6月24日(水) AFCチャンピオンズリーグ
鹿島 2 - 2(PK 4 - 5)ソウル (19:00/カシマ/8,069人)
得点者:5' 興梠 慎三(鹿島)、22' イ スンヨル(ソウル)、50' 青木 剛(鹿島)、78' キ ソンヨン(ソウル)
ホームゲームチケット情報 | 決勝戦は11月7日(土)に国立競技場で開催!
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苦しんだ前半だった。最初の45分で鹿島が放ったシュートはわずかに3本。先制点こそ早い時間帯で奪ったものの、相手のミスに助けられたラッキーな得点だった。5分、自陣から内田篤人がFCソウルのDFライン裏のスペースにロングボールを送る。興梠慎三が裏に抜け出ていたが並走していたFCソウルのDFがそれをクリア。ところが、そのボールが後から戻ってきていた別の選手に当たり、その跳ね返りが興梠のもとへ。GKと1対1の状況をプレゼントされた興梠が落ち着いてゴール左に流し込み、立ち上がりでいきなり鹿島が先制点をあげた。
しかし、この後、鹿島の攻撃は沈黙することになる。ほぼ5バックで構えるFCソウルの布陣はサイドのスペースを完全に消していた。DFライン裏のサイドのスペースにマルキーニョスや興梠が走り込んで攻撃の起点をつくる鹿島にとって、そのスペースはある意味生命線。そこを消されたことでスペースはフィールド中央に移った。ただし、そこではFCソウルの両ボランチ、14番のキム・ハンユンと21番のキ・ソンヨンが待ちかまえる。下手な形でボールを奪われれば、1トップの10番デヤン・ダムヤノヴィッチに当てて素早い攻撃に移られてしまうため、効果的な楔のパスを打ち込むことができず、腰の引けた戦い方となってしまった。
そして22分、そのダムヤノヴィッチが鹿島の最終ラインとボランチの間でうまくパスを受け、右サイドの27番のイ・チョンヨンにはたく。すると、戻りながら守備をする鹿島の最終ラインとキーパーの間にグラウンダーのクロスを送った。岩政大樹がスライディングでカットを試みるも届かない。そこに、逆サイドから絞った内田がうまくカバー。走り込んでいた28番のイ・スンヨルの前でパスカットしたものの、それが岩政に当たりボールがイ・スンヨルの前にこぼれてしまう。鹿島の先制点と同じような形がFCソウルにも生まれ、同点ゴールを与えてしまった。
この辺りの時間帯は鹿島のボールの失い方が悪く、FCソウルのダムヤノヴィッチのポストプレーが機能。パスを受けるとワンタッチで味方に落とし、両翼のイ・チョンヨンとイ・スンヨルがダムヤノヴィッチを追い越していく攻めがはまった。22分にはダムヤノヴィッチが飛び出す役割となり、左斜めに走って最終ラインから抜け出して、右アウトサイドに当てたワザありのシュートを見せる。右ポストに跳ね返ったシュートは、ゴールライン上をころがり伊野波雅彦がなんとかクリアした。さらに30分には左CKを頭で合わせてクロスバーを直撃するシュートを見せた。
このCKを蹴ったのが、韓国代表でもフリーキックのキッカーを務めるキ・ソンヨン。セットプレーでは抜群のスピードと精度を見せ、この他にも、ゲーム序盤にキム・ジンギュに合わせたFKや、興梠があわやオウンゴールにしてしまうところだった鋭いボールを送り、前半終わりにも左CKから内田のマークをふりほどいたパク・ヨンホにぴたりと合わせるなど、セットプレーのたびにスタジアムに緊張感を走らせた。
後半に入ると鹿島がようやく目を覚ます。キックオフと同時に前から激しくプレスをかけて一気に流れを掴むと、50分に左CKから青木剛が頭で合わせ、良い流れの時間帯で相手を突き放す追加点を奪った。この直前のCKでも岩政がうまく頭で合わせていたが、これは前日の練習通りだった。ゾーンで守る相手に対し、ゴール前に少しスペースをつくっていつもより助走をつけて飛び込む。足が止まりがちなFCソウルの弱点を見越した攻撃だった。
