 Reported by 松尾真一郎
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着