11月3日(水) 2010 ヤマザキナビスコカップ 決勝
磐田 5 - 3 広島 (14:09/国立/39,767人)
得点者:36' 船谷圭祐(磐田)、43' 李忠成(広島)、48' 山岸智(広島)、89' 前田遼一(磐田)、102' 菅沼実(磐田)、104' 山崎亮平(磐田)、105'+3 槙野智章(広島)、109' 前田遼一(磐田)
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川口能活が見事にPKを止め、タイムアップの笛が鳴った瞬間、スタンドの半分は爆発的な歓喜に包まれ、磐田ベンチの選手たちがピッチ上になだれ込んでいく。飛び上がり、抱き合いながら全身で喜びを表わす選手もいれば、あふれる涙で感激を表現する選手もいる。磐田の関係者にとっては、忘れかけていた歓喜の光景だったが、やはり何度でも経験したい最高の快感だ。
ただし、1-2のまま終わっていれば、磐田にとってはかなり悔いが残るゲームだった。それを土壇場で追いつき、その勢いのままに逆転勝利。広島サポーターとしては「前田遼一がすごすぎた」と言うしかないかもしれないが、ベンチもスタンドのサポーターも含めて、本当に全員でつかみ取った勝利であることは間違いない。
「はじめの30分ぐらいは、もしかしたら、このスタジアムに見に来ている方たちには申し訳ないゲームをしたと思っていた」。柳下正明監督がそう語った通り、自分たちでボールを回し、チャンスを作るということは、思うようにできていなかった。ただ、内容に満足はできないが、1-0のまま終わっていれば、ほぼ思惑通りの流れでもあった。
広島にポゼッションで上回られても、縦パスのコースを慎重に消し、縦パスを入れられた後も、2人目、3人目の動きに粘り強く対応してチャンスを作らせない。前線の前田とジウシーニョも守備で頑張り、GKも最終ラインもきっちりとつないでくる広島から、高い位置でボールを奪ってショートカウンターという形を虎視眈々と狙っていた。
それが先制点に結びついたのが36分。ジウシーニョがDFに厳しくプレッシャーをかけ、GKに戻したところにもしつこく追いかけていくことで、GK西川周作のキックミスを誘う。それを船谷圭祐が拾って素早くサイドチェンジし、右に開いた前田がクロスを送る。これがファーサイドのスペースに通り、走りこんだ船谷が頭で押しこんで、狙い通りの形から先制点を奪った。
このまま前半が終われば、磐田がさらにペースをつかんでいくかに見えた。だが、やはり何が起こるかわからない一発勝負の決勝戦。ハーフタイムをまたいで10分弱の間で取られた2失点は、悔いが残る形だった。1点目は、左サイドでミキッチのドリブルにより4人が続けざまに抜かれ、それによってズレた守備から李忠成に押しこまれた形。警戒していた個の力でやられた失点だった。
2点目は、選手交代を待つ中で、一瞬集中が途切れたところを突かれた形。前半の最後に左足首を負傷したイ・ガンジンが、様子を見ながら後半もピッチに立ったが、やはり無理ということで大井健太郎がタッチラインでスタンバイしていた後半3分。森崎和幸のロングパスで簡単に山岸智に裏をとられ、そのままGKとの1対1から決められてしまう。これも、やられてはいけない失点だった。
しかし、このまま終わらないのが今の磐田。逆転されたことに気落ちすることなく、攻勢をかけて少しずつ押しこむ時間を増やしていく。磐田が前節から中3日、広島が中2日ということもあったが、時間が経つごとに運動量で上回り、6分の西紀寛のシュート、22分の菅沼実(後半15分〜出場)のヘディング、27分の菅沼のシュートと大きな決定機も3度作った。
残り15分はさらに押し込み、セットプレーの回数を増やしていく。その多くは広島の身体を張った守りに阻まれていたが、後半44分の右CKでは、上田康太の左足キックが中央の那須大亮にピタリと合ってヘディングシュート。これはGK西川に止められたが、こぼれ球に前田が反応して押しこみ、ついに同点に追いつくことに成功した。
カウンターのリスクも恐れず、焦って単調な攻撃を繰り返すこともなく、押せ押せで攻めていく中で押し切れたことは、メンタル面での成長ぶりを力強く示していた。
こうなると、延長戦では完全に磐田が勢いでも運動量でも上回る。延長前半4分には、高萩洋次郎のミドルシュートがバーに当たってヒヤリとさせられるが、9分には上田のFKがバーに当たる場面を作る。10分のカウンターのピンチは、すでにフラフラになっていた西がド根性のスライディングでストップ。そして、12分の左CKからまたも那須がニアで競り勝ち、コースが変わったボールを菅沼が3度目の正直で決めて、ついに逆転ゴールを奪った。
さらにその再開直後の14分、高い位置でボールを奪って、前田とのワンツーから山崎亮平(後半32分〜出場)が抜け出し、冷静かつ正確なシュートを左ポストぎりぎりに流し込む。これで一気にリードを2点に広げた。これで試合は決まったかと思われたが、広島もあきらめない。延長前半のアディショナルタイムで槙野智章にFKを決められ、再び1点差に。
だが、そこからエースが圧巻のもう一仕事。延長後半の4分、自陣右サイドからのFKで古賀正紘が前線の左に大きなボールを入れると、前田が巧みな胸トラップで一気にDF2人を振り切り、左の角度のないところからループシュートを決め、粘る広島に決定的なダメージを与えた。
前田はこの大一番で2ゴール2アシスト。「90分過ぎてからのプレーは、また一段とあいつのすごさが出た。本当にすごかったです」と柳下監督さえ感服する驚異的なパフォーマンスだった。
それでもあきらめることなく、最後にPKを獲得した広島の執念もすごいが、ここは守護神・川口が貫禄のPKセーブ。その直後にタイムアップの笛が鳴らされ、磐田がヤマザキナビスコカップでは12年ぶり、他のタイトルを含めても7年ぶりの栄冠を獲得した。試合の盛り上がりという意味でも、選手たちの頑張りや勝利への執念という意味でも、本当に見応えのある最高の決勝戦だった。
ただ、磐田に急ぎ足で戻った優勝報告会の時点では、柳下監督はすでに中2日で行なわれる次の新潟戦のことを考えていた。この優勝がゴールではなくスタートだということは、選手もサポーターもよく理解している。
以上
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