スカパー!生中継 Ch363 後02:00〜
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ペトロヴィッチ監督はチーム状態の改善に向け、パス&コントロールの重要性を繰り返し訴えている。25日には4つのコーンで正方形を作り、辺をなぞるようにボールを動かして、止めて蹴る、パス&ムーブの基本を確認するトレーニングを行い、その後に判断を伴う形でのパス&コントロールのメニューも組んだ。
「昨日の負荷の高い練習のリカバリーとしてやった」とペトロヴィッチ監督は説明したが、そういった意図の他にも狙いはあったはずだ。この日も「自分たちで簡単に相手にパスをしているようでは、どんな準備をしても話にならない」とこれまで何度も口を酸っぱくして言ってきたことを指摘していただけに、なかなか改善されないパス回しを根本から確認する意図もあったのだろう。練習中には「パスの質!」「ゴメンナサイはいらない!」「お互いに声をかけて修正しなさい」といった声が飛んでいた。
注目はシステムを変えて戦うかどうかに集まっている。前節の鹿島戦では、まずダブルボランチに変え、その後に2トップに変更してから2点を返して引き分けに持ち込んだ。「鹿島が2−0から同点までされたのは珍しい。追いついたことは称賛に値する」と指揮官が力を込めたように、非常に厳しい状態から同点に追いつけたのは明るい材料だった。試合後に数人の選手たちから「やりやすかった」という声が出たこともあり、取材の中でシステム変更に関する質問が増えたのも当然の流れかもしれない。
ペトロヴィッチ監督は4−3−3が一番好きだと明かしながら「選手がやりやすいのなら、彼らの話を聞いて変えることも考えている」と柔軟な姿勢を見せている。鹿島戦翌日に行われた長時間のミーティングでは、選手たちからシステムを変えた方がやりやすかったという話も出ていたようなので、新潟戦ではシステム変更の可能性はある。
ただ、その一方でペトロヴィッチ監督はこんなことも言っている。
「横浜FM戦で後半から2トップにしたが、よくなかった。仙台戦もよくなかった。柏戦は原がトップ下でちょっと違ったが、同じような形でそんなによかった印象はない。鹿島戦の最後の30分だけよかったが、システム以前にパスを何回もミスしているのが問題だ」
その通りだ。これまでも2トップにして戦ったことはあるが、機能したとはっきり言えるのは鹿島戦くらいだ。
「4−3−3でも4−4−2でも試合のなかで選手が動けば変わらない」
これも正しい。自分たちの状況、相手の状況を判断して選手たちが適切な動きをすれば、どのシステムを使ったとしても戦える。だが、厳しいことを言えば、それができていれば現在の順位にはなっていないはずだ。4−3−3が機能した試合はほとんどなく、それならば直近の試合で効果的に働いたシステムを使うというのも選択の1つだろう。
個人的には、スタートは4−3−3を敷き、うまくいかなければシステムを変えるという流れの方がいいのではないかと思っている。最初から2トップで挑んで機能しなかった場合、切り札がもう残されていないからだ。また、1トップか2トップかというポイント以上に、ボランチ1枚を2枚にする方が重要だと思っている。これまでのところ、アンカー1枚のスタイルはまったく機能していない。守備ではバイタルエリアにスペースを量産する結果になり、攻撃ではDFラインから中盤にボールが流れない原因となっている。ボランチを2枚にすればスペースはもっと消せるようになる。そして攻撃面では永田充が「ダブルにして(柏木)陽介が下がったことで球が回り始めて、それで鹿島も下がらざるを得なかったのがよかったんだと思う」と振り返ったように、DFラインからパスを引き出せるようになることでアンカー1枚の時よりもパス回しは改善されるだろう。アタッキングサードの攻略という別の問題はあるが、ビルドアップはダブルボランチを置く方がやりやすくなるはずだ。
新潟は堅守速攻を持ち味としたチームだ。攻撃パターンとしては、(1)DFラインからFWにロングボールを蹴る、(2)ボランチを経由してサイドに展開する、(3)サイドバックから前に当てる、の3つが多い。最初に警戒しないといけないのは、FWをダイレクトに狙うパス。FWのブルーノ ロペスはポジショニングと動き出しのタイミングを取るのが非常に巧みな選手なので、最終ラインの選手が苦し紛れに蹴ったボールでもチャンスに結びつける力がある。新潟は自分たちの特徴に合う外国人選手を発掘するのが本当にうまいと感心させられる。ロングボールの出どころをずっと抑えるのは現実的に不可能なので、浦和としては受け手となるFWを厳しくチェックする必要がある。ペトロヴィッチ監督も「永田、スピラ(スピラノビッチ)には言っているが、サイドバックを追い込んだ時にロングボールが出る可能性があるから、FWを動けないようにブロックしないといけない。ポジションを選ぶのが大事」と話している。
永田とマルシオ リシャルデス、新潟をよく知る2人は攻略のポイントとして奇しくも同じ選手の名を挙げて警鐘を鳴らしていた。「ゲームメイクするボランチの勲から常にいいボールが出るシステムなので、そこを潰す意識が必要。それが一番注意するところ」とはマルシオ。本間勲は前節のC大阪戦でも中盤の底から高精度のパスを出し、新潟の攻撃を活性化させていた。
サイドバックからサイドハーフに当てる場合はプレーサイドが同じなのでプレッシャーもかけやすいが、新潟がボランチを経由して展開する時は人口密度の低いサイドにボールを入れてくるので、高い位置で起点を作られやすい。パスの散らし役となる本間に気持ちよくプレーさせては苦しくなる。
浦和はここまで1勝2分4敗と低迷している。内容的にも苦しんでいる試合のほうが多い。だが、サッカーでは、1つの白星が歯車の噛み合うきっかけになることが往々にしてある。柏木陽介は「何よりもいいクスリになるのが勝点3だと思うから、ほんまに勝ちたい」と切実な思いを抱いて戦いに挑み、古巣との対決となるマルシオは「すごく真剣に戦うので信じて待っていてもらいたい。絶対にいい結果を出す」と腹をすえる。
ホーム3連戦も今回の新潟戦で最後になるが、3試合で勝点5が取れれば悪くない結果だ。3度目の正直という言葉もある。浦和はこれまで新潟にホームで負けたことがなく、J1で7勝、J2でも2勝している。約1カ月ぶりとなる勝ち星を相性のいい相手から奪い、スタジアムを真っ赤に燃やす。
以上
2011.05.27 Reported by 神谷正明













