11月6日(土) 2010 J1リーグ戦 第29節
京都 3 - 4 川崎F (17:04/西京極/11,927人)
得点者:16' 小宮山尊信(川崎F)、30' ドゥトラ(京都)、76' 黒津勝(川崎F)、85' 中村充孝(京都)、86' 中村憲剛(川崎F)、89' ジュニーニョ(川崎F)、90'+2 金成勇(京都)
スカパー!再放送 Ch183 11/8(月)前05:00〜
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西京極での第29節は、京都が粘りのある戦いを演じたが、川崎Fに追いつくことができずに惜敗に。だが、お互いに持ち味と地力を見せた好ゲームだった。
川崎Fがジュニーニョを先発に復帰させ、京都は西野泰正をFWに起用して臨んだ試合序盤は、そのジュニーニョと矢島卓郎にボールが入り、川崎Fがおおむねゲームを支配した。中村憲剛と稲本潤一のポジション取りの妙と京都のボランチが相手の裏への一発を警戒しての低い位置取りが作用したのだ。
だが、この状況は試合後、川崎F・高畠勉監督が京都の前半の守備について「ちょっと一発で裏を狙うには、ピッチの状態も含め、難しい状態だった」と話した通り、「川崎Fのスピードを消したい」という京都の守備プラン通りにも観えた。
しかし、川崎Fはスコアを動かす。16分、右サイドバックの森勇介から、逆サイドの小宮山尊信に渡る。小宮山が持ちこんで右足でシュートを放つと、逆サイドのゴールネットを揺らし、川崎Fが先制点を奪う。
左サイドから大きく右に振り、そこから又、左サイドへ。京都の背後が難しければ、サイドを使う、さらに小宮山も、そこから崩すこともよりもディフェンスブロックの前からのシュートを選択しゴールを決めたところに、川崎Fの地力が垣間見える素晴らしいゴールだった。
だが、京都も攻撃が冴えていた。その中心は西野。チームでの崩しがぎこちなかった前半、長いボールをシンプルに西野の高さに合わせ、そのこぼれを拾う意識が徹底されていた。森勇介が「中央のところでガチャガチャと、きれいな形ではないが力強さで持って行かれるのが怖かった」と話した通り、京都は西野の高さを生かすやり方を浸透させていた。
京都の同点ゴールはまさにその形である。30分。水本裕貴からのミドルレンジのパスに、西野が落とすと、ドゥトラが拾い、そこから中山博貴、ディエゴと強引にゴール前に運び、最後はドゥトラが押し込んで同点ゴールが生まれる。西野の特徴と周囲の理解が結実した、こちらも素晴らしいゴールだった。
後半、川崎Fは、後半早々の46分の決定機に続き、50分にジュニーニョがシュートを放ち攻撃色を強め、黒津投入後、さらに得点への意欲を増幅させた。
京都も54分にサイド攻撃から安藤淳が決定機を作るなど勝ち越しのチャンスを作るが、パスミス、判断ミスから川崎Fにつけ込まれるシーンを作られる。
秋田豊監督はハーフタイムコメントに、「セットプレーで点を取るぞ」と興味深い指示を残している。その前のコメントが「あせることはない。後半、必ずチャンスはくる」だ。
指揮官としては、同点での後半の戦い方として、焦れずに、前半の失点を回避して得点チャンスを窺う、という戦い方を貫きたかったのではないだろうか。だが、そのプランはあまり達成できなかった様に観えた。
西野泰正、ディエゴ、そして、中山博貴と3人が攻め残る姿が目に付き、さらに、川崎Fが黒津勝を投入し得点力のある前線を揃えると、互いにオープンな打ち合いになったのだ。
秋田監督は後半18分というタイミングで、西野を下げて中村充孝を投入した。最初はFWの位置に入った中村充だったが、攻め残る中山を前線に置き、中村充をサイドハーフに回すなど策を施して立て直し図る。
中山が攻撃への意識を強くすることで、中山、ディエゴ、西野と前線に3枚が残る場面が多くなっていた。失点を回避して得点機を作りたかったであろう京都としては、もう少し攻守のバランスを保ちたかったはず。そこで、同点の立役者の西野を下げて、中盤まで下がって守備タスクも与えやすい中村充を投入したのだろう。
