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【第90回天皇杯4回戦 名古屋 vs 新潟】レポート:“ヤング・グランパス”が見せた執念の辛勝劇。名古屋が、今季苦手としていた新潟をPK戦の末に破る。(10.11.18)

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11月17日(水) 第90回天皇杯4回戦
名古屋 1 - 1(PK 5 - 4)新潟 (19:00/瑞穂陸/3,540人)
得点者:7' 三都主 アレサンドロ(名古屋)、68' 田中 亜土夢(新潟)
チケット情報天皇杯特集
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名古屋にとって、今この瞬間、一番大事なのはリーグ戦のタイトル争いである。それは間違いない。残り4試合となったリーグ戦は、早ければ今週末の31節(11/20 vs湘南@平塚)で18年ごしのチームの悲願である優勝が決定する。その折に中2日での5連戦という超過密日程。
この日発表された名古屋のメンバーは、普段出場機会に恵まれない若手を中心に選ばれた。ベンチメンバーには、プロデビューを果たしていない2年目のMF磯村亮太とルーキーのDF新井辰也までが含まれていた。
一方で新潟はリーグ戦のメンバーとほぼ変わらぬ面々を送り出してきた。黒崎久志監督曰く「しっかり戦えるメンバー」である。欠場したのはエースのマルシオ・リシャルデスとMF小林慶之、そしてサイドバックの酒井高徳のみ。彼らの代わりにスタメン出場したのはそれぞれ木暮郁哉、ジョン・パウロ、そして内田潤である。実力と経験、実績を考えれば、若手中心の名古屋を圧倒するだけの力は、傍目から見ても十分に備わっていた。

しかし、机上の実力差が結果に反映されないのがサッカーである。まずは前半、新潟は若さを前面に押し出し、アグレッシブに攻守を展開する“ヤング・グランパス”に思いのほか試合をコントロールされてしまう。全体的に若く経験値の低い名古屋だったが、GK高木義成やDF千代反田充、三都主アレサンドロに加え、アンカーに入ったケガから復帰の吉村圭司が随所でにらみをきかせ、チームを引き締める。そこにDF松尾元太やMF花井聖、田口泰士らテクニカルな選手たちがパスワークの潤滑油となって流れを作り出していった。

これに面食らったのか、新潟は開始早々に痛恨のミスから先制点を許す。その布石となったのは5分の内田の負傷だった。巻佑樹との競り合いで額を切った内田は治療のためにピッチ外へ。一時的に10人での戦いとなったことで、チームがさらに浮き足立った。その間の7分、名古屋は右サイドからパスをつないで左サイドまで展開すると、シンプルなクロスを中央へ。これは易々と新潟DFが対応したが、クリアなのかパスなのか、中途半端なボールになってしまった。ペナルティエリア外への浮き球になったボールに飛び込んだのは三都主。ノーバウンドで左足を合わせると、シュートは一直線にゴールに突き刺さった。若手たちを鼓舞するようなベテランのゴールで、名古屋は幸先のよいスタートを切った。

その後は一進一退の攻防へ発展し、試合は1−0のまま後半へ。ここから名古屋の死闘が始まることになる。まず後半開始から両チームが動いたことで流れが変わった。名古屋は千代反田に代えて、これがプロデビュー戦となる新井を入れた。新潟は動きの悪い木暮に代えて田中亜土夢を投入。彼を前線に入れ、ミシェウを中盤でのゲームメイクに集中させる構えをとってきた。新潟は後半開始間もない52分にも大島秀夫に代えて川又堅碁をピッチに送り出した。

後半は新潟がさすがの貫禄を見せた。序盤から攻め立て、名古屋を攻守に圧倒。前半ほどのアグレッシブさが薄れてきた名古屋は徐々に後手に回り、ゴール前での攻防が増えていった。63分には吉村と杉本恵太に代え、19歳の磯村と20歳の久場光という心身ともにフレッシュな選手たちを投入。だが、これも特効薬とはならなかった。68分、新潟のジョン・パウロがミドルシュートを放つと、DFに当たってゴール左方向へボールがこぼれる。これにいち早く反応した川又が折り返すと、最後はGKと交錯しながら田中が頭で押し込んだ。

交代策が的中した新潟の攻勢はこれでさらに加速したが、今度は名古屋が意地を見せた。その筆頭がGK高木だ。後半に13本のシュートを集めた新潟は、本数どおりに決定機も多く演出してみせた。しかしこれをGK高木がことごとくファインセーブ。難なくさばいているように見えるものから、ビッグセーブまで、運動量の落ちてきた味方をカバーするような獅子奮迅の活躍を見せた。そして、試合は延長戦へと突入した。

延長戦も新潟が圧倒した。名古屋の選手たちはほとんどが実戦経験不足の選手たちである。「最近はサテライトも練習試合が少なくて。100%で90分というのはあまりなかった」(新井)と言うように、体が試合慣れしていない部分があったため、新潟の選手たちが安定したプレーを継続して行く中で、名古屋の選手たちは目に見えて消耗していった。新潟のカウンターがほぼシュートにつながり、自分たちの攻撃は中途半端に終わる。延長戦トータル30分で見たシュート数は、何と1対16である。それほどまでに、名古屋は防戦一方となった。さらには巻が左足を負傷し、花井も左足を二度つるなどし、プレー続行が厳しい状態に。花井は結局、2度目の治療でそのままベンチに下がってしまった。

それでも、名古屋はゴールを許さなかった。高木は相変わらずビッグセーブを連発し、DF陣だけでなく中盤、時には前線も一体になって守備の姿勢を強める。相手のシュートは文字通り体を張り、時には投げ打って阻止した。際立ったのは、後半戦からキャプテンマークを巻いた竹内彬の気迫だ。ボールと人の両方に喰らいつくようなディフェンスは、若い選手たちを勇気づけた。そして試合は120分間でも決着つかず、PK戦へ。両チームとも3本目までは確実に沈めたが、新潟の4本目を高木が止めて勝負あり。名古屋は1本目こそベテランの三都主が蹴ったが、残る4本を巻、田口、橋本晃司、磯村と若い選手がプレッシャーをはねのけ決めてみせた。若い力の結集で勝ち取った勝利には、まるで優勝したかのような歓喜の輪がピッチ内に広がった。

「個人的にも、今日出場したメンバーとしても、ヤマザキナビスコカップの借りを返すという思いがありました」(高木義成)
名古屋は今季、今日と同じく若手中心で臨んだヤマザキナビスコカップ予選で惨敗した苦い思い出がある。彼らはその悪夢とも戦いながら、ピッチで体を張っていたのだ。試合後のピッチで見られた過剰なほどの歓喜は、自分たちの力で勝ったという達成感の表れ。4回戦で感情を爆発させるにふさわしい下地が、今季の名古屋にはあった。これで名古屋はベスト8進出が決定。次戦は12月25日なので、次はJ1リーグ戦の優勝に集中できる。主力を温存しつつ、試合に勝つ。名古屋は最高の形で任務を完遂してみせた。

以上


2010.11.18 Reported by 今井雄一朗
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