スカパー!生中継 Ch182 後04:50〜
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佐藤寿人と李忠成が共に先発でピッチに立った試合が、1度だけある。今季のACL開幕戦、2月24日に行なわれた対山東魯能戦だ。
ただ、この試合での李のポジションはFWではなくトップ下。佐藤にもゴールが生まれず、クラブ史に残るACL初戦は敗退。以降、2人が同時に先発する試合は一度もない。
その後、佐藤寿人は「不動のエース」として順調に得点を重ね、一方の李もアウェイのACL山東魯能戦で途中出場ながら2得点を記録した後は、スーパーサブとして得点に絡み続け「これはいずれ、2人の共存を探る必要があるのでは」と感じさせた時期もあった。だが夏以降、李の状態があがらず、一時は出場機会すら失いかけた。
しかし、佐藤がヤマザキナビスコカップ・G大阪戦で右肩を負傷、代役を務めた山崎雅人も負傷するというアクシデントを受けてチャンスを得た李が、8試合7得点と大ブレイクを果たす。リーグ戦だけでなく、ヤマザキナビスコカップ決勝という大舞台でもゴールを決めるなど、今や広島のニュー・ヒーローとして大注目を集める存在となった李と、復帰初戦の浦和戦で決勝ゴールを決め「さすが」とうならせた佐藤寿人との共存は、チャンスに対する得点確率の低さに悩むチームにとっては、解決すべき課題となった。
「広島は、誰か一人に頼っているチームではない」とペトロヴィッチ監督は再三主張している。得点についても「別にFWだけが得点する必要はない。MFもDFも決めてほしい」が口癖だ。だが一方で、指揮官は「得点を決めるためには、特別な才能が必要だ」ともつぶやいたことがある。全員攻撃は、確かにコンセプト。しかし、チャンスメイクという「調理」をゴールという美味な「ディナー」に仕上げる最後の味付けには、ストライカーの「才能」が醸す微妙なさじ加減が必要なのだ。
佐藤寿人がストライカーとして神様に愛されていることは、彼の7年連続二桁得点(J2含む)という偉大な記録を引き合いに出さずとも証明済み。そして李もここ最近の爆発によって自らの天分を見せつけた。できることなら、2人を共存させたい。それは、誰もが考えることだろう。
だが、野球という個人プレーの比率が高いスポーツですら、4番バッターだけでは点がとれないことは、一昔前の巨人軍が証明している。まして、よりチームスポーツの色合いが濃いサッカーにおいては、さらに周囲のサポートをストライカーが必要とすることは言うまでもあるまい。パスを出す、ドリブルで崩す、スペースをつくる。様々な役割をチーム全体が果たすことでストライカーは得点を奪うことができる。そこが、このスポーツの難しいところであり、かつ面白い部分だ。
2008年4月29日、徳島で突然生まれた広島流の「1トップ2シャドー」がほとんど練習しなくともバッチリとはまったのは、テクニックに優れた才能がMFに集まっていたチーム事情があり、彼らの発想と思考ベクトルが同じ方向を向いていたから。一つのボールに何人もの選手が絡んでゴールという作品を創り上げる広島のサッカーの本質を、1トップ2シャドーという形が引き出したのだ。
チームコンセプトはJ1でもアジアでも十分に通用したわけで、そこを変える必要はない。ただ形を変えるだけだ。周囲はそう考えるかもしれないが、約3年半の間、結果を出してきたフォーメーションを変えるのは「簡単ではない」(ミキッチ)。ペトロヴィッチ監督も「練習では悪くはないが、試合でどう機能するかは未知数」とした上で、「どういう形にして誰を起用するかは、中2日で控える清水戦もふまえた上で選手たちと話をして決めたい」と慎重な口ぶりだ。
対戦する新潟は、水曜日に名古屋と天皇杯で120分にも及ぶ死闘を繰り広げ、PK戦で敗れた。加えて、天皇杯では既に敗退している広島が中5日で調整しているのに対し新潟は中2日と、肉体的にも精神的にもコンディションに大きな差があるのは明白。神戸戦で負傷交代したマルシオ・リシャルデスは名古屋戦欠場。広島戦に出場するかどうかはわからないが、もしチョ ヨンチョルがU-21韓国代表に招集中のこの時期に背番号10が欠場ということになれば、新潟はさらに窮地に追い込まれることとなる。
「だが、我々もナビスコカップ決勝の後、中3日で休養十分の浦和と闘い、見事に勝利した。昨年までの同僚であるポイチ(森保一コーチ)さんと黒崎久志監督が、新潟を危険なチームに成長させているからね。油断はできない」とペトロヴィッチ監督は言う。共にACL出場権を争う「危険なチーム」に対し、果たして新システムを起動させるのか、それとも違う選択肢を指揮官は決断するのか。興味深い対決は、明日17時、キックオフを迎える。
以上
2010.11.19 Reported by 中野和也













