☆ヤマザキナビスコカップ特集ページ
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ペトロヴィッチ監督が山形戦に向け、1つの決断を下した。
「加藤が先発する」
試合2日前、指揮官は山岸範宏ではなく加藤順大にゴールマウスを任せることを公言した。今年は東日本大震災の影響で大会方式がホーム&アウェーの一発勝負となり、1試合の勝敗がこれまで以上に重みを持つことになるが、生き残る上で大事な初戦のホームゲームを加藤に託した。
ペトロヴィッチ監督は「ナビスコカップは重要な大会なので、一番状態のいい選手たちを出す。タイトルに向けて全力で戦うのみ」と必勝態勢で臨むと宣言している。そのなかで与えられたスタメンのチャンス。勝つために加藤を選んだ。加藤にはこれまでの悪い流れを変える起爆剤として期待がかかる。
加藤にとっては昨年6月に行われたヤマザキナビスコカップの横浜FM戦以来、約1年ぶりの公式戦となるが、久しぶりの出番にも臆するところはない。「どうしようという感じより、いつも通りやろうという気持ち。アピールしたいという気持ちは強い。チームが勝てていないのでアクセントになれれば」と力を込める。
この試合にかける思いには特別なものがある。「子どもが生まれてから初めての試合だし、子どものためにもやれればいい」。4月に待望の長男が誕生し、守るべきものが1つ増えた。「子どもが大きくなるまでやりたい」という願いを実現させるために必要なのは守護神の座を勝ち取ること。ようやくつかんだこのチャンスを生かし、ステップアップのきっかけとしたい。
長く控えとして過ごしてきたことで学んだこともあるという。「全体の流れやチームが何をしたいのかを昔より考えられるようになった。うまくコントロールできたらいい方向に行くと思う」。加藤にはキック精度という大きな武器もある。「常に試合の流れを読んでしっかりしたボールを入れて、攻撃のいい流れを作りたい」と得意のフィードでもアピールするつもりだ。前線でターゲットとなる高崎寛之も「キックの質が高いから大丈夫だと思う」と最後方からのゲームメイクに厚い信頼を寄せる。
山形戦では相手の“飛び道具”に気をつけたい。昨季は山形との3試合で計4失点を喫したが、そのうち2失点はFKから、1失点はスローインの流れから許している。加藤が「セットプレーが強いというイメージがある」と語るのも納得だ。昨季、浦和は山形に1分2敗と1回も勝てなかったが、セットプレーが結果に大きな影響を与えていた。
決定力が高いとは言えない山形はセットプレーが貴重な得点源になっている。先月28日の甲府戦でゴールを決めるまで3試合スコアレスと今季も得点力不足に悩まされているだけに、セットプレーを防ぐことができればそれだけ失点の危険性は少なくなる。
セットプレーの危険性という観点で見ると、石川竜也の欠場は浦和にとって朗報だ。正確無比の左足を持つ左サイドバックはこれまで何度もプレースキックで浦和に脅威を与えており、昨季はFKでアシストを記録している。流れのなかでもピンポイントクロスでゴールをお膳立てしているだけに、石川の存在が試合結果に及ぼす影響は小さくない。直近の試合まで故障で戦線離脱していたが、練習にはすでに合流しているため復帰の可能性もある。浦和からすれば、今回の試合が終わるまで復帰を待ってもらえるとありがたい。
山形は縦へのロングボールを積極的に活用してくるので、セカンドボールの奪い合いで優位に立てるかどうかも重要な要素になる。中盤が間延びしていると、ルーズボールを拾える確率は下がるので、選手たちにはポジショニングバランスを考慮しながら陣形をコンパクトにすることが求められる。ペトロヴィッチ監督も「ラインをコンパクトに保つことに重点を置いているし、トレーニングでも確認している」と力説する。空中戦で長身の長谷川悠を抑え込み、セカンドボールも拾うことができれば、その分だけ勝利に近づける。全体をコンパクトに保つことができれば、新潟戦の前半のように高崎、エジミウソンが競り合いで落としたボールを拾う場面が増え、攻撃でもリズムが生まれやすくなる。
現在、浦和はリーグ戦で6試合勝ちなしと苦しんでいる。同じくリーグ戦で4戦白星から遠ざかっている山形を下し、苦境から抜け出るための踏み台にしたい。
以上
2011.06.04 Reported by 神谷正明













