6月26日(日) 2011 J1リーグ戦 第18節
大宮 1 - 1 神戸 (19:05/NACK/5,627人)
得点者:53' 大久保嘉人(神戸)、83' 東慶悟(大宮)
スカパー!再放送 Ch181 6/28(火)後09:00〜
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残り10分で大宮が東慶悟のゴールで追いつき、そこから壮絶な撃ち合いが始まった。ここまでホーム未勝利の大宮と、ここ5試合勝ち星のない神戸。順位的にはともに中位に付けており、勝点というよりも、純粋に“勝った”という事実が欲しい。互いのペナルティエリアからペナルティエリアへ選手とボールが往復し、互いに決定機を演出しあう。両サポーターのボルテージは上昇を続け、その熱に後押しされるかのように選手たちも力の限り走り続けた。その攻防を見ながら、ふと去年の11月23日、同じNACK5スタジアム大宮で行われた、残留争いの大宮-神戸戦を思い出した。
あの試合、神戸は2度リードを奪い、大宮に2度追いつかれた。スコアこそ1点ずつ多かったが、お互いに勝たなければならない状況で、お互いにアグレッシブに攻めあう展開といい、サポーターの作り出す雰囲気といい、あの試合とダブって見えたのだ。
この試合のプレビューでは、大宮は第8節の対決で苦しめられた神戸のハイプレスを避け、神戸が前節に弱点として露呈したロングボールで攻めるのではないかと書いた。しかし大宮はつないできた。この辺り、「2カ月前とは違うんだ」という大宮の意地と自信が感じられた。
開始10分ほどは神戸のアグレッシブな出足に押し込まれたが、やがて大宮が落ち着きを取り戻す。ボランチ上田康太が中心となって神戸のプレスをいなしながらボールを動かし、前線のラファエルを起点にチャンスを作ったが、惜しむらくは最後のクロス、シュートに精度を欠いた。
試合を支配され始めた神戸は、ポジション修正で立て直しを図る。35分に「田中のほうがセカンドボールにアグレッシブに行けるし、ボッティには高い位置でプレーさせたかった」(和田昌裕監督)と、右MFの田中英雄とボランチのボッティの位置を入れ替えた。そして40分ごろからは、「FWと中盤の距離が空いていたので、(大久保)嘉人をちょっと下がらせた」(吉田孝行)。これが効を奏して大宮の勢いが止まり、運命の後半を迎える。
よりアグレッシブに点を取りに来たのは和田監督だった。前半はほとんど持ち味を出せなかった小川慶治朗に、「茂木が持ったらとにかく裏を突け」と指示。53分の先制点はまさにその茂木弘人から、左サイドで大宮DFの裏に飛び出した小川が折り返し、ニアで吉田がつぶれて大久保が正面から冷静に蹴り込んだ。
先制された大宮・鈴木淳監督はその6分後、東と石原直樹をピッチに送り出した。石原とラファエルの2トップとなり、右MFに東、左MFに李天秀が入った。この時、神戸の和田監督と選手に、同じように石原投入後にMFの位置に移った李に右サイド(大宮の左サイド)を蹂躙され2失点を喫した、半年前の記憶が蘇ったかどうか。さらに大宮は、いつもはCBを務める金英權を、左SBの村上和弘に代えて投入。韓国代表では左SBを務める金は、「監督からの指示はなかったが、自分の特徴を出せということだと思った」と、大宮が3バックに見えるほど高い位置に陣取った。金が良い形でボールを受ければ、高精度の左足クロスが神戸を襲うことになる。事実、中央で引きつけて金がフリーで待つ左サイドへという形を大宮は再三作り始めた。
神戸とて半年前とは違った。あの試合では動かなかった和田監督が、今回は動いた。81分に右SBの近藤岳登と左SBの茂木の位置を入れ替えて李に当て(半年前、最初は右MFに移った李に仕事をさせなかったのが茂木だった)、さらに82分には右MFのボッティを守備力もある朴康造に代えて金をケアさせた。しかし皮肉にも神戸の失点はその1分後に、その手当てしたサイドから生まれた。
タッチラインを割るかと思われたボールを坪内秀介がラインの外に飛び出しながら金につなぎ、金のスルーパスを受けた東が、ゴールラインぎりぎりで見事な切り返しで茂木を外し、右足を振り抜く。角度のないシュートは北本久仁衛と河本裕之の両CBにぶち当たり、神戸ゴールに飛び込んだ。
決して神戸の策が裏目に出たわけではない。ただ大宮は、ホームで勝てていないうえに、負けるわけにはいかなかった。その気持ちが同点ゴールを呼んだのだろう。
試合終了の瞬間、あの日のように神戸の選手は倒れ込みはしなかったが、大宮も神戸も、膝を着く選手と、茫然と腰に手を当てる選手と、半々だったように思う。どちらも勝ちたかった。その気持ちを、中3日で5連戦の最終試合にもかかわらず、選手たちは全身で表現した。またしてもホーム初勝利がおあずけになった大宮サポーターも、6戦連続勝ち星なしの神戸サポーターもブーイングは封印し、拍手とコールが鳴りやまない。その光景も、やはりあの日に似ていた。
以上
2011.06.27 Reported by 芥川和久
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