12月3日（土） 2011 J2リーグ戦 第38節
札幌 2 - 1 Ｆ東京　（12:32／札幌ド／39,243人）
得点者：40' 内村圭宏（札幌）、45'+2 内村圭宏（札幌）、80' 谷澤達也（Ｆ東京）
スカパー！再放送 Ch185 12/4（日）後10:00〜
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タイムアップの笛が鳴り響いた瞬間、超満員の札幌ドームが大きく沸いた。３位の札幌が今シーズンのＪ２王者・Ｆ東京に２−１のスコアで勝利。同時刻に勝点で並ぶ４位の徳島が敗れたため、３位以内が確定。４年ぶりとなるＪ１昇格を達成した瞬間だ。

この日の札幌ドームに詰めかけた観衆は３９、２４３人。熱心なＦ東京のサポーターも多数かけつけていたが、開門前のスタジアム周辺には地元サポーターが長蛇の列を作っていた。プレスルームの目の前のコンコースにも、かつて見たこともないほどにサポーターが行きかった。やはり、この日は特別な日だった。

そうして多数の視線が注がれたなかで始まった試合は、立ち上がりからアウェイのＦ東京がボールをコントロール。前線のルーカスが時間を作り、トップ下で先発した坂田大輔の飛び出しや谷澤達也のドリブル突破を引き出す。加えて森重真人、今野泰幸というセンターバックからも精度の高いフィードが飛び、札幌を攻め立てた。
ただし、その攻撃への札幌の対応もしっかりしていた。敵陣にボールがある場面ではフィールドプレーヤーの１０人が的確にポジションをセット。そして「Ｆ東京は低い位置でのパス回しにミスが出る時がある。ミーティングでそういう情報があった」と岩沼俊介が話したように、ポジションをセットしながらも、果敢にインターセプトを狙ったのである。１３分すぎには谷澤のイージーなパスミスを近藤祐介がカットし、カウンターにつなげている。

そして、そのカウンターが見事にハマる。４０分、ターンオーバーから砂川誠が抜群のパスで左サイドを強襲。それを古田寛幸が折り返すと、ニアサイドに走り込んだ内村圭宏が見事にゴールネットを揺らして札幌が先制した。さらに前半アディショナルタイム。今度は右サイドから起点を作り、縦にボールを持ち込んだ近藤がラストパスを送ると、またしても内村が素晴らしいボールコントロールで抜け出して蹴りこんだ。

札幌が２点をリードして折り返した後半。Ｆ東京の大熊清監督は頭から石川直宏、ロベルト・セザーという、速さに加えて自らボールを運べる選手を同時投入。ベンチに退いた坂田、田邉草民はコンビネーションで突破を図るタイプの選手だったが、個の力で突破ができる石川、ロベルト・セザーが入ったことで、Ｆ東京の攻撃はパワフルさが増した。より一層、札幌を押し込む展開となる。

だが、こういう展開は札幌にとってはお手のもの。「押し込まれることは最初から予想していたので、特に大きな不安はなかった」と山下達也が振り返ったように、推進力のある相手の攻撃に手を焼きはしたものの、チャレンジ・アンド・カバーを的確に遂行する守備陣は崩れない。８０分に谷澤にミドルシュートを決められはしたが、その後は守備の切り札である芳賀博信を中盤の底に入れてシャットアウト。ほぼ理想に近い展開で、Ｊ１昇格を決定づける松尾一主審の笛を聞いた。

さて、この札幌の快勝を総括してみたい。激しい昇格争いを戦うなかで、最終節の相手が王者・Ｆ東京というスケジュールは、一見、厳しいものに感じた。だが、試合前の選手たちのコメントを振り返ると、「どう考えてもＦ東京は強い。少しでも多くの得点を取りたいとか、そんな欲を出している余裕は一切ない。とにかく勝つ。１−０でいいから、とにかく勝つことだけを考える。勝って、それで得失点差が及ばなかったならば、それは仕方のないこと」という内村の言葉に代表されるように、余計な力が入らず、その先のことよりもとにかくＦ東京に勝つことだけに集中していた印象だ。そしてその結果、内村は１点のみならず２点目も奪うことに成功している。

目の前の試合に集中する。これが今季の札幌の選手がよく口にしていたセリフだ。全３８節のリーグ戦ではあるが、あくまでもそれは１つ１つの試合の積み重ねでしかない。そのことをあらためて感じさせられた２０１１年シーズンだったように思う。

「来年一緒に切磋琢磨しましょう！」。札幌の石崎監督は試合後、そうやってチャンピオンチームであるＦ東京にメッセージを送った。２０１２年、札幌は再びＪ１の舞台に立つ。そこで再び、このカードが見られるということだ。

以上

2011.12.04 Reported by 斉藤宏則