10月26日（水） 2011 J2リーグ戦 第7節
Ｆ東京 1 - 2 大分　（19:04／国立／10,660人）
得点者：22' オウンゴ−ル（Ｆ東京）、45'+1 前田俊介（大分）、90'+4 長谷川博一（大分）
スカパー！再放送 Ch184 10/28（金）前11:00〜
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記録が途切れた。ホーム無敗記録は15試合、そして連続無失点は７試合。一歩、一歩積み上げてきた記録は、すべて止まった。
F東京が26日、ホーム国立霞ヶ丘競技場で大分と対戦し、１−２で逆転負けした。前半22分、オウンゴールで幸先よく先制したが、前半アディショナルタイムに大分FW前田俊介に同点ゴールを許して試合を折り返す。すると、後半またもアディショナルタイムにカウンターから途中出場のMF長谷川博一に痛恨の逆転弾を決められた。昇格決定を前にまさかの足踏み。今季初のホーム初黒星となった。

ゲーム開始からF東京が主導権を握った。そして22分、谷澤達也がゴール前でシュートを放ち、GKの跳ね返りがDFに当たってゴールへと吸い込まれた。上々の立ち上がりからの先制点。ボールもよく回り、何度か追加点の決定機も作った。まずまずの前半でゲームを折り返すはずだった。

しかし、前半アディショナルタイム。大分がF東京の左サイドから中央へとボールを送る。前田は、DF森重真人を背負うと、胸でボールを押し上げる。森重との間にできたわずかな空間に体を折り畳むようにして左足を合わせた。ボールは、GK権田修一の伸ばした手をすり抜けてネットを揺らした。
勝ち試合の様相は、このゴールで一変した。両チームのハーフタイムの過ごし方は、対照的だったはずだ。意気揚々と、ロッカールームに引き上げた大分は、田坂和昭監督の「自分たちのサッカーをやろう」という言葉に励まされ、後半のピッチに立つ。F東京は、MF羽生直剛が「気持ちをフラットにして臨もう」と呼びかける。平静を保って後半に臨むべき展開だったが、エンドロールが流れる辺りで最悪の結果を招いた。

羽生は「勝ち急いでしまった」と、ゲームを振り返る。大熊清監督は後半、石川直宏、ロベルト・セザーを投入する。勝ち越し点を狙ったが、はやる気持ちで前線までの距離が徐々に開いていく。大分が狙うカウンター攻撃を効果的にするスペースは出来上がっていった。「早く攻めると攻撃の厚みが欠ける。後ろもラインを上げなければ間延びしてスペースができてしまう。そのバランスが難しかった」と指揮官は後半、逆転を招いた敗因を語った。

そして、またもアディショナルタイム。F東京が前掛かりになったところを突かれる。大分が、ボールをカットし、一気に畳み掛けてきた。前線のFW森島康仁がボールを持って前を向くと、それを追い越して長谷川が右サイドを駆け上がる。長谷川は森島のスルーパスに右足を振り抜いて逆転ゴールを決めた。このゴールに森島は「練習どおり」と、胸を張った。

潜水中のF東京が何度も経験してきたことだ。J２の舞台は、常に映し鏡。戒めるべきは、まずはこの試合の自分たちのサッカーだ。
大分は前田のゴールで息を吹き返し、自分たちの形で逆転勝利に繋げた。「前半30分ぐらいまでは腰が引けた戦いだった」と田坂監督は言うが、前回対戦よりも確実に変わったことがある。前回、自陣に戻って選手全員が守備に専念したチームとは思えないほど、最終ラインは常に高い位置で保たれていた。チーム全体が、コンパクトになったことでボールを奪い、人数を掛けてゴールへと迫れた。宮沢正史は「そういう意味では成長を感じる」と、進歩を口にしている。
F東京は後半になると、戦い方にムラが出てしまう。チーム全体が間延びする理由は、足が速い選手が入ったからではない。ここ数試合の後半、ポゼッションにこだわるサッカーは残念ながらできていない。気持ちがはやるときこそ、まずはもっともっとパスを繋ぎ続ければいい。立ち返る場所があるということはそういうことだ。そうすれば、必ず打開策は見えてくる。細かくパスを繋ぐからこそ、走力のある選手がアクセントになる。その成功体験もこのチームは何度もしてきた。

仕切り直しの一戦は、奇しくも東京ダービーとなった。力の入る相手に対し、どこまでF東京のサッカーができるかだ。最後の壁は、この日、明らかになった。越えるべきは自分たちでしかない。昔の人は、本当にいい言葉を残してくれた、『急がば回れ』だ。

以上

2011.10.27 Reported by 馬場康平