☆ヤマザキナビスコカップ特集ページ
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ヤマザキナビスコカップは、文字通り「カップ戦」であるため、現在のリーグ戦での順位は「関係ない」という言葉を使用するのが本来は相応しいのかもしれない。だが、この両者に限っては、首位・柏と２位・仙台という、序盤のJ1をけん引している２チームであることを強調しなければならないだろう。さらに、仙台が２００９年のJ2チャンピオンならば、同じく柏も２０１０年のJ2を制してJ1復帰を果たしており、近年叫ばれる「J2でチームを熟成させる」という躍進の方程式にも当てはまるのだ。
仙台の試合を見れば彼らが現在の順位にいる、その理由が十分に伺い知れるというもの。曹秉局と鎌田次郎を中心に統率された守備組織に破綻の気配はなく、J1第１３節では、横浜ＦＭが厚みのある攻撃を展開しても強固なブロックが相手の侵入をことごとく遮断。狙い通り先制点を挙げた後は、ボールを奪ってからまるで鋭利な刃物で切りつけるかのようなカウンターで敵陣へと襲いかかった。結果的に横浜ＦＭに追いつかれ試合はドローに終わったが、後半には幾度となく決定機を作り出し、同点となった直後からは横浜ＦＭのロングボール主体の攻撃を浴びようとも崩れることなく、逆にしのぎ切った点はある種仙台の強さを印象付けたと言える。
つまり柏にとって、仙台に先制点を許すとかなり厄介になる。たとえそれが今季ホーム全勝、難攻不落の日立台といえども、だ。
そんな好調・仙台を迎えるにあたり、「なぜか去年からウチとやる相手は『何戦無敗』とか『何連勝中』とか、好調の相手が多いんですよね」と大谷秀和は苦笑いを見せて話しつつも、「好調のチームとやれる喜びはある」と付け加える言葉は、彼らの自信の裏返しでもあろう。現に最近の試合も、第１１節の新潟戦、第１３節の神戸戦と、対戦時には好調と言われた相手を術中にはめ、ともに３−０で一蹴した。仙台に勝るとも劣らない自信を柏の選手たちは漲らせる。
柏と仙台は共通点が多い。先述した「元J2王者」や基調とするチームカラーが黄色（正確には仙台はゴールド）という点のみならず、チームを支える熱いサポーター、高い組織力、カウンターの巧さ、そして仙台の梁勇基、柏のレアンドロ・ドミンゲス、ジョルジ・ワグネルという精度の高いキッカーを持つゆえ、セットプレーに抜群の強さを発揮すること。そして先制点を奪った試合は仙台が３勝３分ならば柏は５戦５勝と勝率も高く、あらゆる事象において通ずる部分が多いのである。
したがって逆もまたしかり。先ほど、仙台に先制点を許すと厄介だと述べたが、まず柏にとって有利に試合を運ぶためには、やはり先にゴールが欲しいところ。それに、柏は固い守備からのカウンターばかりがクローズアップされるが、むしろ柏の強みは、時間帯、局面、点差などに応じて様々なスタイルを使い分けられる、ピッチ上で選手の意思統一がなされたゆえに披露する老獪なゲームマネージメントの妙にあると言って過言ではない。おそらく柏の布陣は前節と変わらない。堅守・神戸の守備網を鮮やかに切り裂いたレアンドロ・ドミンゲス起点のリズミカルなパスアタックをはじめ、大津祐樹の変幻自在ドリブル、酒井宏樹、ジョルジ・ワグネル、両サイドバックの外から射抜く攻撃など、様々な手を駆使し、先に仙台の強固な守備ブロックをこじ開けることができれば、柏の勝利する可能性は一気に高まるはずである。
さらに付け加えるならば、この戦いは２試合通算１８０分トータルで決着がつくことだ。大谷、栗澤僚一、チームを支えるダブルボランチは「まず目の前の試合に勝つことだけを考える」と言うが、第２戦の地・ユアテックスタジアム仙台は、アウェイチームにとってまさしく『四面楚歌』、攻略し難いスタジアムのひとつである。ならばできるだけ多くのアドバンテージを握り、敵地へと乗り込みたい。
最後に、今一度言わせてもらうが、現在J1首位の柏と２位の仙台、その順位にいる裏付けを持つことからも、この２チームの好調を勢いやサプライズでは、もはや片づけられない。ここで勝利を収めた方がさらに勢力を拡大し、ヤマザキナビスコカップのタイトルを勝ち取ったとしても不思議はないだろう。
以上
2011.06.04 Reported by 鈴木潤