こうした状況を経て、後半31分、川崎Fが追加点を奪う。京都のボールをカットして、右サイドの黒津へ送ると、ディフェンスを前にして黒津は左足を振り抜き見事な弧を描いて逆サイドのゴールネットを揺らした。前半の小宮山とは逆のサイドで、今度は上から落ちて行く様な軌跡を描く見事なシュートで2−1と勝ち越す。
ここで川崎Fは、中盤で守備の要となっていた稲本を下げて横山知伸を投入。その3分後、京都は左サイドに中村太亮、前線に金成勇を送り込み、中盤の中央に安藤淳に代えて中村充を置く。
この采配がピタリと当たり、後半40分、京都はゴール前で得たFKのこぼれ球をつないで、左サイドの中村太が大きなクロスを入れると、郭泰輝がエリア内右で頭で落とし、それを後ろから入った中村充が決めて、中村充のJ初ゴールで2−2の同点とする。
しかし、その1分後に川崎Fが左サイドに展開し小宮山に入ると、そのすぐ中を中村憲剛がゴールラインぎりぎりまで駆け上がり、ボールを受けると迷わず蹴り込み、これを決める。さらにその3分後、左サイドをドリブル勝負した矢島が中央へ送り、これをジュニーニョが押し込んで4−2と、川崎Fがあっという間に突き離す。
だが、京都もここで粘りを見せる。ロスタイム4分の内、2分過ぎたところで、自陣左サイドで中山、中村充孝を中心に細かく繋ぐと、右でフリーだったドゥトラへ。ドゥトラからの低いクロスに金成勇が右足で、勝点へ望みをつなぐゴールを決める。
残り時間わずかに勝負をかける京都だったが、結局、追いつくことができず4−3で涙を飲んだ。
今節、そのゴール全てが素晴らしかった。川崎Fの小宮山、黒津は相手ディフェンスの前から放ったもので、裏を取って崩せなければ相手の前から、という判断は個の力を十分に見せつけた。中村憲剛はこの試合初めて相手ゴール前に駆け込んでの仕事。その判断力は流石の出来。そしてダメ押し点は矢島の突破から。その力強さと速さは川崎Fらしさを見せてくれた。
対して京都。先発した西野の特徴を生かして奪った1点目。2点目の中村太亮の郭泰輝を狙ったクロスは素晴らしかった。中村太亮はG大阪戦でも安藤の得点につながるクロスを配給しており、サイドアタッカーとして一つ成長していることを証明したのではないか。
そして、3点目。まず中盤でのつなぎ。川崎Fは前からプレスをかけてボールを奪おうとしていたが、それをかいくぐった中山と中村充のテクニックと判断。そして金成勇。サイドのディフェンスの背後、そして自分のマークの前に入り込むポジション取りは教科書通りという素晴らしいもので、ドゥトラのクロスが入った瞬間に、これは決まると直感させるものだった。金成勇もボールを持っていない時の動き出しが良くなってきており、確かな成長を感じさせてくれた。
川崎F側は「大味な試合」と口にしたが、そのどれもが素晴らしいゴールで、観ている方としては好ゲームに観えた。
京都としても、これだけの試合を演じたのだから胸を張って良いはずだ。守備について言えば、2失点目までは相手を褒めるべきだろう。相手のスピードを消す守備を遂行し、それはやってのけた。だが、スピードを消されても相手は決めてきたのだ。
チームとしてやろうとした守備はできた、ということである。チームとしてやろうとしていることはできたのなら、それをさらに強固にさせる個の守備スキルを磨く努力、となるだろう。これはどちらかと言えば、中盤や前線に当てはまるだろう。
3、4失点目は試合後、秋田監督が言う「メンタリティ」の部分、さらに付け加えるとチームとしての経験不足があるのではないだろうか。
ただ、後半の戦い方は得点を意識しすぎていた様にも感じさせた。G大阪戦の後半の、力負けした戦いから成長せず、という印象を与えた。
ミスから流れを悪くしている状況は、ここ数試合続いているものである。その状況の中で同点という好機の中で攻撃にバランスが傾くのは、孫子にある「小敵の堅は、大敵の擒なり」という感じを受ける。ここに、早く点を取って勝ちつなげたい、という焦りを感じさせるのである。これも「メンタリティ」の部分だろう。
以上
2010.11.07 Reported by 武田賢宗
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