8月22日(土) 2009 J1リーグ戦 第23節
広島 2 - 1 浦和 (19:04/広島ビ/27,113人)
得点者:26' 槙野智章(広島)、42' 柏木陽介(広島)、68' 田中マルクス闘莉王(浦和)
スカパー!再放送 Ch183 8/23(日)14:00〜(解説:前川和也、実況:君崎滋、リポーター:掛本智子)
勝敗予想ゲーム | 皆の投稿で作るスタジアム情報
----------
20歳のエスクデロ、18歳の原口元気。浦和が将来を託す若きドリブラーの二人が、広島の守備陣を切り裂きにかかる。「原口くんは速い。もう(こっちに)来んといて、って感じでした」と柏木陽介は苦笑していた。
しかし、広島は彼らの躍動に対しても、慌てなかった。二人のドリブルからサイドを破られても決してフリーにさせず、ゴール前で待つ選手へのマークも外さない。前線の選手たちも守備に戻り、特に柏木陽介はポンテから何度もボールを奪っていた。浦和は個人の突破が中心で、シーズン当初に見せたパスワークは影を潜め、広島の全員守備を突破できない。「個々の能力は高いけれど、浦和がチームとして機能しているかというと、それはどうかなと思う」と佐藤寿人も指摘する。
一方、広島の攻撃は論理的だった。ストヤノフの長いボールが、高くラインをあげた浦和守備陣の裏を何度もつく。跳ね返されてもストヤノフはあきらめず、裏へ、そして裏へ。その繰り返しの中で浦和のゾーンは自然に下がり、広島の中盤にスペースができた。
26分、浦和は全員が自陣に戻ってブロックをつくる。広島の最終ラインはハーフウェイラインを超え、ストヤノフがゆったりとパスを散らす。広島らしい「遅い攻撃」の形だ。
鍵はどこでスイッチを入れるか。以前は森崎和幸、最近は青山敏弘もそのスイッチを握っていたが、今日は二人ともいない。攻撃の全権は、ほぼストヤノフに託された。
スルーパスでミキッチを走らせる。平川忠亮がカットし原口にボールがわたるも、そこを森脇良太が狙っていた。高い位置でのプレスからボールを奪うと、ドリブルから槙野智章にパスを出した。この時、両ストッパーは共に敵陣のペナルティエリア近くにいた。「そういう形を練習でつくりだしているから、試合でできるんだ」とペトロヴィッチ監督が言う、まさに広島ならではの形だ。
槙野はマークについたエジミウソンをあっさりと振り切り、ドリブルで切れ込んだ。この時、浦和はペナルティエリアを7人で固めてはいたものの、槙野へのアタックにいく選手は不在で、広島の得点源の一人である紫の5番にスペースと時間が与えられた。浦和にとって、大きなミス。「力が抜けたシュートだった」と槙野は振り返ったが、その抜けた感じが鋭い弾道に結びつき、ボールは微妙に揺れながら狭いニアサイドをぶち抜いた。
42分、またもストヤノフが起点だ。ギュッと相手陣内に押し込んだ後、右サイドに鉈の切れ味のスルーパス。ミキッチが完全にフリー。ペナルティエリア内、今度は6人で浦和は守る。一方の広島は4人だ。
スペースのない中で「誰かに当たって入ってくれ」と念じたミキッチのクロスが、DFとGKの狭い隙間をかいくぐる。坪井慶介がカットするが、そのこぼれがゴール前でフリーになっていた柏木の足下に。「落ち着いて打てた」と紫の10番が放ったシュートは、ゴールネットを揺さぶった。
後半、闘莉王と高原直泰を投入し攻撃を仕掛けるも、広島の守備を連動して崩すことができない。68分、セットプレーから闘莉王がヘッドで流し込んだものの、その後はほとんど決定機を創ることができず。広島は中林洋次を中心に集中した守備を崩さず、1999年3月27日以来10年ぶりの対浦和戦リーグ戦勝利をつかみとった。
「流れを変える方法を知っていたら、もっと前から変わっていた」とポンテは吐き捨てる。浦和はこれで泥沼の6連敗。チームとして連動した攻守ができていない状況は深刻だ。さらに、ポンテと闘莉王は次節出場停止。試練が雨のようにふりかかる。次の神戸戦まで1週間で休養と修正という二つの課題をこなすのは、厳しい課題ではある。しかし、それをやりきらないと浦和に光は差し込まない。
「日本のバイエルン・ミュンヘンである浦和に勝った思いは格別だ」とペトロヴィッチ監督は言う。今季最高となった2万7113人の観客を前に、厳しい状況でも粘り強くチーム全体で戦い、広島は暫定ながら4位に浮上。1シーズン制になって以降の後半戦としては、2005年第20節に記録した3位以来の高い順位に押しあげ、ACL出場も視野に入ってきた。「そのレベルで戦うには、まだまだ学ぶべきことがある」と佐藤寿人は慎重に言葉を選び、ペトロヴィッチ監督も「上位で戦い続けることは難しい」と語った。
それは、確かにその通り。ただ、10年ぶりの浦和戦勝利に加え、そんな大きな「夢」が実現可能となるポジションに、はいあがってきた。共に「J2降格」という地獄を味わってきた選手やスタッフ、サポーターの誰もが、そんな幸福感を実感できた広島ビッグアーチの夜だった。
以上
>>この試合の写真をすべて表示
2009.08.23 Reported by 中野和也















