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【AFCチャンピオンズリーグ2012 名古屋 vs 天津】レポート:イージーなミスを連発する自滅の展開で引き分けた名古屋がグループ首位陥落。グループGはますます混沌とした状況に(12.04.19)

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かつて成績が安定しなかった頃の名古屋は“強きをくじき、弱きを助ける”と揶揄されたことがあった。上位相手の試合では素晴らしいプレーで勝利を得るのに、下位には低調なプレーで勝点を与えてしまう。アウェイで圧倒した天津泰達を迎えたこの日の試合は、久々にそういった姿を名古屋は見せてしまった。勝利が目標、しかし引き分けでもいい相手ののらりくらりとしたペースに乗り、自分たちのサッカーを見失ってしまったのだ。

ここ数年の名古屋は自分たちで主導権を握り、能動的に試合を進めていくことを第一義としてきた。カウンターはもちろん仕掛けるが、それはいい形でボールが奪えた時と、リードを奪ってからのゲームコントロールの一環として行うだけ。基本的にはアグレッシブに攻め、崩し、突破を仕掛ける。そこで重要となるのはボールを簡単に失わないことと、着実にパスをつなぎ、仕掛けのスイッチを入れることだ。この日の名古屋にはその根幹となる部分が決定的に欠けていた。

名古屋は田中マルクス闘莉王とケネディが負傷欠場、そして藤本淳吾が累積警告による出場停止と、センターラインを固める各ラインの中心選手が不在だった。前日会見でストイコビッチ監督は「この状況を受け入れなければいけない。試合に出る選手たちはクオリティを見せる時だ」と残るメンバーの奮起に期待を寄せたが、それはかなわなかった。
「期待に応えた選手がいたかといえば、答えは“NO”だ。特に前半、中盤で上手くパスがつながらない場面が多く、ミスが気になった」(ストイコビッチ監督)
指揮官はこう嘆いた。確かにこの日の名古屋は、単純な技術的ミスが多すぎた。

「守備は事前に用意した戦術通りにやってくれた」と語った天津泰達のクゼ監督も、名古屋がこれだけミスをし、自分たちを助けてくれるとは思っていなかっただろう。今回の天津のメンバーは主力を温存し、勝利が絶対条件ではなかった。負傷と出場停止、そして週末の自国リーグ戦への備えとして大幅なローテーションを実行。スタメンを5人も入れ替えただけでなく、ボランチでプレーしていたツァオ・ヤンをセンターバックで、同じくボランチのシュムリコフスキをトップ下で起用。他にもサイドハーフだったマオ・ビャオをFWで使い、左サイドバックだったスサクをボランチに据えるなど、まるで別のチームのようだった。当然、チームとしての動きが万全となるわけがなく、結果は二の次。「目標はあるが、現実を見ながら行動した」という指揮官の言葉には、今のチーム状態では守備的に戦い、アウェイでの引き分けが妥当だ、というニュアンスも見て取れた。

それだけに、名古屋が自分たちで試合を難しくしてしまったことは悔やまれる。前線のメンバーは藤本以外変わっておらず、代役の中村直志も経験豊富な選手だ。前回対戦だけでなく、リーグの鳥栖戦や札幌戦のようにアグレッシブな守備からリズムをつかんでいけばよかったのだが、連戦の疲労も影響してか運動量が上がらず、その上前述の通りミスを連発したことで攻守ともに中途半端なものに。前半は6本のシュートを放ったが、どれも単発で決定機には至らなかった。主力3人の不在、特にゲームを作れる闘莉王と藤本の欠場の影響は、やはり大きかった。

停滞するチームに喝を入れるべく、ストイコビッチ監督は後半早々から動きを見せた。負傷明けでコンディションが上がりきっていない中村に代えて巻佑樹を投入。相手のフィジカルに押されがちだった前線にポストとなれる選手を置くことで、変化をつける狙いだった。巻は期待通りに前線で精力的に空中戦に挑み、58分にはアーリークロスに競り合った際にファウルを受けPKを獲得してみせた。しかしキッカーの玉田圭司がこれを失敗。結果的に唯一の得点機を逃した名古屋は、再び停滞していくことになった。
68分には阿部翔平と磯村亮太を同時投入し一時は押し込んだが、得点を奪うまでには至らず。天津泰達もゴール前を固める守備はできても攻撃の連係に精度を欠き、スコアレスのままで試合は終了。名古屋は無敗をキープしたものの、城南一和がセントラルコーストに5-0と圧勝したことで得失点差で上回られ、グループ2位に後退してしまった。

完全な自滅の展開に、名古屋の選手たちの表情は一様に暗かった。ストイコビッチ監督は連戦での疲労を指摘し選手をかばう場面もあったが、前述したようにプレーの質自体には納得しているはずがない。それはピッチ上にいた選手たちが一番感じていることで、足早に去っていく後ろ姿には不甲斐ない自分たちに対する苛立ちすら漂っていた。
AFCチャンピオンズリーグの次戦は、城南一和との首位攻防戦(5/1@韓国)。いまだ全チームに予選突破のチャンスが残る混沌とした戦いの中で、アウェイ韓国での勝利は大きなアドバンテージとなる。Jリーグ2試合を戦う2週間の“準備期間”で勢いをつけ、敵地に乗り込みたいところだ。

以上

2012.04.19 Reported by 今井雄一朗
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