5月5日(火) 2009 J1リーグ戦 第10節
広島 2 - 0 F東京 (19:04/広島ビ/15,342人)
得点者:22' 高萩洋次郎(広島)、74' 佐藤寿人(広島)
スカパー!再放送 Ch183 5/6(水)17:00〜(解説:沖原謙、実況:桐山隆、リポーター:掛本智子)
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何とも不可思議な選手が、この日は両チームに存在した。
一人は、F東京の梶山陽平。対面する広島・森崎和幸のミスのない確実性のあるプレーを見慣れた者にとっては、何とも正体がつかみづらい。軽いプレーで相手にパスを渡したり、フラリフラリと中盤を浮遊したり。しかし、ここぞという場面では相手に強いプレスをかけてボールを奪う。ボールをキープすれば、まるで柳のように揺れながらも、広島は彼からボールを奪えない。そして、ギラリと見せる技術と判断力の高さもある。
26分、梶山はペナルティエリアの前でボールを受け、森崎和のアタックを懐の深い切り返しでかわし、シュート。そのまま前に飛び込み、混戦のこぼれ球をゴールに押し込んだ。オフサイドによってノーゴールとなったが、このプレーが広島の守備陣をもっとも震撼させたことは間違いない。その演出・主演は、東京の背番号10だった。
一方、広島の「不可思議」な男は背番号15だ。183センチという身長だがヘディングは苦手。技術は確かなはずだが、この日は調子が悪いのか、試合開始直後からボールを失うシーンばかりが目立ち、実効性のあるプレーはほとんどなかった。
しかし17分、その男・高萩洋次郎は突然きらめきを見せる。
右サイドに飛び出した高萩は、ワンタッチで柏木陽介からパスが出る前から、約50m先にいる服部公太がフリーでいることが見えていた。「あそこが見えるのが、自分の持ち味」と、広島史上稀代のパッサーはサラリと言う。
迷ったのは、浮き球にするかグラウンダーにするか、というパスの質。しかし、浮き球でパスを出すとその後の処理が難しくなると判断し、高萩は転がすことを一瞬のうちに判断。パスはDFラインの裏側を通り、グリーンの芝の上に大きな曲線を描きながら、走ってきた服部の足下にピシャリ。服部がスピードを変える必要がないよう、高萩は全てを計算し尽くしていた。ゴールにこそならなかったが、このシーンで高萩は確かな才能を表現した。さらにその5分後、彼は違った能力を見せつける。
始まりはF東京のCKをクリアしたシーンから。柏木がこぼれを拾い、森脇良太へ。縦パス。佐藤寿人がリターン。森脇の横パスを受けた服部は、追い越した槙野智章へ。中盤にあがったストヤノフ、服部から柏木、森崎和へとつなぐ。森崎和はドリブルで時間をつくりながら周囲のポジションを修正、服部を経由して柏木へとボールは渡った
中盤の深い位置でパスを受けた柏木から、ストヤノフへ。このパスこそ「緩」から「急」へのスイッチとなった。
ストヤノフはドリブルで中盤を突き進み、その勢いのまま右サイドのスペースへパス。この瞬間、F東京の選手たちはミキッチの存在を怖れ、スピードをあげてゴール前へと戻る。しかし、彼らと同じライン上に並んでいたはずの高萩は、ここで逆にスピードダウン。その時間差によって、自らの身体をマークから開放し、ミキッチがマイナス気味に放ったクロスに対して走り込んでジャンプする余裕も創りだした。広島らしい圧巻のパス回しを締めくくるにふさわしいゴールゲッターとしての才能を、高萩は満天下に示したのである。
このシーン、広島は14本ものパスを48秒にわたって回していた。速攻が目立つJ1において、この「攻撃時間」は異質。しかしこれは、広島にとっては普通のことだ。
通常、ボールを長く持つと相手は人数をかけての守備がやりやすくなり、得点をあげることは難しい。しかし広島は、そこを「緩急」「狭広」の差をつけることで、解決する。柏木がストヤノフにパスを出すまで40秒。しかし、柏木のパスでスイッチが入った後は一気に動きがスピードアップ。このチェンジ・オブ・ペースに「狭→広」というスペースの変化も合わさり、F東京のブロックを打破することに成功したのだ。
後半は足が止まってしまい、本来の出来とは言いがたかった広島だったが、それでもこれで7試合連続負けなし。「次の千葉戦に勝てば、上位に進出できる」(ミキッチ)と選手の言葉も前向きになる。
球際に強い守備、速い攻撃への切り替え、左サイドの長友の躍動やルーキー・米本拓司の頑張りなど、F東京のプレーも魅力的だった。ただ、まだ発展途上のチームらしく、要所でコンビネーション不足が目立ち、ミスから広島を助けてしまっていた。
しかし、城福浩監督も選手たちも「このサッカーを続ければ、結果は出る」とコメントする。ボールを主体的に動かすサッカーを実現するために必要なのは、苦しい時も自分たちのコンセプトを信じて、我慢することだ。それは、過去のサッカーの歴史が、何よりも証明している。
以上
2009.05.06 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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