点を取るしか無くなったFCソウルは、60分にセンターバックのキム・チゴンを下げて中盤の枚数を増やし、4-4-2に布陣を変えて攻めに出た。しかし、試合展開に大きな変化は生まれなかった。それにもかかわらず鹿島は自らそれを手放してしまった。64分、小笠原満男がこの日2枚目のイエローカードを受け、退場となってしまったのである。相手のドリブルに並走しながらのファウルだったが、後ろの枚数は揃っていただけに悔いが残る退場劇となった。この状況で、オリヴェイラ監督は興梠を下げ、中田浩二を投入。
「10人だし、青木としっかりバランスを取れということだった」(中田)
ピッチに入るまえ、近寄ってきた小笠原から手を差し出され後を託されての出場だった。
マルキーニョスをトップに残し、中盤で4枚、最終ラインで4枚の2ラインを敷き、FCソウルの攻撃にうまく対応していた。しかし、78分、ゴール左でFKを与えてしまうと、それをキ・ソンヨンに直接叩き込まれてしまう。なかなか攻撃に出られないようになっていたなかでの同点弾。しかも相手より一人少ない状況。苦しい立場に追い込まれた鹿島の選手たちだったが、ここからもう一度闘志を見せた。1トップのマルキーニョスが身体をはってボールをキープし、鋭いカウンターをFCソウルに見舞った。
その流れは延長戦に入っても変わらない。むしろ1人多いはずのFCソウルの方が足が止まり、決定的なチャンスは鹿島の方がつくっていた。延長前半の4分、左サイドをマルキーニョスが1人で切り崩し、中央へ折り返す。途中出場のダニーロがニアサイドに飛び込んだことでFCソウルのDFが引きずられる。そこに野沢拓也がフリーで走り込み、左足を振り抜いた。しかし、ボールは無情にもゴールの遥か上を通過してしまう。さらに延長後半14分にも右CKを中田浩二が頭で合わせ、クロスバーに弾かれるというチャンスをつくった。
「10人になったなかでもチャンス多くつくったのは我々でしたし、勝ってもおかしくない内容だったともいます」
1人少ないながらも数々のチャンスをつくった選手たちを、オリヴェイラ監督は讃えた。しかし、延長戦の30分でもゴールは奪えず、決着はPK戦に委ねられた。
勝負を決めるPK戦を前に静まりかえったスタジアム。そのなかで一際大きな声が響き渡った。ベンチの前で円陣を組み、選手を大きな声で鼓舞するオズワルド・オリヴェイラ監督だった。この声にスタジアム中が奮い立つ。延長に入っても、ほとんど席を立つことがなかったサポーターが、鹿島のゴール裏に集結し、声の限りを振り絞った。
「オレのせいだね。PKで流れをつくりたかったんだけど…」
1本目を任された中田は試合後も肩を落としたままだった。PK戦は両チームのGKが互いに2本ずつを止める活躍を見せた。しかし、7人目で勝負は別れてしまった。
「ゴロにしようと思ったけど、GKが見えたんで上に打とうと思った」
試合後の内田はまったく無表情だった。ただ、決着がつくと同時にロッカールームに下がったことを見てもその気持ちは明らかだ。99年ナビスコ杯決勝で6人目のPKを外した小笠原は、敗戦の責任を痛感じ、ベンチコートを頭から被って涙を隠した。そうした経験がさらに強さをもたらす。また、来季の挑戦を心待ちにしたい。
以上
2009.06.25 Reported by 田中滋
J’s GOALニュース
一覧へ【AFCチャンピオンズリーグ 鹿島 vs ソウル】レポート:10人になってから本領発揮。底力を見せた鹿島だったがPK戦の前に散る。(09.06.25)
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