試合前日、14戦未勝利の我が栃木SCの必勝を願い、古風な人間なので髪をバッサリと切り落とした筆者。といっても、ソフトモヒカンが伸びた程度なので、女子が失恋した時にロングからショートにするほどの劇的な変化はないのだけれど。
散髪の際、美容師さんから「サッカーは野球のように試合中止がないからいいですね」と言われ、「カミナリを除けば大概はやりますからね」と答えたが、まさか!そんな話をしていた矢先にカミナリで試合中断、中止になるとは思いもしなかった。
J2第33節、午後6時キックオフの栃木SC対横浜FC戦は、後半13分44秒で時計の針が止まり、午後8時1分に中止の決定が下された。
前半ロスタイム間際に振り出した雨は次第に勢いを強め、球のような粒となり、土砂降りに。いわゆる、『ゲリラ豪雨』だ。さらに、カミナリが轟き、マッチコミッショナー、主審、実行委員が協議した末、長い中断期間を経ての中止、代替開催がアナウンスされた。2007年8月6日のサガン鳥栖対湘南ベルマーレ戦(@鳥栖)以来、キックオフ後の試合中止となった。
「中断してからの再開はありますが、延期は初めてですね」とは、栃木に移籍してから初めてグリスタのピッチに立った星大輔。昨季は開幕前に左アキレス腱断裂の大怪我を負い、丸々1年間を棒に振り、年末には解雇通告を受ける。しかし、今季は練習生から本契約を勝ち取り、段々とコンディションを上げ、初先発の座を掴み取ったが、試合が成立しなかったことで公式記録には残らなくなった。決定機を外した悔しさも加わり、星は無念の表情を浮かべた。
「大学時代はどんな状況でもやっていた」と向慎一が言うように、試合中止を初体験した選手がほとんどだった。そんな中、モンテディオ山形在籍時の2005年、試合延期の経験をしていたのが本橋卓巳。中止後の影響に関して尋ねると、「違和感なく、後ろに1試合回っただけの感覚でしたね」と話した。ただ、「今日はチャンスもあり、ピンチも皆で守れていたし、流れも悪くなかった。そう言った意味では残念でしたね」と、やはり90分試合をやり切れなかったことを悔いていた。それは横浜FCの選手にも共通した思いだっただろう。
だが、天変地異には勝てない。栃木は昨年の9月7日、足利市開催のホームゲーム、JFL後期第9節のカターレ富山戦でも『ゲリラ豪雨』を体験し、試合中断・再開の措置を取ったことがあるが、ホームゲームでの中止・延期はクラブ史上初の出来事となった(アウェイではSAGAWA SHIGA FC戦で中止・延期を2007年に経験)。栃木・新井賢太郎代表取締役社長は「人命を損なわないことが最優先」と話し、「勇気のあるディシジョン(決定)」とも言った。
栃木県は別名『カミナリ県』と言われるほど、夏場のカミナリの発生率の高い県として知られている。また、一度、カミナリが通り過ぎても、再び戻ってくるという厄介な傾向も持ち合わせている。横浜FC戦では中止決定後に雷雨は収まったものの、いつ稲光が人の命を脅かすか分からない状況にあった。屋根のある場所への避難勧告は出されたが、すぐにメインスタンドしかない屋根の下は人で溢れ返り、収容しきれなかったサポーターをロビーにも誘導したが、1万人弱の人を完全に安全な場所へ退避させることはグリスタの構造上困難だった。『要塞』とも形容されるグリスタは退避経路も狭く、仮に近辺にカミナリが落ちた場合、パニックに陥った人々が避難する際に事故を起こす可能性も高く、今回の判断は賛否両論あるだろうが、「人の命の尊さ」を考えれば、正当な決断だったと言えるだろう。
今後、同様のケースに直面した場合の対策として、「ゴルフ場に設置されているようなカミナリ探知機が、グリスタにも欲しい」と新井社長は要望した。気象台に問い合わせる一方で、パソコンでカミナリ雲の推移を随時確認したものの、探知機がサイレンを鳴らしていれば危険性が把握でき、命を落とす危険度の高い場所にいたサポーターも安全確保に動いたことだろう。そう考えると説得力のある科学的根拠が欲しい。今月15日には愛媛FC戦、29日には鳥栖戦も控えている。不足している設備の充実が急務となるだろう。
実は中止決定の前には、震度4の地震も発生していた。「雨、カミナリ、地震。もうこれ以上、悪いことは起こらないでしょう」と、赤井秀行は今回の不測の事態を前向きに捉えていた。最下位決定戦は再開されることはなかったが、代替試合で激突する時には栃木も横浜FCも、もう少しいい順位でぶつかりたいものだ。
とにもかくにも、中止・延期は残念だが、人命が失われることなく、事故が起こらなかったことは不幸中の幸いだった。
以上
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2009.08.10 Reported by 大塚秀毅
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