11月3日(水) 2010 ヤマザキナビスコカップ 決勝
磐田 5 - 3 広島 (14:09/国立/39,767人)
得点者:36' 船谷圭祐(磐田)、43' 李忠成(広島)、48' 山岸智(広島)、89' 前田遼一(磐田)、102' 菅沼実(磐田)、104' 山崎亮平(磐田)、105'+3 槙野智章(広島)、109' 前田遼一(磐田)
☆ヤマザキナビスコカップ特集ページ
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その会場は「サンフレッチェ広島 準優勝祝賀会」と銘打たれていた。激闘を終えた勇者たちをはじめ、試合に出られなかった選手たち、スタッフ、家族、関係者。多くの人たちが一堂に会し、敗戦の悔しさとファイナリストの栄誉を噛み締めながら、食事を楽しみ、言葉をかわした。
「いい試合だった」「みんな、よくやってくれたよ」
ねぎらいの言葉がつづく。しかし、脱力感に襲われた選手たちの笑顔は寂し気で、彼らの多くが壁に置かれた椅子に座り込んだ。槙野智章はテーブルの上に身体を預け、うつろな視線を虚空に投げかけていた。
宴の最後、壇上に立ったのはペトロヴィッチ監督だった。
「敗戦の後だから、みなさんガッカリしていますよね。それもまた、人生。今日は皆さん、しっかりとガッカリしましょう。明日はまた、新しい1日が始まるのです」
彼らしいジョークで会場を和ませた後、彼は言葉を続けた。そのトーンは、言葉ごとに、弾んだ。
「広島は、若くてハングリーで、素晴らしいチームだ。天皇杯でファイナリストとなり、ゼロックススーパーカップで優勝した。ACLにも出場し、ヤマザキナビスコカップの決勝にも進出できた。私は、本当に誇りに思う」
そして最後に、彼はこんな言葉で締めくくった。
「今日の敗戦は、本当に残念。しかし、来年こそ、ファイナルで勝ちたい。みなさん、このチームを引き続き、サポートしてください」
万雷の拍手が、会場に響き渡った。
試合の内容は、おそらく磐田担当の井上慎也さんが詳細に書いてくださるだろう。敗者としては、特別に語ることはない。
西川周作のパスをカットした後の速攻から決められた先制点。
89分に広島から勝利を奪い取った粘り。
102分、104分と続けざまにゴールを決め、勝利を決定づけたしたたかさ。
109分に飛び出した前田遼一の美しいループシュートの神々しさ。
アディショナルタイム、集中力を極限に研ぎすまして槙野智章のPKを弾いた川口能活の執念。
前半から激しいプレスをかけるなど、相当な運動量を要求される戦術を駆使したにもかかわらず、試合終了まで走りきった選手たちの情熱と、それができるチームをつくりあげた柳下正明監督の手腕。
ジュビロ磐田は見事な勝者だった。その素晴らしい相手と激闘を繰り広げたサンフレッチェ広島もまた、ファイナリストとしての誇りを胸に刻み付ければいい。
2007年、J2に降格したにもかかわらず、クラブはペトロヴィッチ監督に継続してチームを任せた。その絶対的な信頼に指揮官は見事に応え、3年の間に若い集団を日本一が競えるほどにまで成長させた。どんなに対策を立てられても愚直なまでにスタイルを変えず、哲学を貫き通して闘うやり方は、決勝戦も同じ。磐田の前からのプレスも予測していながら、広島は後ろからつなぐパスサッカーを捨てない。柳下監督は前夜祭で「広島は我々の対策も承知の上で、自分たちのサッカーを貫いてくる」と語った。
このやり方に賛否両論はあるだろう。だが、これからも自分たちの哲学を変えず、王道を歩きながら頂点をめざし続ける。広島とはそういうチームだ。
この試合で唯一の悔いは、2つのアクシデントの余波だ。
「後半、相手は同点にしようと前がかりに来る。佐藤寿人の飛び出しが効果的になるはずだ」と指揮官は判断、佐藤もウオーミングアップのテンポをあげていた。しかし、森崎浩司が目の不調で交代を余儀なくされ、絶好調のミキッチもまた後半途中で体力が尽きた。特にミキッチの交代は誤算。彼がいなくなると、右サイドをできる選手は森脇良太のみ。必然的にストッパーの横竹翔を起用せざるをえなくなり、エース投入の可能性は消えた。もし佐藤寿人を投入できれば、あれほど守備的な姿勢にはならなかったかもしれない。しかし、指揮官の言葉ではないが、それもまた人生だ。
圧巻のドリブルを見せつけたミキッチのスピード、彼のクロスを落ち着いて流し込んだ李忠成の得点力。約半年にもわたる病魔から復帰したばかりとは思えない森崎和幸の美しいパスと、彼との阿吽の呼吸で飛び出した山岸智の素晴らしい判断。強烈なFKをねじ込み、選手とサポーターに勇気を与えた槙野智章の情熱。同点ゴールの時にはGK西川周作をも呼び寄せ、全員で国立競技場の青空に弓を放ったパフォーマンスに表現された結束力。日本一を競うにふさわしいプレーを随所にちりばめ、紫の若者たちは見事に散った。
6度目になる「国立決勝」での敗戦。しかし、きっといつか、素晴らしいサポーターが見事に表現した美しいコレオグラフィーのように、紫の中にカップを包み込む日がくる。
その時を、今は待とう。悔しさを胸に秘め、勝者を称えつつ、誇りを持って前に進もう。
サンフレッチェ広島とは、そういうチームであるはずだ。
以上
2010.11.04 Reported by 中野和也
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