11月20日（日） 2011 J2リーグ戦 第36節
草津 2 - 1 札幌　（13:04／正田スタ／5,565人）
得点者：55' 内村圭宏（札幌）、90' 中村英之（草津）、90'+2 アレックス（草津）
スカパー！再放送 Ch183 11/22（火）後07:00〜
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上位陣を軒並み倒してきた昇格ハンター草津が札幌をも狩った。１点のリードを許して後半のアディショナルタイムを迎えた草津だったが、土壇場で２ゴールを叩き込み執念の逆転勝利。札幌が手にするはずだった勝点３を強引に略奪した。草津サポーターは狩人たちが演出した劇的な逆転劇に心の底から酔いしれた。

試合開始直前まで無風だったスタジアムだが、キックオフ直後から吹き始めた風はしだいに強まり、試合中には選手入場コンコースのマットを吹き飛ばすほどの猛威をふるった。赤城山から吹き降ろす上州特有の空っ風が札幌の運命を一瞬にして変えてしまうことになるとはこの時点では誰も想像できなかった。

前半は我慢の時間だった。風下を選択した草津は、吹き付ける風と札幌のパワフルな攻撃にじっと耐えながら時間の経過を待った。「風があまりにも強かったので前半は１点取られてもいいと逆に開き直っていた」（GK北一真）。草津は、札幌の攻撃をもろに受けながらも北の攻守に助けられ前半をスコアレスで折り返すことに成功する。

草津のゲームプランが崩れたのは５５分だった。追い風を味方にペースを上げていった草津だったが、一瞬の隙を突かれてしまう。前半から危険を漂わせていた内村圭宏に裏を取られると、彼のシュートが草津守備陣に当たって無情にもゴールへと吸い込まれる。札幌は先制した１６戦で無敗。草津は風上だったものの大きなハンデを背負ってのゲームを余儀なくされた。

札幌石崎監督が「先制後に押し込まれるのは想定していた」と話したが、その後の時間帯は草津がポゼッションを完全に支配した。草津は熊林親吾、松下裕樹の両ボランチを軸に攻撃を組み立て、札幌守備陣と対峙していく。しかし高さと強さを誇る札幌の壁を崩せず、ゲームの主導権は握りつつもじわじわと追い詰められていく。札幌の手堅いサッカーの前に、一時は敗戦も覚悟した。

だがアディショナルタイムに奇跡が起こった。９０分、熊林親吾のFKに中村英之がヘッドで合わせて起死回生の同点弾。遅ればせながら反撃ののろしを上げた草津は、同点では飽き足らず勝利を目指して突進する。９２分、セカンドを奪った松下がその勢いでドリブルを仕掛け右サイド深くで再びFKを得る。キッカー熊林親吾がゴール前を固める札幌の裏をかくようにマイナスのパス。リンコンのスルーによってフリーになったアレックスがそれを豪快に蹴り込んで札幌の息の根を止めた。

札幌にとってはまさに「敷島の悲劇」だった。ライバル徳島が勝利を収めたため昇格圏内から一歩後退する結果となった（順位表）。勝点６２の４位札幌（得失点＋１４）は、勝点６５の２位鳥栖（得失点＋３１）、３位徳島（得失点＋１７）と比較して得失点差でも劣っているためラスト２試合は勝利とゴールが要求される。ただ次節湘南戦で勝てば状況が一変する可能性があるだけに戦い抜くだけだ。「あきらめている選手は誰一人いない。次に向けて切り替えるだけ」（砂川）。札幌の戦いはまだ終わってない。

札幌を下して２連勝となった草津は最近８試合で４勝４分、シーズン終盤でチーム力を上げてきた。戦績も１４勝９分１３敗と白星が先行、クラブ初のシーズン勝ち越しに王手をかけた。「一つひとつ階段を上っていくことが来季につながっていく」（松下）。残り２試合、この２段を駆け上がることで来季の可能性は限りなく広がっていく。

以上

2011.11.21 Reported by 伊藤寿学