6月4日（土） 2011 J2リーグ戦 第15節
栃木 0 - 0 水戸　（13:03／栃木グ／3,931人）
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グリスタで、水戸から初勝利を挙げ、初の北関東ダービー制覇へ向けて大きく前進する。試合内容で圧倒的に水戸を上回りながら、しかし栃木は歴史を塗り替えることができなかった。
「色々な所で上回れたが、決定的な上回り方が出来なかったし、決定力がなかった。あとは水戸さんが頑張ったということ。非常に守備的な戦い方をして、プラン通り逃げ切った」
松田浩監督はゴールを、勝点３を奪えなかったことに悔しさを滲ませた。大敗後に立て直しを図るのに必死だった水戸には貴重な勝点１だったかもしれないが、Ｊ１昇格を目指す志の高い栃木にとっては勝点２を喪失したダービーだった。

「０‐０というゲームはある。結果をネガティブに考えず、今日のゲームにプラスαの色付けをすればチームは強くなる」とは、古巣の水戸戦で通算２００試合出場を果たした大和田真史。前半から栃木は指揮官の指示通り、サイドチェンジを繰り返し、水戸から体力を削り取ることができた。しかし、横に揺さ振れただけに、もう少し相手ＤＦラインに縦の揺さ振りをかけたかった。例えば前半１１分、大和田が水沼宏太に通した、ＧＫとＤＦラインの間に大きく蹴り込むボールを。「そうすれば相手のラインが下がり、間、間で受けられたと思う。相手のラインを下げるには、そういう長いボールも必要だった」と、大和田は悔やんだ。

今後もボールを扱う時間は相手よりも栃木の方が長くなるだろう。安定感を増したポゼッションに加え、シンプルに縦へボールを入れる作業ができれば、相手の陣形は間延びし、コンパクトさを失う。スペースが生じれば、快勝した徳島戦のように２トップにボールが入り、攻撃にリズムができる。横と縦の２方向を上手くミックスさせられれば、４‐４‐２同士の堅い試合でもブロックに穴が空けられるはずだ。

点は取れなかったが、取られなかったことは収穫だった。「昨年までならばこういう試合を落としていたことが頭を過ぎった」と松田監督が言うように、イニシアチブを握って攻めながら、前傾姿勢を取り過ぎるあまりカウンターを浴びて失点するケースは多々あった。中盤でのボールの取られ方が悪く、水戸にカウンターを食らうこともあったが、守備が持ち味の栃木にとって２試合連続完封は自信を上積みできる。

無失点に多大なる貢献をしたのはＧＫ鈴木智幸。プロ４年目での初先発のチャンスは、守護神・武田博行の怪我により巡って来た。昨季まで所属した東京ヴェルディでは土肥洋一の壁を越えられなかったが、菊池新吉ＧＫコーチとのトレーニングで流した汗は確かな自信に繋がった。「心の中では少し緊張していた」と本人は言うが、「ファーストタッチから思いっ切りやろう」というポジティブな発想は味方に安心感を与え、安定感したセービングを引き出した。冷静に戦況を見られていたからこそ、前半２１分に迎えた窮地でも、ルーズボールに対して俊敏な反応ができた。「前半のルーズボールへの反応は良かった。あれはビックセーブ。本当に助かった」と、大和田は好守に賛辞を惜しまなかった。「とりあえず０で良かったな」と、試合後には菊池ＧＫコーチからも及第点をもらえた。「タケさん（武田）の怪我が治っても、鈴木で行ける、と思われるようにプレーしたい」。戦前にそう意気込みを語った鈴木智。有言実行。武田と遜色ないパフォーマンスを披露し、松田監督にひとつ嬉しい悩みを増やした。計算できる、新たな戦力が加わった。

首位の千葉が敗れるなど、栃木を含めた上位陣が軒並み足踏みする中、湘南は５位から２位に浮上。次節、栃木はリーグ最少失点を誇るＪ２降格組の湘南と激突する。４‐４‐２同士だけに水戸戦同様の睨み合い、“ミラーゲーム”になる可能性は高い。「ウノゼロ（１‐０）」を得意とする相手に、水戸戦の反省を生かさなければいけない。水沼は言う。「自分達と同じサッカーをするチームには、自分達がＪ１を目指しているというところを見せて、技術や切り替えなどで上回ればいい」。湘南戦までに最高の技術が発揮できるメンタル状態を作り、水戸戦で取り切れなかったゴールを奪い、上位決戦を制したい。ダービーでのスコアレスドローの価値を高めるためにも。

以上

2011.06.05 Reported by 大塚秀毅