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【J2:第13節 熊本 vs 千葉】レポート:セットプレーから千葉が先制するも、長沢の今季3点目で追いついた熊本。手にした「1」は、前節とは違う意味を持つ、決して小さくはない「1」(11.05.22)

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5月21日(土) 2011 J2リーグ戦 第13節
熊本 1 - 1 千葉 (13:04/水前寺/4,349人)
得点者:3' 竹内彬(千葉)、24' 長沢駿(熊本)
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1本目のロングスローは、この日右腕にキャプテンマークを巻いた原田拓のクリアで凌いでいた。しかしその正確な軌道とスピードのあるスローイングに、水前寺競技場のスタンドがどよめいたのも事実。1本目のスローでこの日の感触を確かめたのか、2本目を投げる前、ミリガンは入念に、トラックに用意されたタオルで両手を拭っている。
そしてメインスタンド側のタッチラインから投じられた2投目は、1本目よりもやや山なりの軌道を描いてファーサイドまで届いた。遅れ気味に入ってきたことで「ちょっと届かないかなとも思った」という竹内彬が右足で合わせて強引に押しこむと、ボールは熊本の選手に触れることなくマウスへ吸い込まれる。竹内の2試合連続ゴールで千葉があっさりと先制したのは、キックオフからわずか3分のことである。
ただ、試合後に「あれを決められたらしょうがないという思いはある。それより、立ち上がりに早く失点したので、後の時間のほうが重要。失点したことを忘れるわけではないが、メンタル的にもそんなにダメージなく続けられたんだと思う」と高木琢也監督が振り返っているとおり、熊本の選手たちはあまりに早く負ってしまったビハインドにもまったく動じることなく、落ち着いて試合の主導権を引き戻していった。

この日の熊本は、トップ下にファビオ、アンカーにエジミウソンを配置する中盤ダイヤモンドの4−4−2の布陣。さらに、今シーズン初めて、というよりも高木監督が熊本に来てからも初めて、原田を左サイドバックで起用。その意図について「つなぐことも含めて、攻撃の部分で彼の良さを出すため」と高木監督は話し、実際に原田からの大きなサイドチェンジがいい形に結びつく場面を何度も作っている。さらに、千葉の前線で起点となるオーロイを廣井友信と矢野大輔の2人がほぼ完璧に抑え、中央のラインを作る2人のブラジル人が、前からの守備とセカンドボールへのケアで貢献して千葉の攻撃を寸断したことも、熊本が流れを掴む一因となった。

攻撃においては千葉のDFラインの裏を狙う意図があったものの、徐々に下がっていく千葉の最終ラインの前に生じるスペースを生かし、左から片山奨典が仕掛ければ右は市村篤司が鋭く飛び出してサイドチェンジのボールを引き出すなど、決して単調にはなっていない。公式記録で千葉の1本に対して熊本8本となっているコーナーキックの数からも、そうしたワイドな展開から深い位置まで入り込めていたことが分かる。何より、前節の水戸戦で足りなかった縦へトライする姿勢もあった。
同点ゴールは24分。15分過ぎから右で起点となっていた市村のクロスに対してミリガンが処理を誤ると、ボールは長沢駿のもとへ。直前の21分、コーナーキックからのヘディングをポストの右に逸らしていた長沢だったが、この場面では落ち着いて叩き、左隅に決めた。

千葉のドワイト監督は、「ファビオへの対応がうまくできていない」と、後半から太田圭輔に代えて192cmのファン ゲッセルを投入してボランチに据え、伊藤大介を右へと動かす。これで佐藤勇人が前半と比べて前に出る場面が増え、米倉恒貴が絡むなど攻撃に流動性が生まれてボックス近くまで侵入する形を作ったが、オーロイはやはりターゲットとしての役割を発揮できず、米倉からのパスを受けた佐藤のシュートがクロスバーを直撃した70分の場面を除いて、千葉としては決定機を作れなかった。
熊本も追加点こそ奪えなかったものの、武富孝介がドリブルで持ち込んだ88分、千葉GK岡本昌弘に阻まれたが大迫希が鋭いミドルで狙った89分など交代で流れを引き寄せ、同じ勝点1でも昨年の開幕戦、そして前節の水戸戦とは違う手応えを感じさせる試合を展開。首位を相手に追いついて引き分けたという意味よりも、「後半の25分以降に米倉選手を少しフリーにしてかきまわされた以外は、僕の中ではほぼパーフェクトなゲーム」と高木監督も評したように、攻守両面で主導権を握り、また結果には結びつかなかったが勝利を求める強い気持ちをプレーで表現できたことは小さくない収穫だったと言っていい。
逆に千葉は、こういった展開でも負けないしたたかさはさすがに首位といった印象だが、内容面ではいささか不安が残る。今シーズンはとにかくJ1への復帰が至上命題とあって結果が最優先されるべきだが、特にオーロイを封じられた場合にどう点を取るかという部分は、クセのあるチームが揃うJ2を戦い抜く上ではより深めていく必要があるだろう。後半に入って細かくボールを動かす場面も作っていることから、選手たちが持っているポテンシャルをさらに生かして、磐石の体制を作れるかが今後注目される。

この試合の前、「直接対決では負けられないし、勝てば本当に大きい」と南雄太は話していたが、結果的に3ポイントは手にできなかった。フィニッシュの場面での課題などはもちろんある。しかしこの日得た1ポイントは、今日のような戦いを継続していけば、シーズン終盤に必ずや、大きい1となってチームを助けることになる。

以上


2011.05.22 Reported by 井芹貴志
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