内容を見れば、1-0という結果は妥当ではない。
“今”、この瞬間に“おもしろい”サッカーを展開しているのは間違いなく広島だった。最後尾の西川周作を交えたボールポゼッションはやはりJリーグ屈指である。今季J1通算100ゴールを達成した佐藤寿人という絶対的エースをベンチに置いてもなお、そのクオリティーを維持できるところにチームとしての強い“共通理解”を感じさせた。偉大な前任者と二人三脚で築き上げたスタイルは体に染みついているのだろう。完成度では磐田と雲泥の差があった。試合後、インタビュールームに姿を現した広島・森保一監督の口は、やはり重い。「正直なところ、受け入れ難い結果です。前半から多くのチャンスを作っていたし、最後のフィニッシュが決まっていれば前半で勝負を決めることができた、という試合でした」(同監督)。
対する磐田は序盤、とりわけ守備で苦しんでいた。最終ラインに入った菅沼駿哉は「ボランチとセンターバックの距離が曖昧になってしまった部分もあった」と前半を振り返る。相手のビルドアップに対して前線からプレッシャーをかけた際に連動できず、前後で乖離する場面もあったという。
広島サイドに立てば、この点は想定済みだった。水本裕貴は直近のリーグ戦で対戦した鳥栖と比較し、磐田の方が「組みやすい」とゲーム前から予想していたそうだ。「前線の選手が結構前にプレッシャーをかけに来てくれるので、中盤のところが空いたり、うちのシャドーのところが空くだろうな、ということは思っていました。鳥栖戦ではそこが全く空いていなかったので。現に前半は上手くシャドーのところに入れることができたので、あとは最後のところ、という感じです」(同選手)。
磐田の守備面の“ずれ”は直近のリーグ戦の静岡ダービーでも見られ、守備面の連動性は現時点では課題を残すと言わざるを得ない。ただし、ハーフタイムを挟んで修正できた点は収穫である。広島の攻撃に慣れるまでに苦労した、ということだ。
ゲームが動いたのは試合終了間際の85分。途中出場の山田大記が難しい体勢から左足を振り抜き、決勝ゴールをもたらしたが、劣勢ながら失点しなかった前半の踏ん張りも大きかった。
ヤマザキナビスコカップでは10年大会のファイナル以来となる対戦となった両チームだが、磐田は森下仁志、広島は森保一とそれぞれ当時とは異なる人物が現在指揮を執っている。両監督はそれぞれ今季が自身初の監督就任となったが、前任者からバトンを譲り受けたシチュエーションは多少異なる。“スタイル”という観点では前者はまさに“0”から、後者はある程度完成された状況からそれぞれアプローチを始めていると言えるだろう。その差はシーズン開幕から1か月あまりでは到底埋まるものではない。
今季、新監督の下にスタートしたサックスブルーだが、その“完成形”が披露されるのははるか遠い“未来”となるだろう。時間は1年あっても足りないかもしれない。試合後、サポーターは選手と一緒にタオルマフラーを回して喜びを共有していたが、彼らと共に辛抱強く歩いていく――。そんなシーズンになるはずだ。
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2012.04.19 Reported by 南間健治













