11月6日(日) 2011 J2リーグ戦 第34節
東京V 2 - 1 札幌 (16:03/味スタ/5,425人)
得点者:17' 阿部拓馬(東京V)、55' 巻誠一郎(東京V)、83' 砂川誠(札幌)
スカパー!再放送 Ch182 11/8(火)前08:00〜
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「勝ちたい」3位・札幌と、「勝てないと終わる」7位・東京Vによる昇格めぐると熱戦は、危機感抱える東京Vに軍配が上がった。直接対決らしく、両チームのJ1への思いが強く伝わる好ゲームだった。
残り試合からの計算上、この試合に敗れた時点で昇格への夢が潰えるため、勝利だけが絶対条件の東京Vだったが、空回りを招くような気負いはなかった。というのも、残り10試合を切ったあたりから川勝良一監督は常に「もう1つも落とせない」と選手たちにプレッシャーをかけ続けており、“決戦”への心構えを植え付けられてきたからだ。浮き足立つことなく、良い意味での高い緊張感でゲームに入れていた。
また、この試合では小林祐希、森勇介、中谷勇介、高橋祥平ら主軸の欠場によって吉田正樹が今季初出場初先発、福田健介の10試合ぶりの先発、和田拓也のボランチ起用など、数ヶ所でのメンバー交代が施されており、それもポイントの1つとなっていたが、「最初は少し硬くなってしまった」としながらも、吉田が「毎日、試合に相当する練習を積んでいるという思いはあります」と言えば、先発が2試合目のアポジも「誰が入っても常に同じように戦える準備が整っているチーム」と語るなど、チームとして果たすべき役割に戸惑いはなかったことを強調していた。まさに、日々の練習の成果と言えよう。
硬さという意味では、圏内にいる札幌の方が現実味が直に感じられる分、余計に強い緊張感をもってしまったのかもしれない。「それが重圧になったのか、前半の立ち上がりから少し動きが重たかったんじゃないかな」と、試合後石崎信弘監督は振り返った。
逆にヴェルディは、その時間帯に上手く攻めることができたのが大きかった。菊岡拓朗を中心にテンポ良くパスをつなぎながらの展開を見せていた前半17分、菊岡の大きなサイドチェンジボールからアポジ、福田健介と頭でつないでペナルティエリア内の巻誠一郎へ入る。札幌DFと競り合いながらも全身で体を張って収め、粘って出したボールに再びアポジが滑り込んでフリーの阿部拓馬へ。「ごっつぁんゴールでした」エースが落ち着いて決め、幸先良く先制点を奪うことに成功した。札幌には、『先制したら負けない』という必勝パターンが存在していただけに、それをまず封じたことで札幌に与えたダメージは小さくなかったはずである。また、得点ランキング2位につける阿部の得点、巻のポストプレーという特長が生きた形、福田、アポジというフレッシュなメンバーが絡んだことも含め、いずれにしても非常にチームにとって価値あるゴールだったのではないだろうか。
1点リードしながらも、「前半の終わりぐらいからタッチ際で相当バテていた」と判断すると、川勝監督は後半の最初からアポジを河野広貴と交代させる。そして、この起用が見事に結実を見せたのだった。
硬さのとれた札幌が、徐々に前線にロングボールを入れて一発を狙ってくる自分たちの形ができつつあった後半11分、またしても大きなサイドチェンジからゴールが生まれた。左サイドでスローインを受けた佐伯直哉がそのまま大きく逆サイドに振ると、走り込んだ河野がこれを受け、ドリブルで仕掛けにいく。果敢にゴール目がけて放ったシュート性の左足キックを、「ギッリギリで触ってました」巻が足で掠めてネットを揺らした。
結果として、この後札幌が186cmの上原慎也を投入し、さらにDFの日高拓磨を下げてMF岡本賢明を入れて攻撃の枚数を増やしてきたことで、東京Vにとっては厳しいロングボールをひたすら弾き返す防戦一方の状況が続くこととなる。そして後半38分に1点を返されたことも含め、この2点目は記録上においても、メンタル面を支える上でも、チームを救う非常に大きな1点であった。
「華麗なパスワークで終始相手を圧倒し、勝つ」という理想的な勝利ではなかったかもしれないが、敗れたら昇格争い終焉という意味では当然、この“勝点3”が東京Vにとって全てだった。だが、それ以上にたくさんの収穫があったように思う。前述した通り、札幌に上原が入り、さらに後半35分には183cmの横野純貴投入で「完全にそこ(高さ)を狙って来てた」と、瞬時に察知した巻は、残り約10分は自ら完全にDFラインに入り、土屋征夫に並んで高さ対応へ献身する。「状況を見ての当然の対応」と、元日本代表は一笑に付したが、その状況判断力と、実際に「高さ」での貢献度で、巻がすでに東京Vの欠かせぬ戦力となりつつあることを改めて証明していたのではないだろうか。
また、右サイドバックに福田、左に吉田が入り昨年のDFラインが復活。「試合中に何度も怒られたりしたけど、『あぁ、本気で戦っている試合に出られてるんだな』って実感できて嬉しかったです」という吉田の言葉は、福田も同感に違いない。久しぶりの先発で『勝利』という結果が出たことが、彼らにさらなる自信と「また出たい」という意欲をもたらしたはずである。そして何より東京Vサポーターにとっても大きな価値があったのは、GK土肥洋一のメンバー復帰だろう。5月4日に負傷して以来のベンチ入りとなった。GKというポジション上、交代出場して直接プレーで貢献する機会はなかったが、ハーフタイムには、富澤が一目散に土肥の元へ行き、試合展開について話し合うシーンも見られるなど、“ピッチ”レベルで大黒柱としてチームを支えられるようになったことは、今のチームにとってこれ以上ない戦力アップとなろう。土肥の存在は唯一無二である。残り4試合、大きな精神的支柱を東京Vは取り戻した。
平本一樹も復帰し、次節からは、出場停止が明けて小林祐希も戻る。今節離脱したケガ人の復帰も期待できるだけに、ようやく戦力が整ってきた感があり高気配が漂っている。富澤主将の「残り4試合、全勝して終わった先に『昇格が』あって、最後でみんなで笑っていると信じています」の言葉の実現を願わずにはいられない。
札幌にとっては、痛い痛い敗戦となった。ただ、この試合が徳島が愛媛と引き分けてくれたことで、得失点差で4位に下がるも、勝点差では3位タイ。かろうじて最悪の状況は免れたと言えよう。
前節、せっかく良い形で快勝し、昇格へ向け一気に勢いに乗りたかったところだったが、“大一番”のプレッシャーに動じてしまったようだ。「硬さはあったかもしれないけど、せっかく良い雰囲気で勝った前節みたいな試合を続けられないようでは、先がない」と、J1で優勝経験をもつ主将・河合竜二はあえて厳しい叱咤を残した。
試合後、ショックを隠せず俯きながらゴール裏に挨拶に行ったチームを迎えたのは、札幌サポーターからの「おれたちなら〜やれるのさ〜」の大合唱だった。その大きな大きな歌声に、選手たちはパワーを注入されているように映った。「僕たちは、常にゴール裏を忘れてはいけない。彼らのためにも、絶対に昇格します」。今節敗戦しても、望みは十分ある立場。この苦い経験を、『J1昇格』に相応しいチームに仕上げていくための教訓としたい。
以上
2011.11.07 Reported by 上岡真里江













