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【J2:第23節 甲府 vs 福岡】レポート:勝利の原点。得点が入らない時間帯でも都合のいいプレーに逃げずにやり続けた甲府が、得失点差を大幅に挽回する6ゴールで福岡に大勝。J2上位4チームの戦いは完璧な混戦へ突入。(09.06.25)

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6月24日(水) 2009 J2リーグ戦 第23節
甲府 6 - 0 福岡 (19:03/小瀬/9,058人)
得点者:27' 藤田健(甲府)、31' 大西容平(甲府)、51' 金信泳(甲府)、64' マラニョン(甲府)、70' マラニョン(甲府)、85' 國吉貴博(甲府)
スカパー!再放送 Ch181 6/25(木)21:00〜(解説:塚田雄二、実況:酒井康宜、リポーター:石河茉美)
勝敗予想ゲーム
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6月25日(木曜日)の山梨では、飲み過ぎて会社を休んだり遅刻したりする人が増えるんじゃないかと思うほどの完璧な勝利。「甲府が大勝した翌日は午後出社OK」なんてラテン系の社長がいる会社は多分ないから、甲府の勝利が勤労サポーターの勤務評価に影響するのではないかと心配したくなるほど喜びを爆発させたい勝利だった。と、同時に試合後サポーターのすぐ前まで行って挨拶をする福岡の選手の姿にも敬意の気持ちを持った。0−6で敗れれば20メートルくらい離れたところからちょこんと頭を下げて終わりにしたくもなるが、サポーターの目の前まで行くところが選手とサポーターの距離の近さなんだろうか。サポーターがどんな言葉をかけたのかは分からないが、久藤清一の手を取って励ますように何かを伝えていたサポーターの姿が印象的だった。

師匠の藤田健には、「(10点満点で)2点。表情がいっぱいいっぱい。もっと楽しまないと。ギリ(ギリ)の顔をしていた」と愛のある評価を受けた今期初先発の吉田豊。しかし、彼はマラニョンの活かし方を一番分かっている甲府の選手かもしれない。自身ではゴールを決められなかったが、マラニョンを生かして攻撃に貢献できた。前半からワンタッチでパスを出してマラニョンの前に出るリズムを上手く生かしていたが、85分の國吉貴博のゴールに繋がる流れは更にマラニョンマスターぶりが熟成していた。マラニョンからのパスを、吉田はちょっとタメてから裏に走ったマラニョンにドンピシャのタイミングで出した。それが静岡学園高の先輩・國吉のゴールに繋がった。第21節の熊本戦で國吉がプロ初ゴールを決めたときは表情に初々しさがあったがプロ2ゴール目ではクニクニファンが驚くほど完璧に猛々しさが出るようになっていた。國吉がそうなるのも当然で、ブラジルからやってきたガウボン、岐阜から移籍してきた片桐淳至の加入でFWのレギュラー争いは最激戦区になっている。

それを加熱させている片桐は甲府が4−0と大量リードしたことで、國吉より14分早い63分にピッチに立った。孤高のストライカーは雰囲気を持っていた。ただ、「余分な力を背負って消耗が激しかった」と言うように甲府デビュー戦で決めてやるという気持ちが3割り増しで乳酸を出すことになってしまい、短いプレー時間ながらポジションを戻せない疲労に繋がった。しかし、「甲府にアウェイで来たときは(サポーターの出す)雰囲気を重圧に感じていた。でも、今日からはそれを背中に感じてプレーすることが出来る。小瀬に来てくれたお客さんのために勝って、夢や希望や感動の原動力になれれば嬉しい」と言うように、特別な気持ちで戦っていた。また、前日は「ファーストタッチでゴールを決めます(笑)」なんて言っていたけれど、ファーストタッチは荻晃太からのゴールキック。「トラップミスをしたけれど、アイツは俺のことを見てくれていた。目線を送ったらボールが来た。高校時代(岐阜工業高校)はアイツが守っていると点を取られる気がしなかった。同期としてプロでも負けていられない」と、結構いろいろなものが心の中に絡んだ甲府デビュー戦だった。甲府の5点目(70分)となったマラニョンへの縦パスでは感覚の良さを発揮したが、片桐が威力を見せるのはこれから。お互いを高め合うチーム内の競争に勝って、チャンスを掴んでからが本当の勝負。ライバルも簡単にチャンスを明け渡す訳がないから、いい競争をしてくれれば甲府は確実に強くなる。

後半の半分まで行かないうちから福岡は足が止まり始めた。ボールを奪われるとポジションを戻すことも出来ないし、奪われたボールを必死で奪い返そうとする場面も少なかった。散発的に誰かが頑張って走ってもそれがチーム全体の動きにならない。ダメ押しとなった4点失点目はバックパスをマラニョンに奪われる屈辱の失点。CBの長野は「後ろから見ていてみんなボールを貰うのを怖がっているように見えた」と話したが、戦う姿勢を見せていたボランチの鈴木惇も、連携が取れないまま決定的なバックパスを出してしまった。
福岡の選手には厳しい言葉になるが、安間貴義監督はハーフタイムに「戦う意思のないチームに負けるな」と選手に話した。上手くファールを貰おうとするプレーの多さを指しての言葉。長野が「やることを感じて自信を持って試合に臨まないとダメ」と話しているが、当にその通りだと思う。しかし、福岡にはこの試合の流れを変えるチャンスは何度かあった。その最後のチャンスが55分の大久保哲哉のヘディングシュート。中払大介が蹴ったセットプレーだったが、これが決まっていれば1−3で活力を取り戻すことが出来たかもしれない。しかし、GK・荻がはじいたボールはポストに当たってダニエルの前に転がり、クリアされてしまった。安間監督は「大久保が先発だと怖かった」と話したが、試行錯誤の中で福岡は自分たちのストロングポイントを見失っているのかもしれない。

甲府の後半の最初のゴール(3点目)を決めた金信泳(キム・シンヨン)は、シュートの上手さがあればもっと高い評価を受ける選手だと思うが、甲府に来て徐々にシュートが上手くなってきている。このゴールは前半の0−2から盛り返そうとする福岡の選手には相当痛かったはず。また、後半に入ってFW・高橋泰が下がって、FW・田中佑昌が投入されたが福岡が上手くいかないのはFWの問題ではなく、常に甲府のディフェンスラインの裏を狙っていた高橋にボールが出ないことが問題に思える。ただ、そうさせなかったのは甲府。主導権を取りながらも27分までゴールのなかった甲府は焦らなかった。「立ち上がりからよかった。凄く集中していた。(点が入らないからといって)違うことをするんじゃなくて、やり続けることで絶対に崩れるから」と安間監督は言い続けていた。守備でも攻撃でも狙い通りのプレーを我慢強くやり続けた。それが27分の藤田健の先制ゴール、31分の大西容平の追加点に繋がり、得点でも主導権を取るに到った。点が入らなくても焦らず、自分たちの信じるサッカーをやり続けることが出来た甲府。今節の勝利の原点はここにあった。そして、大事になってくるのが次節のアウェイ徳島戦。信じることで手にした成功体験は甲府をちょっぴり強くしているはずだ。

以上

2009.06.25 Reported by 松尾潤
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