どんな試合でも、応援する側にしてみればワクワクするのは間違いない。それが、相手が絶好調で上位の相手とならば、なおさらである。今の鳥栖を応援している人だけでなく、他チームのサポーターたちも、今節の鳥栖はどのような戦い方を見せてくれるのかを楽しみにしているのではないだろうか。対戦相手である広島は、今季ここまで９得点を挙げ、４勝１敗と順調に勝点を上積みしている。この広島を迎え撃つ鳥栖は、２勝１分２敗と初参戦のＪ１で健闘を見せている。前節では、広島はＧ大阪相手に４得点と会心の試合を行い２位に浮上。鳥栖は、名古屋相手に敗れはしたものの、倍のシュートを放ち最少得点差という好ゲームを演じた。この両者が戦うとなれば、不安な気持ちではなく、ワクワク感が自然と沸いてくる。楽しみな一戦がベストアメニティスタジアムで行われる。

鳥栖は、今季も前線からプレスをかけて相手を追い詰めるサッカーを展開。相手サポーターからは、『鬼プレス』などと呼ばれている。ボールのあるところに、一番近い選手がプレスをかけて相手の自由を奪う。ボールを奪えなくても、パスコースを限定し相手のストロングポイントを消していく。相手がボールコントロールに時間をかければプレスの人数が増えるし、時間をかけずにボールを回しても、パスコースを限定しているので簡単には攻められない。前節の名古屋戦では、ＦＷの豊田陽平と池田圭がファーストディフェンダーとしての役割を全うし、中盤の選手がパスコースを消す動きを見せて、名古屋のシュートを７本に押さえ込んだ。

対する広島は、前節にＪ１通算１００得点をあげたＦＷ佐藤寿人を中心に、全員が連動して攻撃を仕掛けてくる。途中出場ながら２得点をあげたＦＷ平繁龍一も次世代を担う若きストライカーである。この２人は、一瞬のスピードと駆け引きで、味方からのボールを引き出す能力に長けている。ボールが出されて走るのではなく、相手のウィークポイントを見つけて、そこにボールを出させるのである。前節の試合では、ここにボールをあわせたのがＭＦ高萩洋次郎と青山敏弘であった。全員が連動して、畳み掛ける攻撃力を広島は持っており、今節の試合では、鳥栖のプレスが広島にどこまで通用するのかも楽しみな一戦である。

そして、もうひとつ注目しておきたい見所をあげておく。
鳥栖のＭＦ岡本知剛と広島のＭＦ森崎和幸の対戦である。広島からの期限付き移籍でプレーする岡本は、森崎和の背中を常に追ってきた。
「和さんはとにかくすごい人。二次攻撃や三次攻撃に持っていく力もあるし、危険察知能力も高い」と絶賛し、「チームに一人入るだけで、落ち着かせることができる選手」とも表現した。
その憧れの選手と対峙するのである。「（森崎和に）負けないようにアピールしたい」と人一倍この対戦を楽しみにしているようだ。
広島における森崎和の役割を、鳥栖では岡本が担っている。彼が言うように、どちらが自身の存在でチームに安定性を高く与えることができるのかが、この試合での勝負の分かれ目とも言える。エースが決めるゴールも楽しみだが、その前段階での主導権争いも楽しみな一戦である。

シュート数と得点が、必ずしも比例しないサッカー。どれだけ決定的な場面を演出できるのかを競うスポーツともいえる。
パスで相手を崩すサッカーもあれば、ロングボールで相手ＤＦの裏やこぼれたボールを拾って攻撃するサッカーもある。
１個のボールをはさんで対峙した選手のアイデアと判断が、その後の展開に大きなウェイトを占めている。起きた結果に一喜一憂するのも楽しみのひとつだが、その争点での選手のアイデアと判断を予測してみるのも別の楽しみ方といえる。
そして、ゴールに近づけば近づくほど、判断材料とアイデア（選択肢）が減ってくるのもサッカーである。
プレーの目的はシュート。目指す結果はゴールなのである。

以上

2012.04.13 Reported by サカクラゲン