６月７日、鈴木隆行が水戸の練習に合流したことに加え、もう１つうれしい出来事がピッチの上で起きていた。

吉原宏太が昨年10月の負傷以来、初めて全体練習に合流したのだ。この日はウォーミングアップから一緒に練習をこなし、ハーフコートゲームにも混ざってプレー。久々の全体練習とは思えないほど、切れのある動きを見せていた。コンディション面を考慮し、途中で切り上げたものの、３月末からずっと１人で別メニューをこなしていたことを考えると、大きな一歩であることは間違いない。

「そりゃあ、１人でやるよりも楽しかったですよ」と練習後、笑顔を見せた吉原。自らの体の状態について「まだまだですね」と語るように、完全復帰にはまだ時間がかかることとなるが、「練習に混ざって、『こういう動きは痛くない』『こういう動きはまだ怖い』というように、一つひとつ確認しながらプレーできている。これからコンディションを上げていきたい」とうれしそうに語った。

また、この日からチームに合流した鈴木隆行の存在も「刺激になっている」という。２人は日本代表で同部屋になったこともある間柄。一度は引退も考えたものの、水戸で再起を図ろうとしている鈴木隆と、大ケガから復帰しようとしている吉原。現在、似た境遇に立っていると言えるだろう。

「正直、隆行さんはあの年でコンディションを上げるのは辛いと思いますよ。でも、そこにトライしようとしているのはすごいこと。本当にサッカーが好きなんだと思います。元代表という肩書を背負ってプレーするからには結果が求められる。すごく不安があると思うんですよ。僕自身もケガから戻ってもプレーが戻らなかったらどうしようという不安はありますよ。ただ、そのプレッシャーに勝たないとピッチには立てない。それは僕も隆行さんも同じだと思います」
かつて、日本代表まで登りつめた２人だけに、今回も試練を乗り越えてくれるに違いない。

そして、期待がかかるのは２人で組む、Ｊ２では“豪華すぎる”２トップ。「僕自身もすごく楽しみですよ」と吉原は目を輝かせる。見られるのは、夏過ぎあたりだろうか。想像するだけで胸のワクワクが止まらない。
「隆行と宏太の２人のベテランから若い選手たちは多くのことを学んでほしい。彼らからいろんな話を聞くことも勉強。それはコーチが教える以上に大切なこと。そうした環境を整えることができた」と柱谷哲二監督も現状を素直に喜んでいる。

今、水戸は変革期にある。そして、この日見せた吉原の笑顔が、水戸の未来を明るく照らし出しているように思えてならなかった。

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2011.06.08 Reported by 佐藤拓也