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残り4節と、今年のJ2のリーグ戦も大詰めを迎えている。この時期の試合はシーズンで積み上げてきたサッカーの完成度の勝負になる一方で、シーズン中の激闘で負った怪我による欠場、そして警告の累積による出場停止によって、ベストメンバーを組むことが難しくなる。しかし、このような時こそチームの底力が試される時。この試合の勝点3は、最終順位を左右するという意味だけでなく、残り3試合、そして来シーズンへ繋がる大きなものとなる。
横浜FCは、中盤以降の大躍進の立役者の1人ホベルトが2試合出場停止の2試合目。さらに「出し切る」岸野イズムを体現する武岡優斗、前線で起点となり崩しのアイデアを持つ寺田紳一、ディフェンスライン安定の立役者である早川知伸が怪我で満足に使えない状態。ホベルトがセンターバックに入った岐阜戦、そして出場停止だった前節徳島戦では、いつもであればダブルボランチのコンビでボールを奪い切り替えられる場面で攻撃を食い止められず、ボールを奪う位置が低くなる傾向があった。そして、高地系治がボランチに下ることで、逆にアタッキングサードでの攻撃の変化が付けづらくなる場面も見られた。その結果、徳島戦の後半でも、十分に時間があるのに縦に急ぐ攻撃を繰り返してしまい、徳島ディフェンスを崩すことはできなかった。
前節の終盤には寺田が途中交代で出場するなど良くなる兆しもあるが、ベストな布陣と比べれば、やりくりの状態になることには変わりがない。このような状況で大事なことは、「試合の入りから激しくやる。横浜FCがこれからしていかなければいけないものを最後までやる」と岸野靖之監督が述べるように、誰が出たとしても同じサッカーをピッチで表現すること。「チーム全体がしっかりまとまって勝点を取れるか。そのプロセスが大事だし、それがクラブの将来にもつながる」（八角剛史）と、チームとしては昇格の可能性も残した中での戦いになるが、単に昇格争いというだけでなく、どんな状況でも勝点を取れるチームとなるための大きな試金石になる。そして、チームの起爆剤として、この試合では久富賢がJリーグ初先発することが濃厚。「走る力、そして繰り返す力を持っている。自分の一番いいところを出してくれれば」と指揮官も期待を寄せている。久富の切り崩す力が発揮されれば、横浜FCの攻撃の幅は広がってくる。
一方の札幌も前節の水戸戦ではサブの選手の枠を1人空けて試合に臨むなど、けが人が続出の状態。今週には宮澤裕樹の長期離脱も発表された。さらに、石川直樹が警告の累積で出場停止。練習も含めてベストメンバーからはほど遠い状況であるのは、横浜FCと変わらない。しかし、岸野監督は「札幌は引くことはない。石崎（信弘）監督はそんなことをしないし、それをしても先がないことはわかっていると思う。札幌は切り替えを大事にするチームなので、そこの勝負になる。怪我の功名かもしれないが、若い選手の出場が増えた分チーム全体の運動量は増えた」と逆に、札幌のサッカーの特徴が出しやすい状況となっていることを警戒している。こちらも、試合に出た選手が自らのスタイルを出せるかどうかが大きなポイントとなる。
試合の展開は、先の岸野監督の言葉ではないが、中盤での攻防が激しくなることは間違いない。90分間落ちない運動量をベースに激しくプレスを掛け続け主導権を握りたい横浜FCと、同じく石崎監督お得意の中盤での激しいプレスから早い切り替えを目指す札幌の戦いは、見ごたえのあるものとなるだろう。前回の対戦（第19節）では、札幌が開始2分の石川の退場とPK献上でビハインドを背負い、さらに前半34分の高地のファインゴールでついた2点差を返せず、横浜FCが逃げ切った。札幌にとってはフラストレーションがたまる敗戦だっただけに、この試合で借りを返したい気持ちは非常に強いはず。横浜FCも、残された昇格の可能性に向けて勝点3へのモチベーションは高い。この両者の思いが投影される中盤のプレス合戦に注目だ。
17時開始で、少々寒い中での観戦が予想されるが、ニッパツ三ツ沢球技場を離れて行われるこの試合では、Jリーグ特命PR部マネージャー足立梨花さん来場を始め、様々なイベントも予定されている。是非スタジアムに足を運んで、楽しいイベント、そしてアツい「岸野根性劇場」を堪能していただきたい。
以上
2010.11.19 Reported by 松尾真一郎
