今日の試合速報

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【ヤマザキナビスコカップ 広島 vs 川崎F】レポート:全員の頑張りでつかみかけた勝利を、ミスで失った広島。アウェイゴールを二つ手にした川崎F、優位に立つ。(11.06.06)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
6月5日(日) 2011 ヤマザキナビスコカップ
広島 2 - 2 川崎F (15:00/広島ビ/12,498人)
得点者:2' 山瀬功治(川崎F)、41' 服部公太(広島)、61' ムジリ(広島)、88' 小宮山尊信(川崎F)
ヤマザキナビスコカップ特集ページ
----------
広島にとっては、まるでサンドイッチのような戦いだった。
開始早々の失点と終了間際の同点被弾は、J1レベルといえない守備の乱れ。しかし、その間に挟まれた時間帯は全員が身体を張り、感動すら与えた戦いを見せた。その落差があまりに激しすぎる。明確なことは2-2というスコアと、川崎Fがアウェイゴールを2つ手に入れた事実。この結果、7月27日の等々力決戦では1-1でも川崎Fの勝ち抜けが決まる(※)。一方広島も、主力を大量に欠いた試合での引き分けは、悪くはない。そこは明記しておきたい。

広島の得点シーンは、どちらも見事だった。この試合も攻守にわたって好調さを見せつけていた森崎浩司から、右サイドにボールが出る。石川大徳が中に切り込み、中島浩司へとパス。右サイドのスペースに飛び出した山崎雅人がボールを呼び込んで放ったクロスを、服部公太が正確無比なヘディングで「そこしかない」コースに流し込んだ。
石川・山崎、そして服部。いずれも今季、出場機会には恵まれなかった選手たち。その彼らが「俺たちは代役じゃない」という意地を見せつけた鮮やかな攻撃で、川崎Fのブロックを破壊した。8人の主力を欠いても、コンビネーションで得点をとれる。ペトロヴィッチ監督が長い年月をかけて作り上げたチームの真骨頂だろう。

2点目も狙いどおりだった。アウェイゴールを狙って前に出てくる川崎Fを堅牢なブロックで跳ね返し、カウンターの刃を振り切る。相手パスミスを拾った高萩洋次郎がドリブルで持ち上がり、ムジリが豪快に叩き込んだ。運動量が少なく守備では期待できない背番号10だが、ここぞという攻撃の局面で見せる鋭さは、替えがきかない。

川崎Fは、ジュニーニョや黒津勝、GKの相澤貴志や杉山力裕といった主力が負傷で不在。柴崎晃誠も代表でいない。しかし、黒津は今季の出場がなく、ジュニーニョの先発落ちは既に4試合目。柴崎に代わって登場したのが稲本潤一であることを考えれば、「今季のベストメンバー」という観点では、川崎Fはマイナス1。一方の広島は、今季ベストからマイナス7。数量的な感覚で言えば、ここまで大量の主力不在を抱えながら、自らの攻撃面でのメリットを活かした2-2の引き分けは、広島にとっては「勝利」だ。だが、試合後のミックスゾーンに、「マイナス7」で強豪・川崎Fと引き分けたという充実感はない。広島の選手たちは一様に苦々しい表情を浮かべ、勝たなかったことへの悔いを口にした。それは、失点の仕方に納得がいかないからだ。

1失点目は、左サイドからのクロスが起点。盛田剛平が矢島卓郎のマークにつききれず、服部がサポート。だがそのため、最も危険な2列目のアタッカーがフリーとなってしまった。森崎和幸がブロックにいこうとするも、小林悠が身体を張って邪魔をして行かせず山瀬功治の強烈なボレーを「アシスト」した。
この場面、広島の足が止まっていたのも事実。ポジションに関係なく「危ない」と思った選手が身体を投げ出すのが広島の守備なのに、このシーンではほとんどの選手がその場所に立ちすくんでいた。

だがこの「安い」失点も、88分の同点弾に比べれば、まだまともに見える。井波靖奈がフリーのシュートを外した直後、広島は川崎Fに9本目のCKを与えた。キッカーは中村憲剛だ。目を疑うシーンは、ここからスタートだ。
セットプレーの守備時には、ボールもしくは相手選手から目を離さない。基本中の基本である。ところがこの時、その基本を見失っていた選手がいた。そのスキをついてフリーとなった小宮山尊信がスルスルと前に上がってパスを受けた。シュート力に定評のある小宮山が至近距離からのシュートをフリーで打てば、外すはずもない。そこまで集中を切らさずピンと張りつめた空気を醸し出した全員の頑張りを、一瞬にしてフイにしてしまった有り得ないミス。それが、試合の後味を苦いものに変えた。

「もし、サブでいいという気持ちでやっている選手がいたなら、俺は受け入れがたい」。再三の好判断でチームを救った中林洋次は吐き捨てた。「ポジションを奪う自覚を、もっと試合で出さないといけない」。表情厳しく、森崎浩司は言葉を連ねた。

服部公太や盛田剛平など、ベテランが復活の狼煙をあげたことは大きなプラス。しかし、このチームが本当にタイトルを目指すのであれば、若い選手たちの奮起は不可欠だ。川崎Fの登里享平は、20歳で今や川崎Fの堂々たるレギュラー。負傷者続出の広島に必要なのは、登里と同じロンドン世代の噛み付くような気迫と貪欲さなのである。

※勝利数、得失点差が同じ場合は2試合におけるアウェイゴール数によって勝ち抜けチームが決定する。

以上

2011.06.06 Reported by 中野和也
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着