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その日のことを吉原宏太は強烈に覚えているという。
07年9月1日、J1リーグ第24節浦和レッズ対大宮アルディージャの一戦。当時大宮に所属していた吉原はその試合を累積警告による出場停止ということでスタンドから試合を眺めていた。そして、1対0で大宮がリードして迎えた82分にピッチに送り込まれた浦和のルーキーに目が釘付けとなった。DFを置き去りにする抜群のスピードを生かしたドリブル突破を見せる19歳を見て、「さすが浦和。こんなにすごい選手がユースから上がってくるのか」と衝撃を受けたという。それが小池純輝だったのだ。
しかし、小池はその試合で絶好のチャンスを外してしまう。そして、その後出場機会を失い、翌年は1試合も公式戦に出場できないままシーズンを終えることとなった。「プロとはそういうもの。めぐってきたチャンスで結果を出せるか出せないか。それで評価が決まる」。プロ16年目の吉原の言葉は厳しいが、説得力に溢れていた。
吉原は小池のことを「持っているもの(才能)はJ1クラス」と評す。ただ、J2でプレーしている現状に対して「自分の得意なことしかやってこなかったから。自分が苦手なことをやりながら得意なことを出せるようにならないとトップレベルではやっていけない。エーコ(小池)はやっとそこに気付いて取り組んでいる」と語る。そして、「今、殻を破れるか大切な時なんだと思う」と続けた。
小池だけではない。遠藤敬佑、島田祐輝、村田翔、西岡謙太など20代前半の選手たちが必死に殻を破ろうともがいている。「もうシーズン終盤、殻を破るのは遅すぎるぐらい。でも、ここで殻を破れるかどうかが彼らと水戸の今後を決めるんだと思う」。吉原はそう言い切った。
水戸は現在18位に低迷している。前節京都戦までは9試合勝利がなく、結果だけを見ると泥沼にはまっていたと言うことができる。しかし、決して悪い試合をしてきたわけではないということは、水戸サポーターが最もよく知っていることだろう。“あと一歩”の差で悔し涙を流してきたのである。そして、ついに前節京都戦で水戸はついに10試合ぶりの勝利を手にしたのだ。
鈴木隆行と吉原の“元代表2トップ”によるアベックゴールが生まれたが、勝因はそれだけではない。京都の激しいプレッシングに対しても腰を引くことなく、しっかりとボールを動かしてチャンスを作り出し、そして京都の厚みのある攻撃に対してチームが一つとなって凌ぎ切った。「本当に辛かった」と吉原が振り返るように、1人1人が全力を尽くして得た勝利。「あれだけ走って、体を張って、やっと勝てるということをみんな気付いたと思う」と吉原は言う。そして、先週行われた天皇杯2回戦では120分の死闘を繰り広げ、延長後半に小池が決勝ゴールを決めて、勝利をおさめた。「京都戦で勝つことの大変さを知ったから、札幌戦でも延長戦で勝てたんだと思う」と吉原は振り返った。
公式戦2連勝を挙げ、やっと内容が結果につながりつつある。「ダチョウの卵かと思うぐらい(笑)」(吉原)分厚い殻を水戸の選手たちはいよいよ破ろうとしている。もう一歩踏み出すためにも、今節に向け「足先だけでなく、とにかく走って、開幕戦のような気持ちで戦わないといけない」と柱谷哲二監督は語る。
ただ、今の水戸はそうした“気持ち”を、積み上げてきた戦術と技術の上で発揮できるようになりつつある。天皇杯札幌戦では前半は相手に押し込まれる時間が続いたが、ハーフタイムにシステムを4−4−2から4−1−4−1に変更すると、一気に流れを引き寄せ、勝利を手にした。チーム始動から様々なシステムをテストしてきたことにより、今では柔軟にシステムを変更できる対応力を選手たちは身につけている。また、どのチーム相手にもしっかりポゼッションする力もつけており、パスサッカーが代名詞の東京V相手にも恐れずにしっかりボールを動かしながら攻撃を組み立てるに違いない「お互いコンパクトで激しいゲームになる。緩めた方が不利になる」と柱谷監督は熱を込めて語った。
ただし、東京Vは水戸にとって“天敵”とも言えるチームである。昨年の対戦では2試合とも完膚なきまで叩きのめされ、そして前回の対戦では水戸が2点を先制しながらも3点を返され、逆転負けを喫した。
東京Vの代名詞とも言える中盤での華麗なパスワークに、マラニョンと阿部拓馬というスピード溢れる2トップが加わったことで破壊力抜群の攻撃を繰り出すことができている。現在、リーグ最多の54得点を挙げており、今節も猛然と水戸に襲いかかってくることが予想される。
中でも要注意なのが、菊岡拓朗である。古巣の水戸と対戦すると、水を得た魚のように溌剌としたプレーを見せ、3試合連続してゴールを決める活躍を見せてきた。当然、今節は4戦連続ゴールを狙って来るはずだ。
菊岡は水戸で殻を破って、移籍していった選手の一人である。彼を封じることができなければ、水戸は殻を破ることなんてできない。菊岡に仕事をさせないこと。それが水戸が次なるステップへ向かう一つの指標となるだろう。
冒頭の小池だけではなく、水戸の選手の多くが、殻を破れなかった“あの日”を持っている。そんな過去を振り切るために今節に挑む。震災後工事のため使用できなかったメインスタンドがはじめて開放されるこの試合は、最高のシチュエーションと言えよう。ここで殻を破らず、いつ破るのか。すべてをぶつけて、勝利をもぎ取れ。
以上
2011.10.15 Reported by 佐藤拓也













