8月29日（土） 2009 J1リーグ戦 第24節
大宮 3 - 1 鹿島　（18:00／ＮＡＣＫ／13,555人）
得点者：4' 内田智也（大宮）、81' 土岐田洸平（大宮）、85' マト（大宮）、89' 野沢拓也（鹿島）
スカパー！再放送 Ch185 8/31（月）05:00〜（解説：前田秀樹、実況：下田恒幸、プレーヤー解説：本田泰人、リポーター：長友美貴子）
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大宮が、信じられない立ち上がりを見せた。
前半4分、接触プレーでマルキーニョスがピッチ外に出ている間ではあったが、難なく先制。右サイドに出たラファエルからの高速クロスを中央で石原直樹がバイシクルシュート。これはかすっただけだったが、ボールはやや左に転がるとそこに走りこんだのは内田智也。「僕は決めるだけだった」と言った内田は左足で弾丸シュートをネットに突き刺した。鹿島にしてみれば虚をつかれた感じではあったが、「早い失点のあと自分たちのペースを取り戻すのに時間がかかったことが問題」と岩政大樹が振り返るような試合がこのあと始まった。

4分の先制弾の後、81分に追加点が入るまでの間の心境はドキドキ、ヒヤヒヤ、それともソワソワ？何せ相手はこれまでリーグ戦未勝利の鹿島だ。リードしているとはいえこのまま大宮の勝利を信じていても、どこかで逆転を喫する可能性が多いにある。だけど、ピッチの中の戦いを見る限り大宮が優勢だ。前半から飛ばしすぎの感もあるが、取るべきところでボールを取れているし、あの鹿島が中盤でボールをまわすことさえ出来ずにいる。にわかには目の前のこの光景を信じるわけには行かないが、これは現実だ。サイドをうまく使い、前線のラファエルにボールが納まるため石原、内田、藤本主税らがつぎつぎと飛び出すことが出来る。これまでみたことのないような攻撃が繰り広げられた。守っては中盤の金澤慎とセンターバック陣がうまく小笠原満男を封じ込めた。先制された上に要を封じられた鹿島はなかなかペースをつかめない。

やがてハーフタイムが訪れ、後半が始まると鹿島が一気に猛攻を仕掛けてくる。大宮の選手たちに疲労感もにじみ出てくる。それも予想通りだ。中盤で調子の悪そうにミスを連発していた青木剛もミドルシュートの精度は抜群だ。だが、畳み掛けてくる攻撃には藤本主税までがゴールライン上でクリアして応戦。前線で体をはるラファエルは守備にも奔走してくれた。時間の経過と共にもしかして？このまま信じていてもいいのか？逃げ切れるんじゃないだろうか？待望の追加点は81分、途中交代の土岐田洸平から生まれた。右サイドに張った石原からのクロスを逆サイドで絶妙のタイミングにラファエルが落とすと走りこんだ土岐田は「これをはずしたらやばいと、体ごといった」という魂の一撃。これまでリーグ戦無得点の彼から生まれた得点だということに、そして鹿島相手の追加点だということに歓喜する。

85分にはセットプレーから。橋本早十の左足から繰り出されたボールは、うまく密集を抜け出したマトがフリーで捉え勝利を決めきるダメ押し弾に。試合終了間際の１失点は今後への課題であり、上位進出を考えるのであればありえない失点ではあるが、まあこの日はよしとしよう。

王者鹿島には、大宮に比べ多くの試合をこなしていたり、精神的な疲労感があったりするのだろうが、その上に慢心がなかったとはいえないだろう。ミックスゾーンで耳にした言葉にも自分たちが王者であることや、自分を過信するようなフレーズが含まれていたように感じる。選手個々の力で大宮に勝ることは間違いないし、この1試合が鹿島の評価を下げるかといえばそうではない、ということもわかる。が独走しての優勝を手にしようとするのであれば、何かしらの変革が必要ではないか。

とはいえ、なんにせよ、ようやく、大宮は鹿島に勝った。リーグ戦10度目の対戦にして、初めて。堅守を誇る鹿島は今季初めて1試合で３失点を喫したそうだ。「勝てると思ってやっていました」とこともなげに話すのは石原。得点こそなかったが、強固な鹿島ディフェンスを翻弄し、精神的ダメージも与え続けた。各個人が派手ではなくてもおのおのの仕事をこなしたし、新加入選手ラファエルも思いのほか早いフィットを見せた。内容的にも収穫のある試合だった。

試合後、長い時間ピッチに横になり夜空を仰ぎ見る大宮主将・藤本主税は何を感じていたのだろうか。もしかしたらスタンドでドキドキしながら試合を見つめ続けたサポーターとそんなに遠くない気持ちだったのではないか。そんな風に思える、スタジアムに一体感のある好ゲームでもあった。
　
以上